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私の昭和歌謡62 君をのせて 1971

夜の海渡る舟人君をのせ夢もむなしいこの世界


ジュリーーーーー!!と叫んだ樹木希林さんも亡くなった。
ああ、昭和は本当に遠くなってしまった。

タイガース時代はアイドルだったから、ジュリーが結婚なんてことになったら大騒ぎだったろう。でも、ソロになってから、ピーナッツの伊藤エミさんと結婚して、だいぶ経って、女優の田中裕子さんと再婚した。

もうその頃は、憧れのジュリーではなく、十分な歌唱力と演技力のある個性派タレントとしての沢田研二を認めていた。

ソロとしてのシングル1曲目が「君をのせて」
そんなにはヒットしなかった。でも忘れられない曲だ。

それはこの歌の音域の広さとメロディーの流れが、たぶんジュリーじゃないと歌いこなせないってわかるから。

歌詞は岩谷時子さんですから、普通にわかりやすい愛の歌だった。でも、なんか聞けば聞くほど、私は、天涯孤独な兄と弟の物語を思い描いていた。

🎵風に向かいながら 革の靴をはいて
肩と肩をぶつけながら 遠い道を歩く🎵

ね、目に浮かんでこないかな?
面接か何かでスーツ着て革靴履いた兄と、普段着の弟。歩きながら

どうだった?
ん、まあな。次があるさ。

っていう風景。

🎵僕の地図はやぶれ くれる人もいない
だから僕ら 肩を抱いて 二人だけで歩く🎵

この兄はあくまで弟を守って二人で生きようとしている。

🎵人の言葉 夢の空しさ どうせどうせ 知った時には
ああ 君をのせて 夜の海を 渡る舟になろう🎵

ここで「君」という呼びかけが出てきても相手が女とは感じなかった。
なんか、ね。

さて、はじまりがすごい。
ハ長調にすると・・・

ミソラ ソミド レミレ これ中音
ミシラ ソミド レミレ 次のフレーズでオクターブ上がってしまう。

ミレド ドシラ ラソ ミレド
ドレミ レド ドレレ  そして低いラにまで下がる

サビがまたすごい。すごいっていうのはこの音域を楽々歌っているジュリーがすごいということだ。

ドドドー ドドシー ミソラー ラララソー  急にオクターブ!
ラララ ラララ ラララ ミレドレーーー   急に高音へ!
ミソミレ ミレドー ド
シラー        ”ああ”はオンリーユーだ!
ラソー ミレドー        そして何気なく下降してしまうんだ。 
ドレミー レドラー ドレドー   しかもまで!

結局こんな穏やかに聞こえる曲なのに
ラシ ドレミファソラシ ドレミファソ の音域の歌声が出せないとダメな曲というわけだ。もう!宮川泰さんったらww

これからジュリーのソロの活動は、名実ともにブレイクする。すごく売れた曲の影に隠れて、この歌が忘れられてしまうことはない。

だって、誰にでも歌える曲じゃないからだ。

たぶん、最初の頃、「こんな曲」とジュリーは思ったかもしれない。でも、これだけの難しい要素を持った曲を歌ったことを誇りに思ってほしい。

私が好きなのは、犬を抱いた田中裕子さんをのせた舟の上で歌っている動画だ。やっと人生の相手を見つけてよかったね、と思った。

 

【参考資料】





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