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やまね智史さんに聞く どうして政治家になったんですか?

2021年2月20日、二度目の緊急事態宣言のなか、聞き取りに回っておられた伏見区選出の共産党市会議員やまね智史さんが、絵本のこたちにもきてくださいました。TwitterやYouTubeでも京都市の財政事情等を発信されてるやまねさん。せっかくなので、逆インタビューしました。

ーー政治家を志したきっかけはなんですか?

もともと、スポーツの分野でトレーナーとか栄養士とか、選手をサポートする仕事をやりたいなと思ってたんです。
1歳の時に心臓の手術をしてるんです。先天性心室中隔欠損症といって、心臓に穴があいてたんです。草サッカーくらいの運動はできるんですけど、アスリートのような過酷なトレーニングをするのは難しいんです。でも、スポーツは好きやったんで、選手は無理でも、何かスポーツの現場で働くような仕事をしたいなというのはあったんです。それで、高校時代に進学のことを調べるうちに、龍谷大学にスポーツとトレーニングのこととか、経済とか法律とかも学べるスポーツサイエンスコースがあるということを知って、龍谷大学に進みました。
だけど、大学に入る直前の99年の1月に、僕がずっと好きで応援してたサッカーの横浜フリューゲルスというチームがスポンサーが撤退して消滅しちゃったんですね。選手とかサポーターたち、たくさんの人がスタジアムの前で署名集めたり、いろいろ活動されてたんで、高校生の時の自分は「こんだけ頑張ってるんやから大丈夫やろう」と思ってたんですよ。ところが、結局、無くなってしまって。自分が応援してた、大切に思ってたチームが無くなるなんて、そんなことがあるんやって思ったんですよ。でも、それ以前からも、実業団、社会人のバレーボールとかバスケットとか、いろんなチームが不況の影響で休止とか廃部とかなってて、どんなに必要と思ってる人がいても、どんなに残したいと思ってる人がいても、お金次第というか、お金がなかったら切り捨てられちゃうっていうのが、今の世の中なんだっていうのを高校生の自分は感じてしまって。これから、そのスポーツの分野に進もうと思ってるのにね。これは、スポーツだけ勉強してて大丈夫なんかなぁって、大学に入る前からそんなことも思ったりしましたね。
だから、最初はスポーツ生理学とかトレーニング論とかスポーツ栄養学とか、そういうの中心に勉強するつもりだったんですけど、それだけじゃなく、スポーツの周りにある社会の動きとか経済のこととか、政治とか法律とか、そういう勉強もしたいなと思ってたんです。そんな中で面白かった授業が「スポーツ政策論」っていうのがあったんです。
スポーツをするために何が必要か、まず、時間が必要ですよね。それに場所が必要。お金も必要。これがなかったらスポーツできない。そういうことを考えていくと働き方につながっていって、休みがなかったら、夜の10時11時まで働いてたら、スポーツ楽しむ時間なんて出来ない。時間はあったとしても自分の住んでる街にスポーツ出来る場所がなかったらできないし、練習場借りるにもお金がかかる。観に行くにしてもチケット代がいる。必要なものがなかったら、いくらスポーツスポーツって言ってても成立しないし、自分の努力だけでは解決できない問題があるんです。
フリューゲルスというチームをどうしたら残せたんかなとか、長時間労働を無くしたり給料がもっと上がるとか、高校まで住んでたのは大阪の大東市やったんですけど、家の近くにすごい大きい公園があって、それが当たり前と思ってたから、京都に下宿するようになって、あまりにもスポーツする場所がないのにびっくりしたんですよ。なんかその、気軽にスポーツできる場所だったりとか、もっとなんか、行政の政策でそういうことが出来ひんかなとか、そんなこと思いながら大学行ってました。
それと、民青同盟には入ってたんで、共産党を相談相手に社会問題をいろいろ勉強したりするんですけど、高校の時に誘われて入るだけ入ってたんですよ。そのころは何もしてなかったですけど。

ーー「民青」って聞いたことあります。何の略称ですか?

「日本民主青年同盟」です。大学にもそういうメンバーがいるっていうのを聞いて、勉強会に行くようになったのは大学からですね。いい意味でカルチャーショックを受けたというか、僕らの世代で社会のこととか政治のことをを考えてるのは自分だけやと思ってたんです。今考えれば、ほんと自惚れというか、お恥ずかしい話なんですけど(笑)

ーー意識高いと思ってた(笑)?

そう、そう(笑)勉強してたわけでもないのに。ところが、民青の勉強会とかいくと、みんな、ものすごい詳しくて、日本の政治で何が起こってるのかとか、ちゃんと知ってるんですよね。だから、自分が恥ずかしくなって。これはあかんと思って、いろいろ勉強していくうちに、共産党の政策とか綱領とかが自分の思ってた労働時間の問題とかお金の問題とかスポーツ政策の問題と完全に一致するなと思ったんですね。長時間労働をなくしていこうとか、最低賃金上げようとか、消費税減税して暮らしを応援しようとか、自分の思ってる方向と一致して、いつしか、スポーツの分野に進みたいというところから、赤旗の記者になりたいなと思ったんですよ。報道関係にもわりかし興味あってね。それで、3回生か4回生の時に応募して。その時に伏見区の共産党の事務所の人に「やまねくん、それやったら、一回、伏見の事務所で働いてみいひんか」って誘ってもらって。記者を目指すにも、共産党の活動してる人たちの一番身近なところで働きながらというのもいいかと思って、共産党の事務所で働くようになったんですね。2003年に大学卒業して、それから3年くらい丹波橋の事務所で働いてました。

ーー事務所で働くって、お給料は出るんですか?

あ、出ます(笑)もちろん。社会保険もありますし、ちゃんと事業所として。
そんなことで事務所で働いてたんですけど、2007年の選挙に若い候補者を立てたいということを言われて。その時、自分は25歳で、同じ世代の人に何か訴えることができるんじゃないかと思いました。だから、立候補のきっかけといったら、そういうことですね。

ーースポーツ分野を目指してた青年が、赤旗の記者になりたくて事務所で働いてるうちに候補者に推されたと。

もともとの思いはスポーツ政策の充実というところから、労働問題、雇用の問題につながっていったんですが、それと重なって、僕たちは超氷河期世代。就職難の真っ只中だったんですね。就活って、ものすごく重苦しい。
僕の友人にも、ものすごく明るくて能力あって賢い人もいるんですけど、その人でも30社40社受けても決まらないと、自分に問題があるんじゃないかと自己肯定感が下がっていく。やっと決まったのが派遣とか、非正規雇用ですね。そういう時代なんで、就職難とか雇用問題が解決出来ないかなって思いはありました。一方で過労死する人がいて、一方で仕事がなくて困ってる人がいてって、どういうことなんだろう? って。それをなんとか解決できないかなって思ってたところ、共産党の政策がしっくりきたんですよね。
もうひとつ、カルチャーショックだったんですけど、共産党って理想を追い求めてる人たちだと思ってたんですよね。理想を高く掲げてる人たち。

ーー私もそうでした。頭良すぎて何言ってるか分かんないとか、社会主義のなんか堅苦しいイメージ(笑)

そうでしょ(笑)。僕の抱いてたイメージは、戦前からずっと戦争に反対してるというのが、まずあって、一貫して主義主張を貫いてきたってことがすごく大事で、その生き方はカッコいいけど、とにかく理想を掲げて、どんな困難があっても、たとえ報われなくてもひたすら頑張ってるみたいな、そんなイメージがあったんです。ところが共産党の政策を勉強してたら普通のことやなと思ったんです。普通っていうのは実現不可能な高い理想じゃなくて、普通に経済を動かそうとか暮らしを守ろうと思ったら、そういう方向になるよねっていうような、ごくごく普通のことを言ってるのが意外やったんです。これ、現実的な話してるだけやんかって。
そういう話を聞きながら大学で4年間勉強してきたこととか、やりたいことが繋がったりしつつ頭の中が整理されていったんですね。

ーーイメージのお話ですけど、国会での質問とかTwitterで見られるようになって、共産党議員の方の発信も見聞きしてると、わりと自由というか、あれ? 共産党って民主主義? って、気がしてきたんです。

ああ、そうですね。党大会もすごく時間かけますし、共産党の場合は数ヶ月前に党大会の議案を発表して、それを伏見区だったら小学校とか中学校の学区単位で支部があるんですけど、まず、その支部会議で議案を読んで、ああでもないこうでもないって議論するんです。それを次に地区党会議でもう一回議論して、次は京都府党会議ってのがありますよね。段階的に議論を重ねていくんです。ここは、こういう書き方の方がいいんじゃないかとか、ここは間違ってるとか、ここはこういう声をもっと入れるべきだとか、そういうのをずーっと議論を積み上げて、最後に各都道府県党会議から選ばれた人たちが一堂に集まって、そこで最終的に採択されるっていう、3〜4ヶ月くらいかけて党大会をやるんですよ。
僕も最初は全体主義みたいな、上から降りてくるものなのかなと思ってたんですけど全然そうじゃなくて、そういう意味ではその過程も民主主義ですよね。

ーー地方の小さな支部の人にも意見を言う機会がちゃんとあるということですね。今、国会期間中ですが、共産党の議員さんって国民の生活をよく知ってるなぁと思います。そういうのも支部から声が届くからですか?

それもあると思います。支部は全国の地域にもあるし、職場とか大学、そういうところにもありますし、それこそ赤旗の記者が全国に繋がって、いろんな取材もしてますので、この地域ではこういう問題が起こってるとか、あと、そうだ。これを言うの忘れてた。生活相談っていうのを共産党はずっとやってるんですね。

ーー#困ったときは共産党に相談しよう ですね。

そうそう、ハッシュタグつけてね。それで大学の時の話ですが、僕の友だちでマルチ商法に引っかかったヤツがいて、ダイヤを買わされたんですよ。何十万っていうローン組まされて。「どうしよう」っていうんで、伏見の生活相談所に一緒に行ったんですよ。そしたら、その場ですぐ消費者生活センターとか、役所の担当のところにいろいろやりとりしてくれて。何も法律のこととか知らない学生にとっては、ものすごく頼もしく見えたし、口だけじゃなくて、その場でパッと動いてくれる人がいるんやなって思ったんです。そのことで共産党のイメージがガラッと変わったし、政策も現実的だし目の前の問題を解決するために動くし、ただ、さっきも言ってたけど、頭の賢い人たちが難しいこと言ってるっていうイメージが僕もあって、せっかくいいことやってるのに世間的には伝わってないんですよね。で、選挙やったら全然やし、なんか、もったいないなって、せっかく真面目にコツコツやってるのに間違ったことも言ってないのに、共産党そのものをメジャーにできないのかなっていうのもあって赤旗の記者、それだけじゃなく地区委員会の事務所で働いてみようっていうのも、そういう動機もあったんです。

ーー機動力もあると。共産党ってブレないですよね。他の野党のように分裂したり党名変えることもないし、言うこともみんな揃ってるし。
それでいて、世の中の多様性を重視してるし、一人一人の生き方としては自由じゃないですか。政党としてはこうだけど個人的にはこう思うとか、あまりないように見えるんですけど、議論を重ねて統一していってるんですか?

共産党自身が、だんだんバージョンアップしていってるのは、あるんですよ。コアなところはしっかりしてるんですけど、例えばジェンダーの問題とか、認識不足のところはやっぱりあったんです。組織の幹部というか、そこのところの仕事というか職場は男性中心になっちゃってるところもありました。まだバージョンアップしなければいけないところは常にあるんです。

ーー共産党の中で、私は賛成とか反対とかあるんですか? 例えば、選択制夫婦別姓のこととか、消費税は0%か5%で意見が分かれるとか。

もちろん、ありますよ。意見が一致しないことはあって、そこを議論をしていくんですけど、大きなところは一致してるんですね。今の日本の政治っていうのは、ひとつはあまりにも大企業を優先しているってこと。それと、あまりにもアメリカの言いなりになってるっていう、このふたつが日本の政治の転換していかなきゃいけないところっていうのが共産党の綱領に書いてあります。
この綱領を「その通りやな」って思う人が共産党に入ってこられて一緒に活動することになるんですけど、そこが一致してるので、多少の意見の違いはあっても議論をするうちに認識は一致していくのかなと思いますね。そういう大きなところが一致してないのに、たとえば数合わせで一緒になったりとかすると、どうしてもズレちゃうのかな。
あとは大きいところでいったら、資本主義の世の中で人類の歴史は止まってしまうんだろうか、と。いや、そうじゃないんじゃないかとか、もっとその先があるんじゃないかっていうのはマルクスの理論になりますけど、そこも将来的な展望が一致してる人が集まってるから、大きくずれていくことはないんじゃないかなと思いますね。

ーーその辺になるとまた難しくなっていきますね。マルクスの理論はもうちょっと勉強してからお聞きしよう。
あと、天皇制についてお聞きしたいんですけど、子どもの頃の話なので大分昔になりますが、入学式の来賓で来られた共産党の議員さんが、国歌斉唱の時にみんなが立ってるのに座っちゃう場面を見たことがあって、子ども心に凝り固まった思想をもってる人たちなのかなと思ったりしましたが、やっぱり天皇制は反対ということで一致してるんですか?

そこは、そうですね。でも、「君が代」の時に共産党だから座らなきゃいけないって決めてるわけではないです。普段の生活の中で、どういう行動をとるかは個人の判断で自由なので。
ただ、ここは大事なとこなんですけど、今の天皇制っていうのを、今すぐ何か変えなきゃいけないっていうのは実は共産党は思ってなくて。今の日本共産党は日本国憲法を守ると。その中には当然、天皇の条項も含まれてるので、そこも含めて憲法を守るっていうのが今の立場なんですね。
なぜかというと、戦前の社会は天皇が絶対的な権力を持ってたので、国民主権というか民主主義の世の中に転換しないといけないってことで主張してきたんです。今の天皇って、そういう権限は持ってませんよね。実際には国会で形式的に出てきて挨拶はされますけど、議会制民主主義で選挙で選ばれた議会が実質的に権限を持ってるので、今、何か天皇が政治的に問題があるかっていうと特別ない。
ただ、同じ人間なのに特定の個人が特別に扱われたり、そこに税金をたくさん使われてるのは平等ではないので、将来的にはなくすという方向におそらく世の中は進んでいくだろうなというのは思ってます。将来的に国民の側から議論が高まった時には、もちろん議論していきましょうという立場ではあるんですけど、今大事なのは、大企業とアメリカの影響があまりにも大きいので、そっちをなんとかしなきゃいけない、というスタンスですね。
(つづく)

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