見出し画像

【コラム】自然の輝きを形にとどめておく方法

それは子供の頃の九十九里浜海岸

小学生の頃のある夏、九十九里浜海岸を歩きながら、波が押し寄せる度に”置いていく”貝殻をひたすら拾っていた。「海の声(=波)が聞こえる」と言いながら貝殻を耳に当てて、キラキラ光る海を見て、次の波が来るのを待っていた。

そんな輝く思い出をどうにかして形におさめたくて、母親のアドバイスで、拾った貝をネックレスにしたのだった。白い貝殻に絵の具で色を塗り、ビーズを置いて仕上げにニスを塗る。最後に貝殻に穴をあけて(これは父親に開けてもらって)紐を通してできあがり。首に飾ると九十九里浜海岸を歩いた思い出が、幼い私の心によみがえった。これを夏休みの課題として出した記憶がある。

自然の輝きの感動を形にとどめておく方法は、アクセサリー?

そんな思い出を思い出したのは、30代の時。渋谷東急文化村の東急で買い物をしていた時だった。「サマーアクセサリーコレクション」で展示されていたマザー・オブ・パールのネックレスとピアスに一目ぼれ。そのアクセサリーは、海からのキラキラがそのまま形になったように感じで、小さな淡水パールもついている。そのネックレスとピアスを見つけた時、小学生の頃に歩いた九十九里浜、そして夏休みの課題研究で作った貝殻のネックレスを思い出していた。

画像3

「アクセサリーって、自然やその輝きなど、感動したものを形にとどめておく方法かもしれないな」

そんなことを思いながら、私はこのネックレスとピアスを購入した。

その夜skypeで、私はシンガポール人の友人に、購入したネックレスとピアスを見せながら、自然で感動した物を形としてとどめておく方法の1つはアクセサリーかもしれないね、と話した。彼女も深く同意していた。

数か月後、そのシンガポールの友人から郵便が届いた。「あなたの影響受けちゃったわよ~」と、その友人から届いたものは、彼女が遊びに行ったロンボク島からの、小さな貝殻でできたネックレスだった。

画像2

「思わず自分とあなたの分と、2つも購入しちゃった!」と嬉しそうなskype越しの友人。小さな貝殻がぎっしり使われたこのネックレス。見ているだけで波の音が聞こえてきそうである。私は、白いTシャツと、ピンクのレギンスに合わせて着けていた。

媚びていない自然のものは、人間を美しく見せる

東急でネックレスとピアスを購入した当時、渋谷に住んでいた私は、早速購入したアクセサリーをスクエアカットのタンクトップとリネンのパンツに合わせ、時々訪れていた松濤のマンションの一角にあるBarにPastisを飲みに行った。

ドアを開けると、静かに聞こえてくるジャズの音と、目に優しい照明。意外にもラフな格好でお店に入った私に(当時、大抵は会社帰りに寄っていたのでスーツが多かった)驚くBarのマネージャーが、席を用意してくれた。「そのネックレス、海に太陽の光が反射したようなキラキラ感がありますね」とコメントをくれた。やっぱり自分に感度があったお店は、同じような見方をする人がいるものである。

ゆっくりとpastisを味わい、少し遅い時間になると、たまに顔を合わせる方々が入ってくる。このBarに来るお客さんは、皆、大人なので、お互い顔見知りでも会釈をする程度で、特にお互い会話を交わすことはない。

目の前にもう1杯のPastisが出される。Barのマネージャーから「あの方からです」と。あの方とは、銀座でお店を持っている女性だった。隣には少し年配の男性を連れて。私は丁寧にお礼を言ってご馳走になった。

「こんなBarにラフな格好で来れて素敵よ」と声をかけてもらった。ママが迫力がある人だったので、私は緊張し「ありがとうございます」としか言えなかったが、ちょっぴり嬉しかった。

「媚びていない自然のものは、女性をきれいに見せるわね」

と言った後、ママはまた相手との会話に戻ってしまった。媚びていない自然のもの?きっとこのマザーオブパールのことだろうか、それにしても言葉に重みがある、さすが銀座のママらしいお言葉・・と私は感動し、いただいたもう一杯のPastisシャルトルーズ・ヴェール を飲み始めたのだった。

このネックレスとピアスを見ると、これらの小さなストーリーたちを思い出すのだ。

画像1






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?