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英語教育・英語学習に関する独り言15 - 英検の出題形式変更セミナーに寄せて

以下はあくまで独り言。

今日(2023年9月12日)、会社の業務の一環として英検協会主催の、英検出題形式変更についてのセミナーに Zoom で出席してきた。何回も開催されているセミナーなので「自分も出席したよ」という英語教育関係者は多いはず。実際、Zoomの表示名には同業他社の名前を冠したものがズラリ。弊社だけでなく、どこも関心は高いらしい。

ただし肝心のセミナー内容は拍子抜け。協会が用意した資料を、係の人が読み上げる。次に動画が画面共有されて、さっき聞いたものとほとんど同じ内容の文字だらけの資料を低クオリティの自動音声が読み上げる、というもの。この時点で「何じゃこりゃ?」だったが、セミナーのハイライトは安河内哲也先生による新英検対策ということだったので、まずは冷静にそれを待つことにした・・・のだが、こちらも ( ゚Д゚)ハァ? という中身とクオリティだった。というか英検協会も YouTube に動画がアップされてるなら、動画終了後じゃなくて先に言えよ。完全に時間を無駄にしたやんけ・・・

その肝心の動画はこちら。

詳しくは観てもらうのが一番いいのだが、CJが疑問に思ったのは以下の点。

1.英検で英語力を証明して世界を広げる

まあ、言わんとしていることは分からんでもないが、英語力を世界(というか英語圏)で証明したいなら、IELTS、TOEFL、ケンブリッジ英検、PTEアカデミックのどれかやろ。英検なんか、オーストラリアのごく一部の大学で辛うじて認知されてるだけやで。

2.英語は4技能をバランスよく学ぶ

まだバランスよく・・・とか、訳の分からんことを言っているんかいな。安河内先生はバランスについて詳しくは言及していなかったが、話しぶりから推察するに読む、書く、聞く、話すを同じような割合で勉強せよ、ということらしい。って、アホかいな・・・ 英語に限らず、語学の勉強なんかインプット100にアウトプット1の割合で勉強すべきに決まってるやないか。別にインプット200にアウトプット3でも、インプット100にアウトプット20でもいい。言いたいのは、語学学習においては

インプット量 >>> アウトプット量 

という不等式がほとんどの場合で成立するということ。詳しく書く暇はないが「4技能をバランスよく」という言葉を使う奴はペテン師!

3.技能ごとに順番をつけない、融合的に学ぶ

いやいや、ちゃんと技能ごとに優先順位をつけて学びなさいよ。インプットが先、アウトプットが後という順番は崩したらダメ。自分がどんなタイプの学習者なのかで読むが先に来るのか聞くが先に来るかは変わることはあっても、話すが先に来ることはない。

肝心の英検の新形式ライティングの攻略についても、

安河内先生の渾身の解説・・・?

こんな感じ。意味ある?どこがポイントなん?ただのトートロジーやんけ。たとえばこれが、

1.相手のメールの語彙レベルと自分の返信メールの語彙レベルを合わせる
2.相手の使った表現を可能な限りパラフレーズする
3.質問に答える時は、理由または簡単な例を添える

のような内容であればセミナーの意味もあろうというもの。けど、上の画像のようなポイントを挙げられて「なるほど!」ってなる教育関係者が果たしてホンマにおるんかいな?おったとしたら、それは教える側じゃなくて教わる側やろ・・・

中には具体表現⇒抽象・総称表現のような、的を射た解説もあったが、動画も含めて今回の英検協会主催セミナーは40分浪費しただけで終わった。

安河内先生を観るのはYouTubeのとある動画で、

「自動詞の後には前置詞が来るんだ!」

のような解説をしているの以来、二度目だった。良く言えば客寄せパンダ、悪く言えばペテン師に近いだろうか。それとも解説動画のスクリプトは全て英検協会が書いていて、安河内先生はそれを忠実に読んだだけ?たとえそうだとしても、この内容を無批判に受け入れているようではアカンでしょ。


Eメール問題

下の方の級に追加されるEメールというのも噴飯もの。というか、Eメールという時点で噴飯もの。さすが、今でも時々、dial the phone のようなフレーズが出てくる英検という感じ。これも Aibo かいな?20年前の感覚?さらにEメールと言いつつ文体が完全に手紙。しかも話題は小学生か、せいぜい中学生レベルなのに、唐突にロボットの進化について意見を求められるとか、笑うしかない。本当にコミュニケーション力を試したいなら、

Yo! My parents got me a robot dog last week. They said I'm not ready for a real one yet. I like it so far. Problem is, its battery runs out quickly. What do you think?

のようなナチュラルな文章を読ませて、それに対して返信させるべき。悪いが、こんな内容とレジスターが一致しない文章を読ませて、それに対してレスポンスさせても語学力なんか伸びるわけない。いや、語学力は多少向上するかもしれんけど、コミュニケーション力が伸びるとは思えん。

相当昔の話やけど、CJが大学の寮に住んでた時、9月に入学してくる留学生に何をしたか?一人称の「私」を「俺」に変えさせた。どいつもこいつも

「私はロバート・ヒューズでございます」

みたいに自己紹介してたけど、男が男子寮に入ってくるのに「私」はおかしいやろ。たいていはその場で

「俺はロバートです。よろしく」

に修正してた。まあ、どこの国も語学教育は堅苦しくやってるなあ、と当時は思っていた。最近はそうでもない。大学には中国、韓国、インド、ベトナムあたりの留学生が目に見えて増えてきた。彼ら彼女らの日本語は、最初からまあまあナチュラル。もちろん当時と今の学習環境を比較してもしゃーない。当時は当時。今は今。残念なことに、日本だけがクッソ古い感覚で語学教育をやっているのが問題。英検の新形式に淡い期待を抱いていたが、やっぱり英検は英検のままだった・・・

語学教育の業界人の端くれとして思う。英検重視は中学校までにしてくれ。もしくは中学生は TOEFL Primary、高校生は TOEFL Primary + TOEFL Junior に触れさせてくれ。そうでもしてくれんと、日本の英語教育はいつまでたっても夜明けを迎えられんで・・・

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