その黒の透明度は

不安から目を背けるために、ずっと塗りつぶさずに置いておいた余白。

そこに余白があるというだけで、誰かに何かを許してもらえる。そんな気にさせてくれる色。

中途半端な安心感に浸って、同じ場所にこれ以上漂い続けるのなら、いっそのことその白を全部黒く塗りつぶしてしまおうか。

そうしたら、中心に何か浮かび上がってくるものがあるかもしれない。
目が慣れるまでは輪郭もぼんやりしているだろう。
ようやく見えてきたそれが望み通りのものとも限らない。

でも、目線の先の黒に向かって手を伸そうとして、足が一歩前に出ることに意味があるのなら、そう信じるなら。

捉え方次第で、たとえその一歩が踏み外しだとしても。


案外悪くないかもしれない。
溺れるより転ぶ方がマシだ。


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