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判例セレクション~著作物~

”額に汗”の法理

▶平成26年12月24日 東京地方裁判所[平成26(ワ)4088]
思想又は感情の創作的な表現というためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表現されたもので足りると解すべきであるが,事実若しくは事件それ自体など思想又は感情でない部分,思想,感情若しくはアイデアなど表現でない部分又は表現であっても他の表現をする余地が小さく若しくは表現がありふれたものであるなど表現上の創作性がない部分は,いかに思想への想到若しくは事実の発見などに多大な労力を要し,又は思想として独創的なものであろうと,思想又は感情の創作的な表現たり得るものではない。
この点,原告は,本件三文献の解読及び分析に20年の歳月を費やして本件問答集を完成させたこと,従前は類書が存在せず,本件解題に記載された分析も原告が初めてなしたものであること等を,創作的表現の根拠として主張するが,上記のとおり,著作権法は,学術的な思想や発見それ自体を保護するものではないから,本件三文献の解読及び分析に多大な労力を費やしたこと及びそれが原告によって初めてなされたことそれ自体が,著作権法によって保護される創作的表現となるものではない。むしろ,本件解題のように,史料を分析して歴史的な事実を明らかにしようとする場合,個々の分析結果は,他の方法により表現する余地が小さく,学術的な思想ないし発見された事実それ自体であって,創作的表現とならないことが多いというべきである。

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