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条文解説【著作権法第11条(二次的著作物)】

著作権法第11条(二次的著作物):
 
「二次的著作物に対するこの法律による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。」
 
二次的著作物(2条1項11号)も、原著作物(原作)との関係を除けば、著作権法によって保護される「著作物」(2条1項1号)の1つですから、二次的著作物の著作者は、自己の二次的著作物に関して、独自に著作権を有することになります。具体的には、その二次的著作物の利用に関して、当該二次的著作物の種類に応じて、以下の著作権法21条から28条までの権利を専有することになります:
〇 自己の二次的著作物に関する複製権(21条)
〇 自己の二次的著作物に関する上演権・演奏権(22条)
〇 自己の二次的著作物に関する上映権(22条の2)
〇 自己の二次的著作物に関する公衆送信権・公の伝達権(23条)
〇 自己の二次的著作物に関する口述権(24条)
〇 自己の二次的著作物に関する展示権(25条)
〇 自己の二次的著作物に関する頒布権(26条)
〇 自己の二次的著作物に関する譲渡権(26条の2)
〇 自己の二次的著作物に関する貸与権(26条の3)
〇 自己の二次的著作物を“原著作物”としてそこからさらに“二次的著作物”(もともとの原著作物からみると”三次的著作物”と呼べるもの)を創作する権利(27条)
〇 自己の二次的著作物の二次的著作物(”三次的著作物”)の利用に関する原著作者(二次的著作物の著作者)の利用権(28条)
 
著作権法第11条は、上述したように、二次的著作物に対する保護は、原著作物に対する保護とは独立したものであることを前提として、二次的著作物に対する保護とその原著作物に対する保護とはそれぞれ別個のものであることを注意的に規定したものです。二次的著作物は、原著作物に依拠しているとはいえ、そこに新たな創作性が付加されて作成されるもので、原著作物とは別個の著作物ですから、原著作物とは区別して独立して保護されることになります。例えば、二次的著作物と原著作物の保護期間は、それぞれ別個に計算され、二次的著作物の保護期間が原著作物の存続期間(の残存期間)に従属することはありません**。
**(注) もっとも、次の最高裁判例<平成9年7月17日 最高裁判所第一小法廷[平成4(オ)1443]>を参照:『二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である。けだし、二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法上の保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付与されているためであって(同法2条1項11号参照)、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、別個の著作物として保護すべき理由がないからである。』
 
二次的著作物の著作権者であっても、原著作物の著作権者の許諾なく当該二次的著作物を利用することは許されないと解されます。原著作物の著作権者は、二次的著作物の利用に関して、当該二次的著作物の著作者と同じ内容の権利を有することになるためです(28条参照)。そのため、また、二次的著作物の利用を欲する者は、当該二次的著作物の著作権者のみならず、その原著作物の著作権者の許諾をも得ておく必要があります。なお、原著作物の著作権者は、二次的著作物の著作権者の許諾なく当該原著作物を利用することができますが、原著作物の著作権者が、二次的著作物の著作権者の許諾なく「当該二次的著作物」を利用することができるかについては、否定的に(原著作物の著作権者であっても、当然には当該二次的著作物を自由に利用することはできないと)解されます。
 
二次的著作物を巡る権利関係及び利用関係は、時として、非常に複雑になります。そのため、他人の原著作物を利用して二次的著作物を創作し、さらにそれを利用しようとする場合には、当事者間で事前にしっかりとした話し合いをして、約束事項を書面にしておくことが賢明であると言えます。

【より詳しい情報→】【著作権に関する相談→】http://www.kls-law.org/

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