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Calling 〜吉田美奈子の「福音」

「これまで圧倒的な歌声と極上のクオリティーで魅了し続けてきた吉田美奈子。
新作のライブ盤は、教会で行われた2時間のコンサート全19曲を収録。
視覚的なサウンドスケープを紡ぐボーカルとピアノ、パイプオルガンの
三者の音がまるで万華鏡を廻すごとく溶け合い、渦となり天空へ解き放たれ、
アンサンブルとしての藝術のひとつの完成形を魅せる。
天から降り注ぐ音の「福音」に胸の轟を抑えきれない。」
吉田美奈子さんの新作「Calling」のレビューを書いてみた。
「Calling」は「天職」、「神のお召し」という意味もあるが
このタイトルにはきっとそういう意味が込められているのではないだろうか。
この夏に購入して、暫く寝かせておいた後
「今 聴きたい。」というタイミングで聴く。
初めてこのアルバムを聴いて抱いた印象をコトバにすればそれは
「福音」
これは 吉田美奈子さんの福音だと、そう感じた。
このアルバムは昨年、教会で行われたコンサートを収録したものなのだけど
2時間、休みなしのコンサートで演奏された全曲19曲全て収録されている。
これは単純に、実は凄い事だと思う。
 
「収録時間 2時間」という長丁場で
演者も聴者にも
相当プレッシャーや緊張感があったのではと想像していた。
ところが想像していた程の緊張感はなくて、かと言って緩んでいるわけでもなく
終始これ以上はないバランスを保った中での空気に驚く。
それは録音芸術のなせる技なのか、それとも奇跡的な瞬間だったのか、
機会があれば当日このコンサートの場に居た方にいつか伺ってみたいと思う。
今回はヴォーカル、ピアノ、パイプオルガンのフォーマットで
録音エンジニアは吉田美奈子さんの兄にあたる
吉田保氏が担当されています。
アルバムの内容としては、これは私にとっては1989年にリリースされた
「Dark Crystal」以来の大衝撃を受けた。
15,6歳の時に初めてこのアルバムを聴いた時のように
爪の先から髪の毛の先までゾクゾクと電気が走ったようになり
そのあとは まるで桜吹雪が風に舞うようにハラハラと涙が零れ落ちて
語り尽くし得ない歓喜の異空間の中に放り込まれた。
それほどまでに心に波風を立たせた理由とはたぶん
その時代にない、今の世の中にない
でも 必要な音だからだろう。
このアルバムで 彼女は「アンサンブル」としての藝術のひとつの完成形を
提示しているように思う。
「アンサンブルとは?」
私がここ10年以上も考え続けてきたこと。
それは、全体の音が魂と溶け合うような感じと言えばよいのだろうか。
音が限りなくタイトで一本の糸に聴こえる状態であること。
音が触れ合うところに魂が立ち現われ 完璧なハーモニーを奏でていること。
彼女の新作は、吉田美奈子のアルバムというよりも
演者3人で創り上げた音楽であると感じられるほどに
3人の奏でる音が溶け合い、浮遊して、舞い上がり、流れていった。
「パイプオルガン」という特殊な楽器を扱っているのにも関わらず
これほどまで自然なハーモニーを奏でられているのが驚きであった。
彼女がイメージするアンサンブルの世界はこれだったんだと確信できた
深く納得のいく作品だった。
そういう意味での「福音」。
ヴォーカリストという立場で見れば
休憩なしでの2時間のコンサートの、彼女の集中力と完璧なボイスコントロールに
ただ ただ唸らせられるばかりである。
もうひとつは、ピアノの森俊之さんの果たした役割というのが素晴らしかった
ということにも触れておきたい。
ヴォーカルとパイプオルガンの狭間で黒子に徹しつつも
彼の我欲の無いピアノがこの音楽の中で重要な役割を果たしていることに気付かせられる。
このアルバムは日本の音楽に於いて
間違いなく歴史的名盤になるだろう。
天から降り注いだ音の福音を
共に分かち合えたら嬉しい。

*吉田美奈子さんのアルバム「Calling」は2016年に限定発売されたアルバムですので、現在は完売しているようです。


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