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スペースデブリ(宇宙ごみ)の課題について〜そして今後の宇宙開発を考える〜

目安時間:6~8分(約4500文字)
最終更新日:2024年5月19日

◼︎本記事の目的

人間の興味は底がしれません。
1957年に初めての人工衛星の打ち上げ、1961年ユーリ・ガガーリンが史上初めての宇宙飛行、1969年アポロ11号が初めて月に降り立つ、など1950年代以降、宇宙開拓が進められてきました。
そして、今こうしている間にも人間の興味は地球から宇宙へと広がり続けています。

本記事では、そのような輝かしい宇宙開拓の裏で引き起こされている、
スペースデブリの問題について、過去〜現在〜今後を知ること。
また、国際的なわだかまりについて知ること。
そして、今後の宇宙開拓はどうあるべきか?(個人的見解)をまとめたい思い筆を取りました。


1.スペースデブリについて

◼︎スペースデブリとは?

スペースデブリ(宇宙ゴミ)は、宇宙空間に漂う人工的な破片や不必要な物体の総称です。これには、廃棄された人工衛星、ロケットの部品、宇宙ミッションで使われた道具の破片、爆発や衝突によって生じた破片などが含まれます。スペースデブリは高速で移動しているため、運用中の衛星や国際宇宙ステーションに深刻なダメージを与える可能性があります。

◼︎スペースデブリとはいつからの概念?

スペースデブリの概念は、1957年のソビエト連邦によるスプートニク1号の打ち上げ以降に生まれました。最初の人工衛星の打ち上げにより、宇宙空間に初めて人工物が置かれ、それ以来、宇宙開発の進展とともにデブリの量も増加していきました。特に1978年にNASAの科学者ドナルド・ケスラーが「ケスラーシンドローム(注1)」を提唱したことが、スペースデブリ問題の認識を広げるきっかけとなりました。

(注1)ケスラーシンドローム:
すでに軌道上にあるデブリ同士の衝突によりデブリの数が増えてしまう自己増殖のことです。ケスラーシンドロームが開始している場合、今後打ち上げを一切やめたとしてもデブリの数が増加してしまいますので、 今後スペースデブリを発生しないように気をつけるだけでは不十分で、すでに軌道上にあるデブリを除去する必要があります。ただし、宇宙機同士のような大きな衝突は今のところ数年に一度発生すると予測されている程度の頻度であり、 ある日突然衛星が次々に壊れていくようなスピードではありません。

JAXA:https://www.kenkai.jaxa.jp/research/debris/deb-faq.html


2.スペースデブリの現状と今後の見込み

現状 現在、地球周回軌道には数百万個のスペースデブリが存在しており、そのうち追跡可能なものは約3万個です。これらは大きさが10センチメートル以上のものに限られ、小さなデブリはさらに膨大な数にのぼります。スペースデブリの増加は、運用中の衛星やミッションの安全性に対するリスクを高めています。

今後の見込み スペースデブリの数は今後も増加すると予想されています。商業宇宙飛行や衛星コンステレーション(例:SpaceXのスターリンク)などの新たな宇宙プロジェクトが進展する中、宇宙空間はさらに混雑するでしょう。ケスラーシンドロームのリスクも高まるため、効果的な対策が求められます。

地球低軌道上のデブリ数の実績と予測グラフ(出典:NASA)


3.スペースデブリ対策について

放置していても、増え続けるスペースデブリに対して、国や機関、民間企業などがさまざまなアプローチで対策を講じようとしています。

◼︎スペースデブリ対策のテクノロジー

  1. デブリ除去ミッション: ESAのClearSpace-1やJAXAのEDDEなど、デブリ除去専用のミッションが計画されています。これらは、特定のデブリを捕獲して軌道から除去する技術を開発中です。

  2. レーザー技術: 地上または宇宙に設置されたレーザーでデブリにエネルギーを照射し、軌道を変える技術が研究されています。

  3. エアブラスト: 軌道上でデブリを捕獲し、地球の大気圏に再突入させることで燃焼させる方法です。

  4. 電磁シールド: 地磁気を利用してデブリを地球の大気圏に引き込む技術も検討されています。

  5. 衝突回避マヌーバ: デブリと運用中の衛星との衝突を回避するための軌道変更。

  6. 追跡システム: デブリの動きをリアルタイムで監視し、衝突リスクを評価するシステム。


4.宇宙開発の国際ルールとわだかまりについて

宇宙条約(1967年)や宇宙責任条約(1972年)など、宇宙開発に関する国際条約が存在します。これらは、宇宙の平和利用や宇宙ゴミ問題への対策を促進するための枠組みを提供しています。
一方、国際ルールにおいてもまだ課題がある状態です。

◼︎わだかまり

  • 責任の所在: デブリ発生の原因となった国や企業の責任が曖昧で、国際的な合意形成が難しいこと。

  • 技術共有: デブリ除去技術の開発や共有に対する国際的な協力が不十分であること。

  • 費用分担: デブリ除去のコストを誰が負担するのかについての議論が続いていること。

5.宇宙開拓とリスクをトレードオフで考える

ここで立ち返り、そもそも宇宙開拓のメリットと、これまで述べてきたスペースデブリ問題などのリスクとをトレードオフで考え、
宇宙開拓の必要性と今後どのように折り合いを付けるべきか、個人的な見解を記載したいと思います。

◼︎宇宙開発のメリット

  1. 希少金属と鉱物: 宇宙開発のメリットとして挙げられるのは、希少なエネルギーや金属・鉱物などの資源を得られる可能性があるという点です。
    地球の資源は限られており、月や小惑星でそのようなものが得られた場合、貴重な資源を得ることができます。

  2. 技術革新:宇宙開発を通し、新しい技術や材料の開発を促進が見込まれ、これらの技術は、医療、通信、環境保護など、地球上のさまざまな分野で応用可能な技術となる可能性があります。

  3. 経済発展: 宇宙観光や宇宙鉱業などの新たな産業が生まれ、経済活動の活発化や新たな雇用の創出につながる可能性があります。

  4. 科学的知識の拡大:宇宙探査は宇宙の起源、構造、進化についての理解を深めまることになり、これは、物理学や天文学の進展に寄与する可能性があります。

  5. 人類の生存可能性: 人類が他の惑星や月に居住可能な環境を構築することは、地球外に人類の生存圏を広げることを意味し、地球規模の災害からのリスクを軽減します 。

◼︎宇宙開発のリスク(デメリット)

  1. 環境破壊:宇宙開発の拡大に伴い、前述のスペースデブリの問題や、他天体の環境破壊・汚染がされるリスクがあります 。

  2. 経済的リスク宇宙開発には巨額の投資が必要であり、その費用対効果が疑問視されることがあります 。

  3. 倫理的問題: 他の天体を資源採掘のために利用することが、倫理的に許されるのかという問題や、そもそも、宇宙開発に資源を投入することが、地球上の貧困や環境問題の解決に対する優先順位として正当化できるかという問題があります 。

◼︎宇宙開発とリスクをトレードオフで考える

宇宙開発とリスクを天秤にかけた際、私が疑問に感じるのは、
宇宙開発に投じているリソースの非効率さ」です。

宇宙開拓は、確からしさが曖昧な点がややありますが、今後の人類の発展に光をもたらす可能性があり、必要なことと捉えています。
一方で、リソースの最大効率化についてさらに深く議論をした上でのアクションへとアップデートをする必要があると考えています。

もちろん"難しいこと"かつ、”綺麗事”だと理解した上で敢えて述べさせていただきます。

かつて宇宙への挑戦は、技術力のアピールとして大事なものでした。特にアメリカとロシアの宇宙開拓がそれそのものだと捉えています。
しかし、それぞれが独自の開発やノウハウの蓄積をしていては、今後もリソースの二重計上となってしまいます。
つまり国それぞれの己が利のために、人類というもっと大きな集合体のリソース(=寿命)を削っている状態です。

コミュニティーというものは、似たような思想が集まってできるものであり、現状地球上では”国”がその最大単位だと捉えております。
だからこそ、この考えは綺麗事だとは重々承知ですが、地球単位でリソースを正しく分配し、ノウハウはシェアしなくてはならないと考えます。
でなければ、せっかくの宇宙開拓によって、人類は寿命を短くするよう導かれてしまうのはないかと考えます。

今後、人類が発展するには、「地球単位でリソースを正しく分配し、ノウハウはシェアしなくてはならない」という考えが浸透し、ゆくゆくは、国のアクションに投影されていくことが必要なのではないか?と考えています。

6.我々ができることは?

スペースデブリ問題からはじまった、本記事ですが、宇宙開発自体の問題は非常に大きく、そして複雑で一朝一夕で結論が出るものではありません。
ですが、我々のような一般の人間も教育、支援、政策提言などを通じて貢献することができます。
そして、持続可能な宇宙開発を実現するためには、一人一人の理解とアクションが不可欠です。

◼︎まとめ

スペースデブリの問題は、半永久的に宇宙開拓をするための手段に過ぎないとも考えられます。なので、手遅れになる閾値を超える前に対策を講じないといけないのは事実です。

一方で、長い目線で宇宙開発を考えた際の問題もそれ以上に考える必要があると捉えています。
宇宙開発のリソース問題について、我々の世代が、未来の世代のことを考えながら議論をし、アクションを行う姿勢が大事だと思います。
そして、これからの世代にも自分ごととして興味を持てる場を提供することが必要だと考えています。

私自身、本記事で述べたことに関しては、一過性の考えにするのではなく、日本の方向性や世界の宇宙開発事情などをつぶさに把握し、思いがあれば発信をするように心がけたいと考えています。
(国の宇宙政策に関しては下のリンクから動向の確認ができます。)

一度広げに広げた知見とノウハウ・経験を、地球単位で最適化しなくてはいけない時が近々来るかもしれません。
それには、一人一人の意識が変わることから始まり、次第に大きな動きに繋がっていくと信じています。

あとがき

まず、最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

本記事では、スペースデブリの問題から始まりましたが、今後の宇宙開発についてどのようなスタンスで臨むべきなのか、私なりの視点で想いをまとめさせていただきました。
綺麗事のような内容だとは思いますが、同じような考えの方がいらっしゃったり、増えたらいいなという思いで述べさせていただきました。
(もちろん、異なった意見もあると思います。)

まずは自分なりに、相対的に良いと思えるようなアクションをし続けたいと考えています。良い未来のために。。。

※注意書き
個人的な解釈と事実はできる限り判別できるように記載するよう心がけております。しかし、一人の人間が書いていることもあり、偏った情報や解釈になってしまっていることもあると思います。
私の記事だけを信じるのではなく、その他情報や様々な方の見解に触れていただき、ご自身の考えへと昇華して頂けたら幸いです。

【主な更新履歴】
2024/5/19:初稿


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