熟れた柿

余情

誰にも捥いでもらえない柿が
まるい日差しの中で熟れている

誰にも捥いでもらえない柿を
からすが何羽もやってきては啄む

誰にも捥いでもらえなかった柿は
無惨にも喰い散らかり落ちていく

誰にも捥いでもらえなかった柿の
わずかに残った果肉が日に照らされる

秋はここまで忍び込んで後始末する
柿の葉も色づき落ちて根元に盛り上がり

やおら風を受けてかさかさと
舞い上がっては散らばっていく

やがて朽ちて土に還るまで
秋の名残りをじっと抱え込んでいる

オレンジ色の日差しの中に
溶け込むように時間が刻まれて

季節はゆっくり冬に向かうのだ
じっくり熟した時を捥いで

境目のない蒼色の空の中に
放り投げた寂しさを消して

季節は静かに冬を迎えるのだ
たっぷり熟した時を啄んで

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