真っ白な一行
何も書かれていない
真っ白な一行の詩を書いた
何も書かれていないので
だれも読むことはできない
でもそこには確かに存在する
真っ白な一行の詩がある
その一行は何も語らない
その一行は何も問いかけもしない
時が熟するのを待つのか
時が朽ちるのを愁うのか
誰が見ることができるのか
誰も見ることができぬのか
時間は音を発てないままに
一行の詩を載せて運んでいく
時間は存在を運ぶ舟だ
見果てぬ航路に向かう舟だ
いつか時間が積荷を
降ろそうとするときがくる
存在が遺した軌跡が詩となって
墓碑銘となり刻まれる
そこで一行の詩は完結する
静かに完結する
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