秒針

画像1 137億年前に宇宙が始まり、46億年前に地球ができた。iPS細胞やエピジェネティクスで難病が治癒改善する。…そんなことがわかっても、目の前のいのちの声すらわからない今。
画像2 きりもなく山から海へと送り出される流れ。飛沫。消えては湧き、現れては潜る。川底は、ずっと動かない。何年も磨かれ、育まれる赤茶の藻。その石ころの集まり。
画像3 ため息のような途切れ途切れの呼吸。こんなにそばにいても、求められていることがわからない。日に日に、軽く、薄く、一息ごとに別の何かに居場所を明け渡している。質量保存の法則?エネルギー保存の法則とか。ここにあるいのちの一部が、どこかで置き換わっていると考えるのは、少しだけ慰められる。
画像4 淡い雲母のような断層が眼球にできた朝から、粘る泡が口元に盛り上がるようになった。それでも、こんなに手触りの良い毛並みは他に知らない。額や頬を抉るような深い骨の窪みや先端の丸み。この、ここにある、輪郭。かたち。強かった匂いが薄く、毛布や段ボールに、ごったになった空気の中に溶けていく。みな、この吐息の奥の奥を、ただただ見つめることしかできない。

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