望みどおりなんだから。

先週、歯が取れた。いかにもメキメキーッと、へし折れ感たっぷりな音を耳にした2日後。
いずれこの日を迎えることは、歯医者さんから聞いていた。
弱いのよ。差し歯は。
聞いてたよ。
神経取った歯は折れやすく、差し歯も場所柄難しい角度でつけてあるって。

仮にS歯科医院としよう。
このS歯科医院の治療内容に満足していれば、喜んでこのわたしのどうしようもない厄介な歯をさし出そう。
口を開けたまま15分以上放置されても、唾液の溜めどころを確保しながら、お天道様の匂いのする気配を、じっと待ち続けるだろう。
一週間放置。
痛くないからではない。
人並みに下前歯中央寄りのミソッパを晒すのは、恥ずかしい。
悪意のない、間抜けな、油断してるとすべての人の固まった顔筋を緩める威力大な、このあるべきものがない、可笑しさ。
恥ずかしいのに、近年稀に見る大雪を連日くらい、拳でタイヤを突き上げられるような逆モグラ叩き状態の路面に、勝つこと能わず。
…S歯科医院のどこが良いんだ？
速い、インフォームドコンセント良い、上手いと聞いて飛び込んだが、詰め物は2日後に取れ、差し歯も一年保たなかった。他にも対応に疑問が湧くことがあった。

歯科に限らず、人の体を一時的にでも預かるところは、腕もさることながら、そこの全体の人柄や雰囲気は大切だと思う。
他人に最大接近されるとき、私は(たぶん他の人でも)とてもナイーブになる。
その人たちの心の動きを、椅子に張り付いたまま、自分の感覚を総動員して確かめてる。
そして、腕もよし人柄も良い人に出会えたら、席についてくれただけで、うわーん、良かった〜！ありがとう！ありがとう！ともう治った気分になる。

口調がぶっきらぼうで少しロボットっぽい小児科の先生、好きだったな。
なんかもう、秒速診察だけど見立てバッチリ、最低量濃度の薬で最大効果あげてくれてた。
ありがとうございますって隙間をかいくぐって言ったら、私の目を見てほんの少し笑顔になった。
あー！この人いい人だー‼︎
もうすきすきすき〜！
院内においてある読み物も、家庭での発病・怪我の対応、病院に行くかどうかの見極めの参考になるものや、小児科医の超過勤務についてなど、考えさせられる内容のものが置いてあった。
バカ丁寧だったら良いってものでもないな。
…引っ越してもう行けないけど、あんな人で歯医者さんっていないかなあ。

良い、歯科医院かぁ。
口コミ情報しか頼りはない。
そして、みんな部分的に良いところあるんだけど、すべてが揃っているところは、今のところ皆無だ。
なにかミソがつくんだ。
二の足を踏むようなミソが。
だけどもう一回、今まで行ったいくつかの歯科医院の記憶の引き出しを開け、今回の目的をよく見定めて、私の一番の希望を叶えてくれところに、let's goだ。

道も走りやすくなったことだし、これから行ってきます。