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夜の帷

溶けた記憶を
ぐるぐるかき回して
少しずつ いや一気に
乾いたのどに流し込めば
窓の外はもう九時だ

ガランとした精神には
沈黙の帷が降りている
壁の二つの針が
胸を突き刺すが
今は動けない人形だ

湿った夜気は
ここまで沁みてくる
虚飾を取り去ったら
細い針金のような自分が
それでも残っていた

僅かな安堵と自然解
それは美しいはずだった
微かな瞬時の想いは
急に 針に乗って
ぐるぐる回り出す

微熱を ずっと
僕は 疑い続けてきた

薄目をすれば
景色は違って見える
両手で
カップを包めば
まだ温かい鼓動だ

夜の帳は降り切った
一瞬 矢が
頭を突き抜けたら
ここには
誰も居なくなった


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