ゆめ

夢を見た

気がつくと部屋の中。

母と妹と少女と私。

少女も部屋も知らない。

机の上には綺麗な人形2つ。

壁には絵が立てかけてある。

外を見たくて窓に向かうと、

どこからともなく曲が流れてきた。

その曲に合わせて人形2つが綺麗に踊り出す。

人間みたいに滑らかに。

曲が終わると糸が切れたように動かない。

妹が欲しがって、値段をみると一億円。

少女が父に買ってもらうと言って走り出す。

母は一億円なんて馬鹿みたいだと言っている。

私はそれら全てに興味がなく窓の外を見ていた。

窓の外は灰色の街。

その色を重ねていくように落ちる灰色の雨。

街に人はいない。当たり前だ。

なぜならここは閉鎖された夢の国。

電飾もキャラクターも人も色もない。

夢と言うメッキが剥がれて露呈したただの現実。

窓から目を離すと、部屋には誰もいなかった。

私はおもむろに外に出る。

外に出ても窓から見たのと変わらぬ風景。

灰色の水たまりが所々にできている。

辺りを見ると1人の影。

黒髪の女の人がこっちを見ている。

どうやらこの夢での私のお友達らしい。

その人の肌も灰色、差し出した私の手も灰色だ。

景色に溶けながら2人で歩いていく。

通りを進むと昔通っていた小学校が見えてきた。

昔はあんなに輝いていたのに、霞んだ灰色だ。

2人、校舎の中に入っていく。

さも当然のように。

慣れた手つきで下駄箱に靴をしまおうとする。

視線を感じた。先客がいたようだ。

一目見て脳の奥が開くのを感じた。

金髪の綺麗な人だった。

色を見たのは初めてだ。

隣の友人も知らないと言う。

私も知らない。

でも金髪の人は私を見て驚き。

笑顔になった。

私は逃げるように螺旋階段を上った。

靴の音は3人分。どうやら付いてきているようだ。

友人が知り合いと聞いてくる。

知らない。

一番上の教室に着いた。

教室も灰色。灯りはない。

逃げ場もない。

金髪の人が入ってくる。

教室が色めいた。

友人が金髪の人との関係を聞いてくる。

金髪の人は嬉しそうに私の事を話し出す。

なんで知ってるの?

私はあなたのことを知らないのに。

ふと、金髪の人の指に糸が巻いてあることに気づいた。

指輪みたいに。

その場から逃げるように駆け出す。

嫌な予感がした。

私の服には多数のポケットがある。

その何処かに

指輪がある。そんな気がした。

気付いたらコンビニにいた。

多分、知人が2人テレビゲームをしていた。

曖昧なのは私がその部分を見ずに一目散に本棚に向かったからだ。

2人がしてるゲームは知っていた。

だから、2人が辿る道筋も知っていた。

本を読んでいると知人の声が背後から聞こえる。

「初見殺しで仲間を助けられなかった!」

知っていた。

「リセットしてやり直しだ!」

知っていた。

私の読んでいるページには

海辺に打ち上げられた死んだ人魚と

悲しんでいる王子様が書いてあった。

背後ではボタンを押している音が聞こえる。

ゲームをリセットしたのかな?

もう1人の知人が声を上げた。

「セーブしたところからやり直せばいいじゃん」

知らなかった。

振り返ると、セーブをしたところから再開し

選択を変えて仲間を救っていた。

あー

そうか

金髪の人が知っていた私は

過去に違う選択をした私なんだ

ごめんね金髪の人。

人違いだったよ。

私はポケットを隅々まで調べた。

指輪なんて出てこなかった。

目がさめる。

押し潰すほどの虚無感に抗いながら

体を起こし、窓の外を見る。

そこには何の変哲もない

灰色の街に灰色の雨が降る現実だった。

虚無感に従うように横になり。

次の夢を見るために、

目を閉じることにした。











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