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gramとは何か? 誰かに言いたくなる話 2

“このビデオグラムは、一般家庭における私的視聴に用途を限って〜”
こんな風に始まる文章を、誰しも目にしたことがあるだろう。DVDなどで映画を見るときに、決まって表示される注意書きである。いや、もうわかってるって。勝手に放送や上映したら法に触れますよという、例の著作権のナニだということは、さすがに承知している。ただ、私は、もうそんなこと知らない奴は、ほとんどいないんだから、いちいちこの文言をいれるのは面倒臭いだろうし、止めたらどうだ、などと言いたいわけではない。制作側にもいろいろ事情があるだろうし、いちいちこれを入れとかないとまずいのであろうことは想像に難くない。そんなことではなく、私が言いたいのは、この文言の中の、ある言葉についてなのである。


“ビデオグラム”ってなんだ?
いや、ビデオならわかる。映像でしょ。だったら、ビデオでよくない?もちろんビデオテープではないよね。DVDだから。もしくはブルーレイだから。今は、ディスクになってるから。ビデオという言葉だけで、単に映像という意味になるから、わかるけどなあ。まあ、テープと混同する可能性があるということか。それと、映像という曖昧な言葉では、具体的な物を指してはいないか。ブツをさ。抽象的なことになってるか。

だけど“グラム”って何なんだ?グラムは重さの単位だろ。水1ℓは1000gとかいうときの“g“。それをビデオに付けちゃった。”映像の重さ”的な?なんだそれ。

そういや、何とかグラムって、他にもいろいろある。プログラム、テレグラム、ダイヤグラムにエピグラム、今をときめくインスタグラムとかね。こういう時、逆引き広辞苑は便利だよね。語尾から引ける国語辞典。わが愛用のカシオの電子辞書におまけみたいに付いてたけど、今“グラム”って打ち込んだらもっとたくさん出てきた。アナグラム、ソシオグラム、ヒストグラム、ボナンザグラム、モノグラム。いや、聞いたことないのもあるけどさ。しかしいつも思うけど、ラッパーの皆さんは、結構、この逆引き広辞苑、愛用してるんだろうな。ライムが簡単に見つかるわけだから。「いや、愛用させてもらってます、岩波、最高、杉並、西高」とか言ってるの、聞いたことはないですけどね。


さあ、そろそろ行きましょうか。”グラム”とは何ぞや。ここは大修館書店発行のジーニアス英和辞典でいこうと思う。(カシオにこれも入ってるので)
〜gram 接尾語  1.「書いた〔描いた〕もの」の意の名詞を作る。2.「グラム」の意の単位名を作る。
となってました。2はキログラムとかのことだろうから、ここは1の意味でしょうね。ということは、ビデオグラムを無理に訳すなら“電気式録画録音物”くらいの感じでしょうか。つまり、グラムをつけることにより、具体的な物を表す、ということになるわけですか。だからビデオではダメでビデオグラムにする必要があったわけか。なるほどね。


そしたらプログラムはどうなんだろう。意味は予定とか、番組表とか、コンピューターをこのように動かしたい、というのを予め記述したものとか、そんな風なことだろうから、“プロ“という言葉は、前もってとか予めとかそういう意味かと思われる。で、ジーニアスで確認すると、接頭語のpro〜には前のとか、先のとか、前へとかの意味があると書いてある。プログラムというのは、前もって書いたもの、という感じでいいんじゃないだろうか。


テレグラムは簡単ですよね。テレフォンで書いたもの、つまり電報だろと勝手に思ってジーニアスを見ると、tele〜は連結語で遠いとか遠距離の意味だそうだ。つまり、遠距離に送る書いたものということか。テレビジョンはビジョンを遠くに送ってたわけね。
ところで、テレグラムといえばT.Rexの”Telegram Sam”だろう。電報サムというあだ名を持つ親友のことを歌っているんですが、この歌には他にも奇妙なニックネームをもった人たちが登場するのをご存じでしょうか。金鼻スリム、紅いもパイピート、ジャングル顔ジェイクなど、いったいどんな奴らなのか、マーク・ボランに聞いてみたいところですが、彼は1977年9月16日に黒人女性歌手グロリア・ジョーンズの運転するパープルのミニ1275GTに同乗して帰宅途中に、街路樹に衝突して、29歳という若さで、命を落としていているので、もう聞くことはかないません。合掌。


さて、最後にインスタグラムの話をして終わりにしたいと思う。インスタはもちろんインスタントの略で、即時とか、瞬間にとか、の意味でしょう。つまりインスタグラムとは即時に描いたもの、イコール写真とかのことですが、それのみならず、ストーリーと呼ばれる動画やさらには動画配信までできちゃうというもので、ただ今大人気。有名人のみならず、それ未満の皆さんたちも手間暇かけた一枚を日夜アップし続けるという、見ようによっては、自己承認欲求の披歴ステージと化してしまっている、SNSでしょう。いや、それに関してどうこう言いたいわけじゃない。やりたい人はやればいい。人様に迷惑さえかけなければ、何やったって、別にいいことになってるから。

私が言いたいのは、インスタントリプレイの話なんですよ。もうグラムは関係なくなってるが、気にせず進めます。スポーツ中継に必ずでてくる”ビデオテープでもう一度“というやつ。さらには、それを利用したビデオ判定システムというやつ。これの話がしたかった。
サッカーワールドカップでは、前回2018年のロシアで初めて採用になり、例のレフェリーが試合を止めて、手で長方形を描き、モニターのある所へ走っていくやつですが、当然、見過ごされていたファウルが罰せられたり、手荒いファウルの抑止力になったりという、いい点もあったのですが、これを恣意的に使うレフェリーもあり、物事には必ず善悪両面があるという、見本のような運用となりました。
また、この大会ではリプレイというものの存在を知らないとしか思えない、ネイマールという男にも注目が集まりました。大衆演劇の役者もはだしで逃げ出す、過剰演技。少しでも触られようものなら、すぐに吹っ飛んじゃう。倒れてからは、回転しながらいつまでも寝転ぶ。レフェリーがそばに来ると、突如立ち上がり泣き顔で訴える。まあ、見てられなかったですね。リプレイがあるんだから、本当に当たったかどうかは、ばれてることが、わかってない、としか思えない。レフェリーさえ騙せればそれでいい、という考え。もうメンタリティーの違いとしか言いようがない。YouTubeで見た、大勢の子供が、一斉にひっくり返り、芝生の上をゴロゴロ転げまわる動画、笑わせてもらいました。
さて、このビデオ判定というシステムはいつ始まったでしょうか。アメリカンフットボールのプロリーグ、NFLの世界には1986年から(一時中断期間はあるものの)“チャレンジ”という制度があり、判定がおかしいと思ったら、ヘッドコーチはレフェリーに、ビデオによる確認を請求できるというシステムになっている。そして、これがこの手のものの最初ということになっていて、今ではそれがバスケットボール、野球、バレーボールなど様々なスポーツに広がった。
これはあくまでも、チーム側、選手側から要求されて行うという性格のものだが、サッカーと同じく、レフェリーがビデオ判定の実行を決めるというやり方なら、1969年から始まっているものがある。それは我が邦の国技、大相撲である。連勝記録を更新中の大鵬が、戸田に行司差し違えで敗れた一番を契機に、翌場所から実施された。相撲はルールが明確な上に、ゲームスペースも狭く、やり易かったと思われる。ま、お茶の間はみんな、NHKのおかげで、答えを知ってたわけだから、それに合わせただけだけどね。大鵬贔屓のうちのばあちゃんが、晩御飯の時も珍しく怒ってたのを、今も覚えている。


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