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雇われ駅前喫茶店
珈琲の焙煎はゆっくりゆっくり豆を膨らましてゆく。
あわてては駄目。
「膨らんだらそこからイッキに焦がしてください」
と、十は若い彼女いない歴10年の「師匠」から教わる。。。
奥が深過ぎて「ハマる」のを敬遠している。
焙煎して1日経ってから挽く豆の香りは
確かに恋に落ちるビターな物語り。
訳あって、山あいの駅前喫茶店にいる。
雇われ店長を仰せつかった。
自家焙煎珈琲には
付き合いたてのカップルのように
まだぎこちなさがある。
酸いも甘いも苦いもある。
代わりと言ってはなんだけど
朝には朝の歌をかけ、
冬には冬の音楽を店中に流そうか。
当たり前のことを普通に誠実にやろうと
この歳になって強く思うようになった。
山あいの喫茶店は愛と勇気でドリップを
膨らます。
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