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アストロイドえそそ(ソフビ)

皆様は「アストロイドESOSO(アストロイドえそそ)」という作品はご存じでしょうか?

幻聴社「ぼくらの太陽」昭和99年8月号 見開き型ポスターより引用

昭和99年の7月27日~9月30日まで我が国NIPPONでは世界的に非認可とされる万国博覧会「TOKIO万博 Expo'99 ~人民の幸福と統制~」を開催しました。
TOKIO万博は当時の子供達が憧れる夢のような祭典だったようで、NIPPONの技術の粋を集めた数々の魅力的なパビリオンがあったそうです。
(NIPPON政府としては諸外国にNIPPONの技術力の高さを見せつける意図があったようですが・・・)
中でも国際宇宙船「ビーナス」が冥王星に行った際に持ち帰ったと言われている目玉の展示品「冥王星の石」を一目見ようと12時間もの行列が出来ていたそうです。
※ビーナスは実際に冥王星に行っていないというのが現在の通説になっておりますが今回の記事には関係ない為、割愛させていただきます。

TOKIO万博「帝國ビーナス館」の当時の様子

しかし子供が12時間もの行列に並び続けるのは厳しいと判断したNIPPON政府は 子供が行列に飽きないようにする対策を設けていました。
それが今回紹介する「アストロイドえそそ」(作品名はアストロイドESOSOですが当記事では主人公の名前であるひらがな表記で記載させていただきます)というアニメーション作品です。
待機列には一定間隔でモニターが置かれており、そこで絶えず「アストロイドえそそ」のアニメが流れていました。

会場内で流れていたアニメーション作品の一コマ

当時はスマホなんて物も存在しませんから暇つぶし程度に映像を見ていた子供達でしたが、30分もすればすっかり「アストロイドえそそ」の虜になっていました。
行列の対策として制作されただけのアニメヒーローが国民的ヒーローになった瞬間でした。
それから「アストロイドえそそ」は様々なメディアミックスを行い、アニメだけに留まらず漫画やゲームや玩具にまで進出する事となる

予定でした。


いや、実際に漫画化まではされたもののTOKIO万博が終了すると同時に「アストロイドえそそ」の人気はまるで砂上の楼閣のように儚く崩れ去ってしまったのです。

漫画版は2種類存在し、こちらは「少年ゲララ」の「天晴!えそそちゃん」のサイン色紙

様々な理由は存在するとは思うのですが、一番はNIPPON政府が「アストロイドえそそ」の社会現象化を快く思っていなかったというのがあるでしょう。
事実、NIPPON政府が国民に見せつけたかったのは“冥王星まで行ける宇宙船ビーナスを開発した国としての技術力の高さ”であり 子供達のストレス緩和の為に作られた子供向けアニメーション作品では無かったのですから。
更に言えば、アストロイドえそそは男女どちらにも刺さるように少女ヒーローとして作られましたが 昭和90年代はまだまだ男性優位の差別的思想が改善されていない時代だったので そういった時代背景も拍車を掛けていたと思います。

当時の児童向け雑誌「ぼくらの太陽」昭和99年11月号付録のL版プリント風ブロマイド

そんな中、老舗トイメーカーであるコアランドも「アストロイドえそそ」のソフトビニール製フィギュアを制作・販売する事となったのです。
これは「アストロイドえそそ」玩具化計画の第一弾として企画されたものであり、正確にはNIPPON政府からの依頼によって制作開始した企画となります。
ただこの「アストロイドえそそ」のソフビがその後のコアランドの命運を分ける事になるとは誰も知る由がない事でした。

まずは当時発売された「アストロイドえそそ」のソフビのパッケージに使用されたイメージイラストをご覧いただきましょう。

商品パッケージから切り抜いたアストロイドえそそのイラスト

非常に可愛らしいキャラクターとなっていますね。

では、箱から取り出したソフビをご覧ください。

アストロイドESOSOシリーズ「アストロイドえそそ」ソフビフィギュア第一期 オリジナルカラー

これは同じキャラクターでしょうか???


子供向けに作られたであろうソフビにしては不気味なデザインと言わざるを得ません。
何に困っているのかわからないぐらいに下がった眉、おたふく風邪に罹ったかのような下膨れた頬、腕もガソリンスタンドの給油機のホースみたいです。

何故このようなデザインになってしまったのかは諸説ありますが、政府からの無茶な納期に加えて 当時コアランドを担っていた原型師の持病の悪化が不運にも重なってしまい、造形経験のない新人社員が一から制作を担当したとの事でした。

当時、政府担当者からコアランドに渡されたと思われる作業指示書。

元々は原作のデザインを無視したリカちゃん人形のような少女向けフィギュアを依頼されていたようですが この作業指示書の存在が新人社員に伝わっていなかった為に変に原作を再現しようとしたチープなソフビが完成してしまったものだと思われます。

しかしながら作ってしまった手前、販売を止める事は出来ないコアランドはアストロイドえそそシリーズと銘打ってこのソフビを売り出す事にしたのでした。
当然ながら、NIPPON政府から支払われる予定だった依頼料は依頼通りにこなせていない訳ですから支払われる事はありませんでした。
コアランドは半ば自転車操業になりつつも ソフビが売れるのを願って様々なカラー展開や新キャラの販売を継続せざるを得ない結果となったのです。

パッケージデザインに関しては当時としてはクオリティも高く、評価する声が多い

結局、ほとんど売れなかった「アストロイドえそそ」のソフビは大半がコアランドへ返品され 返品された全てのソフビが焼却処分されたそうです。
かつては老舗と呼ばれたコアランドのトドメを刺したのはヒーローである「アストロイドえそそ」だったというのは何とも皮肉な話です。
コアランドにとって「アストロイドえそそ」は悪の秘密結社より質の悪い存在だったのですから。

当時の玩具広告のスキャン画像。コアランドの丸型ロゴが興味深い。

しかしながら これは50年も前の話であり、当時の玩具にはほとんど見られなかった一つの文化が誕生しました。

そう、コレクターの登場です。

我が国の一大イベントであったTOKIO万博で人気を博したヒーローは当時の子供達の心に深く刻み込まれていたのです。
当時は不気味に思えた「アストロイドえそそ」のソフビ人形は50年後、大人になった少年少女にとっては愛嬌のある物だと認識されるようになりました。
ただ「アストロイドえそそ」のソフビは前述した通り、大半の物が焼却処分されてしまったので現存する数が極めて低い事が判明しました。

記事引用:限界ソフビ情報局

こちらの記事を見ていただければ分かる通り、現在では国内外のマニア達の垂涎の的となっており 箱付き完品の市場価格は数十万円にも上るとの事です。
しかし、そんなアストロイドえそそのソフビに実は様々なカラーバリエーションが用意されていた事は知らない方も多いのではないでしょうか?
雑誌懸賞品・タイアップ商品などあの手この手でコアランドが奮闘した経緯が見られるバージョン違いが存在するのです。
それに関してはまた別の記事にて紹介させていただきます。

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終わり。


「アストロイドえそそ」とは?

宇宙科学(アストロサイエンス)によってアストロイドに生まれ変わった地球生まれの少女。
悪の秘密結社ザイニン帝國と戦う理由は「むしゃくしゃしたから」
得意技は平和の象徴ピースと見せかけて敵をだまし討ちする目つぶし殺法と純粋な拳。
彼女が戦った後には地獄絵図が残ると言われている。

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