続けることで生まれる価値

 「継続は力なり」とはよくいったものです。惰性による無意味な継続は大した成果を残せませんが、よく練られた方策の継続や目標を見据え修正を重ねながらの継続は成果を残し価値を生みます。いきなり大きな成果をあげなくても、積み重ねた努力や工夫は技術的進歩や内面的成長をもたらしてくれます。目標に向かって地道に努力を積み重ねることは、個人差はあれ、身に付くものが必ずあるものです。苦手なものも少しずつ続けていけば、その小さな継続が苦手を克服することさえあります。
 例えば、長い文章を書くことが苦手な人でも、短い文章を数多く書くことで文章を書くことに慣れ親しんでいき、やがて長い文章も苦にならなくなります。次第に短い文章では物足りなくなってもきます。それは、表現することを体感していくことによって、その意味や価値を見いだす作業でもあるのです。そして、長い文章も苦にならなくなってきたとき、今度は逆に短い文章で表現することの難しさと面白さに気づいていきます。この相互に表現することを学ぶことで書く技術は進歩するのです。
 アイデアを練り上げていくときも同様です。一回や二回の失敗で諦めてしまっては得られるものもそう多くありません。上手くいかないことには原因があるはずです。それを省みないですぐ別のテーマに飛びついてばかりいては同様の失敗が続くだけで期待するような成果は得られません。
 一つのことを長く続けるということは並大抵のことではありません。長く続けていれば、多くの障害が立ちふさがったり、継続への疑問が生じます。思うようにいかず、挫けることや凹むこと多々あります。しかし、続ける先に見えているものがある、確信できる思いがあるうちは続けることができるはずです。それは目標といってもいいかもしれません。一人でできなくても何人かの仲間とならば続けることができるかもしれない。また、たった一人の理解者がいるだけで頑張れることもあるでしょう。そのことがかたちになり、新しい価値を形成していくことになるのです。短絡的に刹那的に物事を見ていては、なかなか続けることで生まれる価値を見いだすことはできません。どれくらいのスパンで見ることができるか、考えることができるかで創造の形態は変わってくるでしょう。
 何かを始めたとき、その先に何が待っているか分からないこともあります。そのときはそれを始めたという自分の気持ちや思いを信じる、そのことを原動力にするのです。そして、続けながら先に見えるであろう成果を探っていくことです。
 人間は未知への探究心を進化の原動力にして歴史を創ってきました。まったく無意味に終わることはそれほどありません。自分で意味や価値を見いだせなくても、それを見つけてくれる人や感じてくれる人が必ずいるものです。一つのことにこだわり続けることは探究心の現れですし、意味を持って何かを続けることは価値の創造プロセスを歩んでいると考えましょう。
 続けること、それも一つの能力です。小さな成果がなければ大きな成果は得られません。今一度振り返ってみましょう。何か大切なことを安易に諦めてしまっていることがありませんか?
(初出:2003.12.07)

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