大切な人に捧げるレクイエム

僕の母はもう帰ってきません。

言葉を交わすことも、一緒に笑い合うこともできません。

いくら後悔しても、時間は巻き戻せません。

「大切な人が突然いなくなった時に後悔してほしくない」という想いを込めて、この物語を書きました。

生半可な気持ちで書いていないので、心してお読みください。

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【本当に悲しい時は涙が出ないものなんだ】

夏が近くなると思い出すことがある。

季節は巡り、留まることなく時間は流れ続ける。

じりじりと暑い日差し。季節は7月。

外を歩くと蝉が鳴き、暑さで汗が流れてくる。

暑さでうなだれて、家の中でアイスをほお張り、外出するのも億劫になる。

でも夏はどこか空が高くて、遠くに行けるような気持ちになるんだ。

結局どこかに出かけたくなってしまう。

そんな夏がキライではなかった。

でも、今は少し違うかもしれない。

もうずいぶん昔の話だ。

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