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【コーミンで働くひとインタビュー⑥】地域包括支援センターのセラピスト(理学療法士)

―――TOMOさんは、地域包括支援センターで理学療法士として「介護予防」をミッションに働かれています。昨今、さまざまな自治体が介護予防を推進されていますが、その進みには差がありますね。

国が推進する「地域包括ケアシステム構築」の目標が2025年で、あと4年しかありません。それに対して各自治体が「どんな計画を描いているか」ということはもちろん大切ですが、一方で、そこに「どれだけ予算や人員を割けるか」もポイントだと思います。実効性がなければ、まさに、絵に描いた餅ですので。

―――まさに日々、現場で実践されてる方の「生の声」ですね。

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例えば、私が知ってるある自治体さんは、高齢者の“通いの場”をつくる事業に40万円しか予算がつかない、と。そうなってくると現実的にできることが、どうしても小さくなってしまいますよね。そういう実情もあって、なかなか進まない自治体さんも多いのではないでしょうか。また、ノウハウが有るかどうかも重要です。

―――大東市さんについては、長年のノウハウの蓄積があるように思えますが、TOMOさんから見て大東市の地域包括支援センターの特長とは?

そもそも地域包括支援センターというのは、いわゆる包括3職種、主任ケアマネジャー・保健師・社会福祉士が中心なんですが、それに加えて大東市はセラピストを多く配置しているのが、他市とは一線を画しているのではないでしょうか。

―――セラピストとは?

私のような理学療法士と、作業療法士、言語聴覚療法士。いわゆるリハビリ専門職ですね。通常、専門職の配置はされておらず、されていても1人なんですが、大東市は4人配置しています。他市でも最近は増えてるようですが、4人も、というのは珍しいと思います。それだけ、「介護予防」というミッションに対して実効性を持たせたい、という市の意志のあらわれだと思います。

安田@写真1

―――あと、ノウハウの部分で言いますと、大東市さんは「地域健康プロフェッショナルスクール」で、ノウハウを他の自治体に提供しようとされてますね。

コーミンではこれも、公民連携のビジネスとして、市が培ってきた介護予防のノウハウをソフトとして販売しています。コーミンが立ち上がった当初からの事業で、ビジネスにすることで持続性が生まれ、また大東市の「特色」のひとつとして、市のブランドイメージの向上にもつながっているのではないかと思います。

―――大東市の介護予防の原動力は何だと思われますか?

やはり、“大いなる危機感”ではないでしょうか?いわゆる「2025年問題」というのがありまして、もっとも世代別人口が多い団塊世代のみなさんが75歳以上の後期高齢者になられるのが、あとたった4年後、2025年です。

―――介護需要が爆発する年なんですね。

高齢者という括りでいうと65歳からなんですが、じつは65歳~70歳で介護保険認定を受けてる人って、2ないし3%ぐらいで、みなさんまだまだお元気なんです。これが、70歳~75歳になると5%ぐらいになって、そこから倍々ゲームで増えていきます。

―――75歳を超えると100人中10人ぐらいが要介護になる。

はい。で、要介護人口が増えると必然的に、社会保障費(お金)と介護人材(人)が足りなくなってきます。これは、ただでさえ人口減少でGDPも下がっているこの国においてはかなり辛いことで、とりわけ地方都市にとっては、大きな負担、危機感となって襲ってくるわけです。大東市はそこに早い時期から危機意識を持って、“介護予防”というコンセプトを推進されてきたんだと思いますね。お金でいえば、4年で12億の介護費用を削減できたわけですが、これも決して“12億が浮いた”わけではなくて、ほっといたら足りなくなっていた分も含めて12億ですから、大東市は成功しているとは言われますが予断は許さない状況が今後も続くということです。

―――日本中の課題ですね。一定の成功を納めておられる大東市メソッドが、どんどん広がってほしいです。

note安田

―――安田さんのメインのお仕事としては?

コーミンの介護予防、健康まちづくり事業の大きな柱の一つとして、大東元気でまっせ体操の普及啓発と継続支援をおこなっております。体操をやっていただける会場づくりであったり、積極的に参加していただけるような啓蒙活動であったりを。

―――かなり体操が普及しているイメージありますが。

厚生労働省が定めてる数値基準がありまして。その街の全高齢者の10%がいわゆる介護予防活動に参加してると「その街はうまくいってる」とされるんですが、それに照らし合わせると、大東市の65歳以上人口が約36,000人として、その10%ですと3,600人。現状2,000人くらいの方が体操に継続して参加していただいてるので、あと1,600人。会場数でいうとおよそ80~100ヶ所ぐらい足りてない、という計算になりますね。

―――どんなご苦労がありますか?

会場の発掘、というのが、コロナの影響もあって、今いちばん頭を悩ましているところです。体操の意義の周知という点では、他市にくらべてこれだけ浸透している市はないというぐらい知られてますので、「うちの地域でもやりたい!」って市民の方から手を挙げてくださることも多々あるんですが、やはり、なかなか会場を見つけて、「貸してください」って交渉して成立、というところまで持っていくのが、時節柄もあって苦労しております。地域貢献、ということで会場提供をご協力いただいてる企業もたくさんあるんですが、まだまだ数が足りてないし、「万が一、コロナ感染があっては」ということで休止される会場もありますので。職員一丸となって、街を走り回ってます(笑)

―――ところで、理学療法士になられたきっかけは?

きっかけは、あまり格好いいもんでもないんですが、高1の保健体育の授業でいねむりしてまして。ハッと目覚めた時に、保健の先生がしゃべってたのが“理学療法士”のことで、それが妙に印象に残って、「あ、これになりたい!」と直感的に思った次第です。でも、その後、紆余曲折あって、23歳の時はモスバーガーの店長をやってたんですが、高1の時のことを思い出して、「やっぱやろう!」と決心して、夜間の理学療法士の専門学校に4年間通って、昼間はアルバイトしながら、なんとか資格をとらせてもらったんです。そこから14年間ぐらい、理学療法士として医療法人のリハビリテーションなどで働きました。

―――その後、コーミンに入られたわけですが、きっかけは?

ひとことで言いますと、理学療法士というリハビリ専門職の可能性をもっと追求したかった、というのが動機です。病院でリハビリをした患者さんが歩けるようになって「あー、よかったね」と送り出したのに、何日かたって家で転んでまた病院に戻って来た。みたいなことが現実にあるわけです。つまり、病院のきれいな平らな床では歩けるようになったけれど、いざ、家に帰ったら、敷居はある、絨毯の端はめくれてる、という状況です。そんな時、“歩き方”だけではなく、その先にある“暮らし方”までケアすべきじゃないか、できるんじゃないか、という想いが私の中でふつふつと芽生えまして。そういう仕事をすれば、病院にいたら目の前にいる一人しか救えないけれど、もっと集団であったりコミュニティであったりに広がるようなケアができるんじゃなか、と思いまして、そんなところでコーミンという「介護予防で健康まちづくり」を掲げる会社に関心を持った次第です。

―――体を治すだけじゃなく、暮らし方や人生まで治したい、という感じですね?

そう、その先に“まちが良くなる”というのもあると思うんです。拡大解釈すれば。

自分のなかですごく印象に残ってるエピソードがあって。なかなか電動カートを利用してくれないおじいちゃんがいて。歩くのがしんどいから、あまり家から出れない状況で。2年ぐらい説得して。「スーパーとか、目的地に行くまでは機械に頼りましょう。で、スーパーでは歩きましょう」と。「じゃないとこのまま家で寝たきりになっちゃいますよ」と。まぁ、機械に対する抵抗感もあってなかなか納得してくれなかったんですけど、ある日、電動カートに乗っておでかけしてはる姿をたまたまクルマから目撃して。嬉しかったですね。

―――まさに、そのおじいちゃんの人生がちょっと変わったんですね。

はい。これは一例ですが。まちに出て、人それぞれにフィットした介護予防を実現して、結果的に、まちを元気にしたいですね。

―――特技はマジックだそうですね?

はい。「趣味を超えてる」と人には言われますが(笑)。社会福祉協議会さんから頼まれておじいちゃんおばあちゃんの前でマジックを披露したりしています。あと、もうひとつの趣味はUSJです。じつは専門学校時代にUSJでアルバイトさせてもらってたんで、恩も感じていて、最近は週1で通ってお金をおとしています(笑)。

note安田2

―――いま、コロナで集客が減ってますもんね。

はい。で、どうしたらもっと集客できるかを勝手にシミュレーションしたりもしています。

―――勝手に(笑)。

手品にしろUSJにしろ、人を楽しませるエンタ-テインメントが好きなんでしょうね。

―――なるほど。是非、介護予防やまちづくりも、エンタテインメントで盛り上げてください!

インタビュー⑥おわり/インタビュー⑦につづく

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