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「あの人のスイートホーム」 #1 お酒と料理 えいよう 店主 清水峰夫さんのスイートホーム

家に帰るみたいに通ってしまう店がある。

仕事と生活の行き来からすこし離れた、人には教えたくない住処のような場所。

キッチンから聞こえてくる音に毎日の食事ごと愛おしく思うお店とか、

「そろそろナポリタンを食べる頃。」とか言って店主に会いに行くお店とか、

あたたかい和食とビールには味方でいてほしい日に足が向くお店とか。

暮らしの中ではご褒美でも、食べて飲む場所だからいつも身近で、背伸びを忘れて脱力できる場所。

そんな『スイートホーム』と呼べるような飲食店を営む皆さんにも、それぞれのスイートホームがあるのかも。なにを食べて、どのように過ごしていたのか。あの店のあの人が我が家のように思えるお店、「スイートホーム」な飲食店について教えてもらう企画です。


第一回:「婆娑羅」(三鷹)

ーお酒と料理 えいよう 店主

     清水峰夫さんのスイートホームー

いつも一人で行くか、奥さんと行きます。焼き鳥の串の盛り合わせは必ず頼みますね。あとはしめ鯖、お刺身と煮込み。お酒は大体決まってビールと日本酒。

奥さんはね、あんま飲まないんです。
だから奥さんと行く時は、奥さんがなんでも好きなものを頼む。どっちかっていうと食べるメインというか。

お酒と料理 えいよう店主 清水峰夫さん

婆娑羅に初めて行ったのは15年くらい前。親戚にいいお店があるって連れていってもらったのが最初でした。その時のことは今も覚えていますね。あ、こんなお店があるんだって。もうかなり古いお店で…そうそう、常連さんばっかりでした。あと、おじさんばっかり(笑)僕が30になった頃だったかな。それでも店内で一番若かったですね。不思議と居心地は良かったんです。コの字カウンターで、初めて(自分でお店をやるなら)こういう形がいいなあって。

ここ(えいよう)の物件を契約したくらいですかね。前に働いていたお店の常連さんと飲むことになって婆娑羅に行きました。ちょうど沢山のことを決めないといけない時期だったので、店主の大澤さんに話してみようかと。

10年前の当時、大澤さんは67、8歳くらいだと思うんですけど、怖かったんです。
気さくに話すっていうよりは頑固親父のイメージ。だからそれまであんまり話をしたことはなくて。
けどいろいろと教えてくれましたね。スタッフは雇った方がいいとか、不定休はやめた方がいいとか、ちゃんと細かく。

その日は広島カープが25年ぶりに優勝した日でした。僕はカープファンで、婆娑羅に壁掛けのテレビがあるんですけど、ビールかけをしていて、だからすごく印象に残っていますね。

本当は家のテレビで野球を見たかったんだけど…(笑)
ユニフォームを着てたから、他のお客さんにもおめでとうおめでとう言われたりして。

大澤さんは自分の父親よりもちょっと上くらいで、親戚のおじちゃんみたいな存在ですね。ほんと大先輩。70歳過ぎて毎日ちゃんとお店に立って、その姿勢というか威厳というか。単純にすごいと思います。尊いというか、そういう感じがしますよね。

歳を重ねていくうちに柔らかくなっても、元あるスタイルは守るっていうのは変わらない気がします。コロナの時も、かなりきっちり。休むって言ったら、休み。

けどお店には毎日来ているって言っていて…
テイクアウトをやることも勧めてみたりしたんですけどね。「それはー…他のお店に任せるよ」って。

そんな大澤さんが元気に立つ姿を見に行っているお客さんも多いんじゃないかなと思います。

僕も、なんだろう…

すこし弱気になった時に行くのかもしれないですね。大澤さんの立ち姿を見て、自分も頑張らなきゃなって、思いたい時に行く。

大澤さんが忙しいと話さない時もあるし、今日はもうあがりましたよ、ってこともあります。

逆に僕が行っちゃったから大澤さんが帰れなくなる日もありますね。
そういう時は隣に座って、一緒に飲んでくれたりもするんです。

「もう俺は帰ろうとしていたんだよ」
「でも来てくれたからちょっと一杯だけ」とか言って。(笑)

大澤さんと僕、共通の趣味がラグビーなので、ラグビーの話をしたり、世間話をしたり。去年は婆娑羅の定休日にみんなで集まって、ワールドカップを観たりもしましたね。

大澤さんを、今度スタジアムに行きませんかって誘っているんです。
ただ「いやあ、階段が怖いんだよ、俺はテレビでいいんだよ」って。

一回は行きたいと思ってるんですけどね。

photo & text_ Sayaka Hori
edit_ KUCHIGAHO


お酒と料理 えいよう
住所 東京都武蔵野市境1-12-4(武蔵境駅から徒歩5分)
電話番号 080-9513-4054
営業時間 17:00~23:00 
定休日 月曜日と第二・第四日曜日

Instagram
https://www.instagram.com/eiyou11/


婆娑羅
住所 東京都武蔵野市中町1‐3‐1 (三鷹駅から徒歩1分)
電話番号 0422‐54‐1666
営業時間 平日17:00~22:00/土曜16:00~21:30 
定休日 日曜 祝日

Instagram
https://www.instagram.com/basara1982/


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