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「The black tape project」

みなさんは知っているだろうか「The black tape project」を
  
その夜、私は乾いていた。
  
平日の夜は食事を摂り終えた後に軽く部屋の掃除をするのが私の日課だ。

掃除機を掛ける左肩が鈍く痛む、だが痛みを堪えて急ぐ理由があった。

掃除の後はすぐにシャワーを浴びる、身を清めるのだ。

ゆっくりと老ける夜、まるで私の人生のよう。

ベットルームで横になった私はヘッドレストに置いてある黄色いペーストに手を伸ばす

肩全体に塗り塗りすると部屋全体がミントの香りに包まれる。

ふと実家の両親の寝室を思い出す。

父さんもこんな夜を過ごしていたのか、血は争えないな。

寝室のTVのスイッチをつける。

YOUTUBEを起動したところでハーブティーを用意し忘れたことを思い出す。

やれやれ、まだそんな初歩的なミスを犯すなんて、焦るなよ相棒  

一階に降りるとコップに水を7割程度汲んで、電子レンジにぶち込む、1分

パントリーでカモミールティーを選ぶとアルミパックのチャックを開ける、柔らかな香りが広がる。

キッチンで電子レンジが加熱完了の音を鳴らす「急かすなよ、ハハッ」

寝室のドアを後ろ手で閉める

「夜の始まりだぜ」

カップをヘッドレストに起き、徐にスマートフォンでYOUTUBEを開きテレビに接続する。

「The black tape project」
  
それを口ずさみながら検索する、the black tを打ち終えたところで私は笑った。

予測ワードの欄にそれは浮かび上がる

「まったく毎晩紳士になってしまっているな」

  

暗い部屋でそれは鮮明に浮かび上がる
  
男を惑わすそれは小さめだったり大きめだったり個性的だ。

眩いほどに照らされたランウェイで右へ左へ元気に跳ね回る。

往路を歩き終えたそれはどこか誇らしげに見える。

「ありがとう」私はそう言った。

帰り際に少し微笑んだように見えた横顔を見送ると

それは私の目の前に現れた。

大きな大きな桃

「もぅ、君ってやつは、、、」

復路をいくそれはただ離れていく、楽しそうに揺れながら

そしてステージの端でウィンクしてはけて行った。

私も笑顔で手を振った

「バイバイ」

  


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