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『The Shipper』の感想と気付いたこと

『The Shipper』が終了してすでにひと月以上。今更な感じですが、ドラマの感想や考察など、書き綴ってみたいと思います。
なお、私はこのドラマを、youtubeのGMMTV公式ページにアップされている動画で、現在付けられている日本語字幕で鑑賞しました。日本語字幕は主に りん(@izilgnaij) さんが付けてくださっています。

※ネタバレありの記事ですので、未視聴の方はご注意願います。

このドラマ、見始めた時はいまいち嵌れなかったんです。KimとWayがあまりに大人でとても高校生には見えなかったし、女の子達が鼻血を出してしまう演出も「コントかな」とか思って引いた感じで見てしまっていたんです。でも、日本語字幕付いてるし、と思って見続けていたら、どんどん面白くなっていきまして。最終的には盛大に泣かされもし、とても心に残るドラマになりました。こういう時日本語字幕の力は偉大ですね。おかげでドロップアウトせずに見続ける事ができました。日本語字幕をつけてくださった皆様、ありがとうございます。このドラマに限らず、字幕付けの作業をしてくださっている皆様には感謝しか無いです。公に私に字幕をアップしてくださっている方々、本当にありがとうございます。

『The Shipper』のテーマとは

このドラマは、主人公のPanの成長がテーマなのだと思います。身体が入れ替わる事でいろんな気づきがあり、いろんな愛を知って成長していく過程が描かれていました。自分が見えている事が物事の全てでは無い事に気付き、人にはそれぞれの立場での正義もある。自分を愛することを知り、家族や友達に愛されている事を知り、自分を本当に愛してくれる人を知る。愛にはいろんな形があることも知って、最終回には大きく成長したPanがいました。

表示されたサインとその意味するもの

ドラマの中でいろんなサインやシンボル、象徴などが出てきましたよね。私は学生時代に宗教学を学んでいた事もあり、ああいったものを提示されると、それについていろいろ調べたり屁理屈こねくり回したりしたくなるタイプなんですよ。シンボルや象徴っていうのは大抵宗教・信仰がらみですからね。なので、印象に残ったいくつかのサインの意味を調べてみました。


常にSodaが身に着けていた虹は「神のお告げ、契約、苦難の終わり、祝福を意味する①」とされています。Sodaは、『The Shipper』の主題のひとつでもあるセリフ ”シッパーとは、「自分の推しが最高の相手と幸せになるのを望むこと」でもそれは「私たちが不十分ってわけじゃない」”というセリフをいう人物で、Panにとっては救いをもたらす人物として描かれていることがうかがえます。

ひまわり
Panたちた入院している病院の病室の壁に掛けられている写真にひまわりが写っています。Panの病室はオレンジ色の大輪のひまわりの花が映っていて、Kimの病室はひまわりが群生している丘の様な風景の写真です。ひまわりの花言葉で検索してみると、私が見たサイト( https://greensnap.jp/ )では、
 オレンジ色のひまわり:「未来を見つめて」
 999本のひまわり:「何度生まれ変わってもあなたを愛す」
となっていましたので、意味することの理解はできます。でももっと違う意図があるような気もしています。KimとKanaが待ち合わせたお店の名前も日本語で”himawari”だったので。もしかして、バンコクには”himawari”という喫茶店があるのでしょうか?


蝶は「魂、不死をあらわす。再生、復活の象徴でもある③」ので、EP11で、現れた蝶がKimの魂であるならば、そのままEP12でPanを助けたところまで地上にとどまっていたと考える事ができます。蝶の姿で常にPanの近くにいて、大事なところで助けてくれたのかもしれませんし、Wayとの最後の会話の時に入れ替わったのかもしれません。

ジェームスディーン
回想シーンでのWayの部屋に貼られていたのがジェームスディーンのポスター。Kimと知り合う前のWayがジェームスディーンに傾倒していた、と考えられますが、同時に大人に反抗する若者の象徴として提示されたイメージでもあると思います。
別の見方をすると、ほぼ初出演で主演を務めたWay役のFlukeをジェームスディーンに準えてその才能を祝福しているのか?と解釈することも可能です。
改装後のWayの部屋はバスケットのユニホームなどが飾られていて、主にレイカーズとコービーブライアントが強調されているので彼がロサンゼルスに行きたいと思う理由を説明している部分ですが、ジェームスディーンもコービーブライアントも、種類は違えど乗り物の事故で亡くなっているので、Kimも乗り物の事故ですでに亡くなっている、という事を暗示しているのかも知れない、とも考えました。

土星
土星は、「なみはずれた記憶力、あるいは長い孤独。丹念に細かい仕事をする。倦まず研究する。忍耐強く訓練する。といった特徴が土星に関連づけられる②」という事なので、Kimの人格を象徴しているのだと思われます。


「ある情況、あるいは世界から、別の情況あるいは世界への移行をあらわすものであり、オリーブの枝をくわえた鳩は、罪の許し、解放を象徴する③」そういった理由から、2人が乗る飛行機はPigeon航空だったのかな?

参照 ①イメージ・シンボル辞典 大修館書店 1984年
   ②図説 世界シンボル辞典 八坂書房 2000年
   ③世界シンボル辞典 三省堂 1992年

もう一つのテーマ

象徴やその意味を調べていて、ある小説との関連に気付きました。と言っても、完全に私の妄想かもしれません。でも物語やセリフから、そんなに外れてもいないような気がしているんです。その小説とは『エデンの東』です。ジェームスディーン主演で映画化されたことでも有名ですが、私が注目したのは、映画ではなく、原作の小説の方です。

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小説の方の『エデンの東』についてあまりご存じ無い方は、以下をお読みになる前に、次記事『エデンの東』について をお読みになる事をおすすめします。
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兄弟間・家族間の確執(Kim、Way、ある意味Panも)、ジェームスディーン、加えて、Kimが土星のトレーナーを着ていたことが、『エデンの東』を連想させる決定打になりました。土星とはサトゥルヌスを意味すると解釈すると、つながるんです。サトゥルヌスは息子であるゼウスにその地位をうばわれた後、農耕の神となります。【土星=サトゥルヌス=農耕=カイン】の図式です。まぁ、ただ、兄弟間や親子間の確執なんてものは、『エデンの東』で言われているように、どこにでもある話なのでしょうから、この部分を取り上げて、「だから『The Shipper』と『エデンの東』は関連してるんだ!」とも言い切れないものも感じますが、関連している!と断定して話を進めることにします。

EP12にKimの身体にKimの魂が戻ってきた様なシーンがありますが、私はあれは本当にKimが戻ってきてWayと会話したと解釈しています。そこでKimは、自分の人生を選択するように、またPanに自分の人生を選択させるようにWayを諭します。そもそもPanがKimの身体に残ったままその後の人生を送ったとしても、それはKimでは無い訳ですから、Wayにとって正しい選択とは言えないでしょう。もしKimがPanと一緒にバイク事故に合っていなければ、WayとKimは一緒に高校を卒業できて、そのときにKimはあの航空券をWayに見せた上でWayを諭したでしょう。「人間は本当に自分のやりたいことを選択するべきだ」と。

『エデンの東』では、「選択の自由があること、そしてその選択に責任を持つことこそ人間を人間足らしめているのだ」と言っていましたが、『The Shipper』では、選択の自由を勝ち取ることにも焦点が当てられているのではないかと思います。生まれた場所の社会的状況や自分の人種等で、生まれながらにして「選択の自由」を持てない状況の人々はたくさんいます。Wayがまさに選択の自由が無い人の一人だった訳で、Kimは罪を犯してまで、Wayの選択の自由を勝ち取ったのですね。そこまでして勝ち取った選択の自由だからこそ本当に自分の望む道に進むことを強く後押ししたのでしょう。選択の自由を持つ事は、その選択に責任を持つ事とセットです。選択を他人に委ねると、責任を持つ必要も無くなるのですから、楽かもしれませんが、本来の人間のあり方ではないと『エデンの東』は言っています。どんなに弱く、罪を犯したとしても、選択の自由を持ち、その選択の責任を持つ事こそが、人間の本来あるべき姿なのでしょう。2020年の現代においても、いまだに選択の自由を持ち得ない人はたくさんいます。『The Shipper』のドラマは今世界中で選択の自由を勝ち取るために戦っている全ての人に対して、エールを送る意図もあったのではないかと思いました。

あとがき

後半の私の推察は穿ち過ぎかも知れない、と自分でも思いつつ、書いてみました。ドラマとしては、あまり深く考えず、物語と俳優の演技を楽しむのが良いと思います。とにかく出演している俳優さんが皆さん本当に演技が素晴らしく上手いです。ストーリーもすごく良い。観て本当に良かったと感じるドラマです。

*タイトル画像cr:GMMTV


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