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「ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男」がアメリカ映画の好きなおっちゃんに刺さりまくる理由

「ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男」を10話一気見。やるね、U-NEXT。

僕のやってる商売目線で言うと、「ゴッドファーザー」公開50周年のアニバーサリー企画の一環だ。生存するスタッフ・キャストが集まってのセレモニーや、4K化で劇場公開やパッケージ発売に加え、4月にパラマウント+でこの製作裏話リミテッドシリーズが配信された。

主役はプロデューサーのアルバート・ラディ。ドラマのクレジットではAlbert S.Ruddy's experience of making The Godfatherと表示される。経験に基づくってw。劇中実名でロバート・エヴァンス、ベティ・マッカート、フランシス・コッポラ、マリオ・プーゾ、フランク・シナトラ、アリ・マッグロー、マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーンなどなど、当然ながら関与した有名人が次々と出てくる。彼らはそっくりさん…という安易なキャスティングではなく、振られた役割をやってるうちに本人に見えてしまう、という凄みがある。

ベストセラーの映画化で話題間違いなしなのに、マフィアを悪意をもって描いているからと、NYのホンモノたちから妨害を受ける一方、パラマウントの親会社ガルフ&ウェスタン社からは「安く作れ。マフィアと組むな。あの役者は使うな」と次々難題をおろされる。現場は現場で「あれがやりたい、これはやりたくない」の言いたい放題で大混乱が続く。

ラディは経験の少ないプロデューサーだったが、度胸と機転であらゆる困難を突破していく。でも、いつも何らかの悩みを抱えてはいるんだよね。この辺は働くおじさんにとっては普遍的なので、泣けるんだ。

「ゴッドファーザー」は大成功する結末がわかっているのに、「本当にできるのか、これ?」な展開が面白く、常にハラハラドキドキ。虚実の虚がけっこう“脚色”が派手なので、まぁ実話ベースのストーリー仕立ては許容しないといかんが。出来がいい悪い、というより全編にわたって「楽しい」と感じさせるドラマは久しぶりだった。

近年だと「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などから連想する“映画愛”の味わいもあった。ミニシリーズ「フュード/確執 ベティ vs ジョーン」も彷彿された。

名場面ばかりなのだが、中でも5話の食事シーンは秀逸。「ゴッドファーザー」を観ている者にとって、こんなによく考えられ、愛情にあふれた場面はないですよ。「あ!」と思った瞬間、よく作ったな、と震えてました。

ラディは売れっ子マイルズ・テラー。真面目なルックが得をしている。アーミー・ハマーでなくてよかった。男性社会(それも1970年だもん)の中で、生き抜く女性アシスタント、ジュノー・テンプルの姿勢も素晴らしい。あと、やっぱりこの時代のプロデューサーといえば、ゲス野郎ロバート・エヴァンスだろう。演じるはマシュー・グード。エヴァンスの俺様ぶりがぶれることなく描かれていた。「くたばれ!ハリウッド」を再読したくなったね。

コッポラ(ダン・フォグラー)とプーゾの太っちょ二人がキャッキャしてるのは笑いどころ。食べてばっかりいるし。

あれだけ撮影現場やラッシュ、試写などを描いておきながら、完成した本編は一切見せない、というポリシーもよかった。シーンを再現するとかくし芸大会になっちゃうからだ。

ラディは「ゴッドファーザー」の後は、「ロンゲスト・ヤード」でも大成功するが、「ゴッドファーザーPARTⅡ」以降は関わらなかった。ドラマではそのあたりの心情も描かれている。以降映画は多数製作しているが、「キャノンボール」や「メガフォース」など、ダメダメなチョイスもあったりする人なので可笑しい。92歳でいまだ現役の彼は、最近ではイーストウッドの「クライ・マッチョ」も作ってたりする。

視聴前は「ゴッドファーザー」の予習は必須。

僕はしっかり復習もしてドラマ二周目に挑む。

※それにしてもU-NEXT…50過ぎの映画好きにはたまらない名画座ですよ、ここは。

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