「答えはクライアントの中にある」って本当?

コーチ養成機関として知られているCTIにおいては「答えはクライアントの中にある」という哲学が浸透していると認識しています。この言葉を信頼してコーチングに臨んでいるコーチも多いと聞きます。

一方、グローバル企業で長年の人材育成とコーチングに携わっている実践者「答えはクライアントの中にある」という前提は単純に間違っており、何ら科学的根拠のない幻想だから、そこから醒めた方がよいと説きます。

米国に本拠を置く成長に関する研究機関(Lectica)においては、コーチがクライアントの成長を促進するために真に信頼に足る情報や知見を備え、クライアントに惜しみなく提供することが支援プロセスに明確に盛り込まれています。

私も、「答えはクライアントの中にある」という哲学は、ある一定のレベルに至るまでには役に立つ哲学だが、上記実践者が述べるように、何ら根拠のない幻想だと考えています。皆さんも、素朴に考えて幻想だと思いませんか?クライアントが直面する現実の課題に対し、クライアントの内面に真に効果的な打開策が眠っていて、それを引き出す支援すればよいというのは、何か魔術的なものを信仰するのに近い危うさを私は感じます。

もちろん、にもかかわらず「答えはクライアントの中にある」という哲学は有用ではあります。だから、コーチングスクールで喧伝されたり、強調されたりしている部分はあるのだと思います。

思うに、「答えはクライアントの中にある」可能性をコーチ側が十分認識することで、より傾聴の態度が強化され、コーチ側の準拠枠(バイアス)を取り払うことに価値があるのではないでしょうか。しかし、この言葉を妄信することはクライアントに新たな洞察を提供する上であまり役には立たないと思います。

傾聴の態度を十分身につけた上で、「答えはクライアントの中にある」というバイアスを手放して、クライアントの中にはまだない、知見・経験・枠組みがクライアントを気づきに誘うべく積極的に関わっていくフェーズがコーチには必要なのではないかと思います。

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