おじいさんが来る時、いつも父がいない
クリスマスの思い出。
いつもより少し豪華なご飯を家族みんなで食べて、プレゼントまでもらえて、最後にはチョコレートケーキまでついてくる。
赤、白、緑、少し黄色。飾り付けされた部屋は、絵本で読んだあの遊園地と似ている。
何のお手伝いをしなくとも、お楽しみ特典ばかりの1日。
「ねえねえお母さん、毎日がクリスマスだといいな。」
「お母さん見て!ケーキにトナカイが乗ってるよ!」
「お母さんにもプレゼントは届いた?」
お母さん、お母さん、お母さん……お母さん。
あれ? お父さんは・・・?
・・・またいない!
クリスマスの夜だけ突然姿を消すお父さん。
「タバコがないや」といつもは歩いてでも行ける商店まで、その日ばかりはバイクで向かう。そして必ず、そんな時にしか現れない白髭のおじいさん。大きな袋を抱えて今年も来てくれた。
「君はご飯をたくさん食べるようになったね。えらいぞ。」と、褒めながらプレゼントをくれた。
おじいさん、あなたはやっぱり子供たちのこと何でも知ってるのね!
あぁお父さん、たばこなんてどうでもよかったじゃない。どうしても必要だっていうのなら、前もって用意しておくべきでは?
このおじいさんは世界中を飛び回るものすごく忙しい人。そんな大スターがまさに今、この家にやって来たというのに。なんてタイミングの悪い2人なんだ。
「来年は会えるといいね」
もう何回この言葉を言ったんだろう。
同じことを何度も言わせるな、といつも私たちを叱るくせに、子供たち3人からの言葉は全く届いていないようだ。
そんなことを考えているうちに、どんどん時間は過ぎていき、
「おっと、もうそろそろ行かなくては。私を待っている子はたくさんいるからね。寂しいけどお別れだ。
お父さんとお母さんの言うことをちゃんと聞くんだよ。」
そう言っておじいさんは出て行く。
ねぇねぇおじいさん、人の言うことを聞かないのはウチのお父さんだよ。
シャンシャンシャンシャン……
ではなく、ブォーーーーン!と勢いよく次の街へ向かうおじいさんに手を振り、しばらくして父が帰ってきた。
はーぁ、今年も言わなきゃいけないのね。
もらったばかりのプレゼントを抱えながら3人で父の元へ駆け寄る。
「来年は、絶対にたばこ買いに行っちゃダメ!」
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