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川田あつ子「秘密のオルゴール」 82年組デビュー組の中で可愛らしさ全開の良曲

1982年にデビューした女性アイドル、いわゆる82年組のなかで、私が最も可愛いと思ったのは川田あつ子であった。

彼女が「秘密のオルゴール」でデビューしたのは、1982年4月21日。奇しくも、早見優や石川秀美と同じ日である。CBSソニーからのデビューとあって、制作陣も豪華だった。何しろ作詞・松本隆、作曲・財津和夫、編曲・大村雅朗である。これは、松田聖子の「白いパラソル」と同じ布陣で、聖子陣営の面々。それもそのはず、川田あつ子をプロデュースしたのは、聖子のプロデューサーだった若松宗雄氏だった。
当時の松田聖子は、「赤いスイートピー」で女性ファンを獲得し、続くシングル「渚のバルコニー」と、5月発売のアルバム「パイナップル」を出そうとしていた時期。アルバム制作に関わっていた制作陣も、気合が入っていたはず。そうした中で発売された「秘密のオルゴール」だったが、残念ながらオリコンチャート最高82位と奮わなかった。

このデビュー曲の一番のポイントは、何といっても川田あつ子の歌唱であろう。素人が歌うような、たどたどしく危なっかしい歌声が聴けるのは、今となっては貴重である。しかもサビでは、明らかに音域を外れる。
BS12で放送中の番組、カセットテープミュージックでは、「日本アイドル史概論2(早見優がゲストの回)」の中で、この曲が「フェアリーソング、3分間の宝石」という素晴らしい名目で紹介されていた。ちょうど私は番組を見ていたが、「秘密のオルゴール」が流れてきた時は驚き、「よくぞ紹介してくれた!」と拍手をおくった。マキタさんが「よくレコーディングにOKが出たものだ」と話していたのが、印象的だった。

案の定というか、川田あつ子は8月にセカンドシングル「ごめんなさい」を出して音楽活動は終了。女優に専念する。音楽歴はシングル2曲という短かさだった。この曲もプロデュースは若松氏だが、制作陣はガラリと変わる。作詞・作曲が鈴井みのり、編曲は戸塚修。聖子陣営には声をかけなかったようだ。

…と、ここまでは川田あつ子の一般的な紹介で、ここからが本題である。

高校生になりたてだった当時の私は、81年秋に電撃的にデビューした伊藤つかさの大ファンだった。しかし、82年の春からは82年組らが続々とデビューを果たす。そうしたアイドル勢がしのぎを削るなか、伊藤つかさは少しずつ、影が薄くなってゆく。そして私も、5月にデビューした中森明菜のファンになり、伊藤つかさから自然に推し変していった。そして、伊藤つかさと同じロリータ系テイストの川田あつ子が私の目に留まったのも、自然といえば自然だった。ファンになったきっかけは、当時、私が愛読していた雑誌「BOMB」に出ていた川田あつ子の写真を見たことだった。記憶が定かではないが、一目見て惹かれたように思う。同じテイストのアイドルには堀ちえみ もいたが、なぜかそちらには惹かれなかった。

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「秘密のオルゴール」も、ラジオから録音(エアチェック)して、カセットテープで繰り返し聴いた。清純な少女にふさわしい可愛らしいメロディーで、良い曲だと思った。特にサビの部分のメロディー「♪sixteen sixteen ボッサノバー」が大好きで、川田あつ子の可愛い歌声に萌えた!私にとって、アイドルの歌唱力はどうでもよかった。全ては可愛いかどうか、曲が良いかどうか評価基準だった。そもそも「秘密のオルゴール」はAMラジオから録音したので、モノラルで多少のノイズも含まれており、歌唱の良し悪しは気にならなかった。FMからステレオ録音できなかったことが悔やまれるが、当時の地方はNHKが唯一のFM局だったので、「秘密のオルゴール」が流されることはなかった。

あと、「秘密のオルゴール」のシングルレコードを買わなかったことも後悔している。当時の私は、上述した伊藤つかさの他に、松田聖子もチェックしていた。そして、82年夏からは中森明菜にハマった。当然、レコードの購入資金も、つかさや聖子に充てられて、この時期は既に「赤いスイートピー」や「夢見るシーズン」を買っていた。余剰資金がなかったか、それとも買うのを忘れたのか、理由はわからない。でも、82年の4月から5月までの短い期間、川田あつ子が私のイチ推しアイドルだったのは間違いない。

あれから時が過ぎ、「秘密のオルゴール」のメロディーだけが、私の頭の片隅に残っていた。10年くらい前、「秘密のオルゴール」が80年代女性アイドルのオムニバスCDに収録されていることを知り、購入した。(奇しくも「BOMB presents 永遠の80お宝アイドル大集合」という名称のCDだった)この時に初めてステレオでこの曲を聴き、歌唱込みで改めて可愛いと思った。

そして今年、シングル発売から39年の年月を経て、ついに私はレコードを入手した。ジャケットに写る川田あつ子を見て、デビューに胸を膨らませていた16歳の少女のことを想うと、少し胸が切なくなった。

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