小さな森

探す

ぼくらには 言葉が必要だった
考えをまとめるにも 手紙をかくにも 
想いを伝えるにも
ずっとずっと 言葉が必要だった

ぼくらには 時間が必要だった
行き先に惑い 自分に苦しみ 
切なく枯れるように 泣くのにも
それ相応の 時間が必要だった

ぼくらには 居場所が必要だった
こどものころは 秘密基地だったし
親を閉め出した 自分の部屋だったし
だれにも邪魔されない とっておきの場所だった

ぼくらは不完全で いつも何かが欠けていた
ぼくらは弱くて かなしいほど弱くて
ぼくらは臆病で くやしいけど臆病で
ひとりでは何もできなかった

ぼくらは    言葉を失った
言葉をなくしたと同時に
わきあがる感情があることを知った
それでも    そのあとに言葉が必要になった

ぼくらには 言葉が必要だった
ひとりで居るときでも
いつもいつも 言葉を探している
伝えるために 言葉を探している

不完全さは 言葉で繕うことができる
どこかで交わる時間と
どこかで重なりあう場所が
欠けたものを 補ってくれている

ぼくらは 言葉を探して 彷徨い 佇んでいる

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