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ピンポイントの意義(1月第4週)

 毎週土曜、シニアの皆さんを対象にZOOMを通じて、時事ニュースや科学ニュース解説を行っています。そこで扱った話題をダイジェストでご紹介します。
 1月第4週はJAXAの月着陸実証機SLIMの続報です。「ピンポイント着陸」の意義を解説しました。(画像は筆者の冠動脈造影,PCI前検査)


1)最終降下に魔物がいました

 1/25の記者会見で着陸時の詳細が明らかにされました。
・精度3~4m達成!
・エンジンノズルがひとつ脱落!?
・リカバリーして100m以内の目標はクリア!
・ノズルの写真、撮れちゃった!!
・まさか倒立状態!?
・いそいで電源OFF!
・写真撮れた、倒立で!!!!
など情報が渋滞しています。

 個人的には減速中の画像照合で、機上と同じ作業を管制室でもバックアップで行っていたという話に興味をひかれました。
 かつて月周回探査機「かぐや」の軌道投入の際、「もっともクリティカルなコマンド投入のまさにその時、管制室を地震が襲う」という事態まで想定し、長野県のアンテナ設備からバックアップを行う体制を作っていた、という話を思い出しました。
「100%に限りなく近づけ、その上でうまくいかなかった場合にも備えをする」という思想です。

2)ピンポイントで嬉しいことは?

 狙ったのは「光条」と呼ばれる、クレーターから放射状に伸びる明るい部分です。クレーターができたとき、掘り返されて周囲にばらまかれた地中の物質が残っていると考えられるからで、そこを狙って降りて探査する能力を実証したことになります。そのような出自であろう岩塊に犬種にちなんで名前がつけられたことで「月面ドッグラン」などと呼ばれたりも(笑。

3)カテーテル手術もピンポイント

 では、他に「ピンポイント」が実現したことで、その営みの質が劇的に変わったことってあるだろうか? ということで、以下をご紹介しました。 

患部にピンポイントで到達・処置できるカテーテルが威力を発揮するシーンのひとつが、脳梗塞の超急性期治療です。

 治療が早ければ早いほど、障害なく生活に復帰できる比率が高まります。

4)脳血栓回収の手術が急増

 被災直後から断水していた七尾市の能登総合病院では、給水車による断水の一部解消で手術が再開されましたが、カテーテルによる血栓回収の手術が、1週間で前年の4分の1の件数に達するという異常なペースです。いわゆるエコノミークラス症候群によるものと思われます。ただ「避難所生活で異常が見つかるのも早かった」ことも、手術にまでつながっている理由かもしれません。

 ただ、完全な断水解消にはまだ時間がかかりそうです。


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