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Hyggeという生き方がもたらす豊かさ

現在カナダのケベック州からニューロサイエンス(神経科学)のPh.D.の女性がうちに10日間ほど滞在しているのだが、彼女とランチをしているときに、「世界で最も幸福な国」として知られるDenmarkでは「Hygge(ヒュッゲ)」という生き方がその根源になっているということを知った。
「Hygge」とは「人と人とのふれあいから生まれる、温かな居心地のよい雰囲気」というDenmark語だそうだ。
同僚とランチをゆっくり食べる。仕事は4時に切り上げ、友人たちと飲みに行く。休みの日には家族や仲間とハイキングに出かける。長期のバカンスをとって、様々な国に出かけて多様な文化や人々と出会う。
一見「遊んでいるだけ」に見えてしまうかもしれないが、実は全く異なる。これが創造的で生産的な仕事のやり方に繋がっている。

実際に彼女も言っていたようにGoogleやAppleなどの企業では、それを理論的に理解し、職場での制度として奨励している。これによって、新たな発想が生まれてビジネスにつながっていくのみならず、職場内の交流も深まり、より良い職場環境が生まれていくからだ。

多様性、そしてその交流が創造性を高める、ということは明確であるが、それを日々の暮らしのなかで「当たり前」になっているというところが、まさに生活文化としての違いなのだろう。

良くも悪くも日本はいわゆる「改善型」で20世紀の高度成長を成し遂げた。今あるものをより良い性能などにしていくということだ。
しかしながら現在では「改善型」が行き詰まっている。端的な例で言えば、TVが3Dだとか4Kになっても、もはや購入動機には結びつかない。TV番組を視聴するというだけなら、薄型のカラー液晶テレビで十分だからだ。

モノが豊富にある時代においては、より本質的なものが求められていく。つまり人と人との交わりを促進することや、ストーリーのあるモノを購入するといったことになっていく。

これはつまり、人間としての豊かな生活は何か、ということをわかっているかどうかがビジネスに繋がる新たな発想につながっていくということとも言える。つまり、Hyggeである。日常からHyggeな生き方をしていることが、精神的な豊かさに繋がり、その暮らしの中から自然と時代に合った発想が生まれてくるのである。

Design Week Kyotoを始めたきっかけは、まさにここにある。日常的に多様な人たちが寛容性を持って楽しく交流し合うことが創造的な街につながっていくと思ったが、そういった土壌がない状態では、いきなりは難しい。そのため、まずは1週間から始めた。これがきっかけとなり、日常的に多様な交流によってもたらされる精神的な豊かさが文化として根付いていけば、Hyggeに代わる日本なりのライフスタイルに繋がっていくだろう。

プレミアムフライデーのような仕組みを形式上設定することはダメとは言わない。しかしながら、まずはそういった暮らしをすることが豊かさに繋がっていくということを一人ひとりが当たり前に理解して文化として定着してから、それを形として落とし込むというのが本来のあるべき姿ではないだろうか。

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