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思い出の誕生日

人生、それなりに歳を重ねてくると
いくつもの思い出が生まれるものだ。
甘美な思い出もあれば苦い思い出もある。
だけど忘却の作用で思い出として残るものは
たいていは自分にとってよい思い出だ。

その中でも自分の人生を変えるような
人との出会いは何ものにも代え難いと思う。
それを記念日として
記憶に残すことも多いと思うが、
私はそれを「思い出の誕生日」としている。

今日、1月26日はその「思い出の誕生日」だ。
中学2年のときに同じクラスのある女の子を
好きになった。2度目の初恋だった。
その女の子の誕生日が今日というわけで
それ以降、21歳まで彼女が僕の心に棲みついた。

はじめてバレンタインのチョコレートを
もらったのも彼女からで、
そのときの様子は今も鮮明に覚えている。
修学旅行での胸が張り裂けそうな思いも
僕の生き方を変えた一言も覚えている。

中学卒業前に僕が彼女にかつけたキャッチは
「謎のプリンセス」だった。

現役で大学受験を失敗した後、
辛かった浪人時代を心の奥深くで
支えてくれたのも彼女の存在だった。
決して、ずっと両思いの時間が続いたわけでは
ないのだけど、都度、彼女はやさしかった。

それから数十年経ち、それぞれの人生を歩んだが
5〜6年前幼なじみを通じて彼女の連絡先を
得ることができた。メル友になり今では数少ない
LINEで時おりメッセージを送りあう友だちだ。
不思議なもので思い出は時を経ても生きている。

思い出のあり方は、普通は美化されて
時を留めるものだが、彼女の思い出は同じように
歳を重ねて生きているような気がしている。
そのことを彼女もはばからない。
見かけは太ったよと笑う。

彼女も地元にいるので、僕が地元に戻ったときに
真っ先に連絡をしたのは彼女だった。
野郎の友だちはとりあえずその後にした。
地元で生きていく上で思い出のゼンマイは
巻いておくべきだと思ったからだ。

留まっていた時間を再び動かすのは容易くない。
意外と負荷がかかるものだ。
でも錆び付いてはいなかったことが救いだ。
彼女との思い出の時間が留まることなく
動いていたことが僕を勇気づけた。

ありがとう。そして誕生日おめでとう。
今朝、LINEでメッセージを送った。


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