もし僕が死んだら

もし僕が死んだら、まず伝えたいのは、やめてしまった中学の生徒に、もっと精一杯褒めてやれば良かったな、本当にごめんなさい、という事だ

ぼくは授業がクソみたいに下手だったし、きっと保護者や同僚や上司からの評判も悪かった

でも、ぼくは生徒のことをよく見ていたと思う

おそらく僕はその学校の教師で唯一、学年全員の名前をフルネームで覚えている教師だったのではないかと思う

担任した生徒のこともよく覚えている
正直言うと、たとえば「青のすみか」みたいな、楽しかった頃や輝いていた頃を思い出させるような歌を聞くと、担任していたクラスはよく呼び起こされる

すごく楽しかった1年目のクラスも、
つらい時もあった2年目のクラスも、
本当によく覚えている

とにかくよく見ていたはずだった

自分には能力なんてないんだからさ

本当に本当に、もっと、いい所を伝えるっていう、そういうことはできたんじゃないかなあ

2年目のクラスで、上手くいかなかったことばかりだったけど、そこそこ手応えを感じたこともあって、それは社会の授業をこっそり潰して延長した学活で伝えたこと
学級委員の2人がいかにすごい人たちなのかっていうこと
あれは、泣いてる子も結構いた

あの熱量で、単に、伝える、っていうのはさ、色んなしがらみがあっても、色んな制限があっても、色んな能力不足があっても、まだまだやれた事なんだろうな

学級委員の2人には逆に、厳しいこと言っちゃったよな
恥ずかしくなるよ

本当に恥ずかしいよ

あの二人は、本当にカッコよかった

正直に言うと、夢に出てくることもある
あの二人に、蔑まれる夢とか、見ることもある

まあとにかく、ああいうふうにさ、伝えられたら良かったな、もっとさ
みんな本当に、凄いところがいっぱいあったんだからさ

何で伝えなかったんだろう

特に2年目は悔やまれるな

ずっとおかしくなっちゃってたよな

毎日毎日イライラしたりキリキリしたりさ

本当に、生徒の皆が、かわいそうだ

情けない

……

生徒と同じくらい、伝えたいことがあるのは、弟だね

弟には本当に、申し訳ない気持ちがずっとある

なんでもっと優しくてカッコイイお兄ちゃんでいられなかったんだろう、ってね

しかしながら彼は、本当に優しい弟だった

面白い弟でもあった

才能の原石だった弟でもあった

弟にも本当に申し訳無い気持ちでいっぱいだ


……

両親には、正直、恨みみたいなものがずっとあった

けど今は、健康な体に産んでもらい、また、育ててもらっただけで感謝できる

いやでもやっぱり、こんな人間になってしまったのは親のせいな気がするな

特に、今よく一緒にいる人に指摘される悪い部分は、大体両親のせいで存在してる気がするな

いやでもやっぱり、健康に人を育てるって言うのは奇跡みたいなものだからなあ

それだけで感謝

……

死にたいな
でも心の中では分かってる
死にたくなるのは、いつも通り一過性

そして次は、一過性の、懸命に生きたい気持ちが湧いてくる

実現不可能なことも含めてね

一昨日なんて、よなよな、「音楽の先生」になって、全てをやり直そうかなとか本気で考えてたからね

こんな気持ちに波がある人間に、居場所なんてどこにもないじゃないか

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