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SDGs Cooking Innovation Lab @聖学院・静岡聖光学院

クックパッドは、料理を通した様々な学びの場作りを行っています。今まで取り組んできた事例について紹介していきたいと思います。
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2019年11月23日、制服姿の男子中高生30名がクックパッドオフィスのキッチンに集まりました。東京の聖学院中学校・高等学校、静岡の静岡聖光学院中学校・高等学校とのみなさんと、「SDGs Cooking Innovation Lab」と題してジェンダー平等の課題に取り組みました。

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1. この授業の目的

持続可能な開発目標(SDGs)の中でも特に男子中高生にとって遠いものに感じがちな「ジェンダー」の問題について、料理を通して身近な課題に気づき、変化を起こす人になること。

ジェンダー平等に関する日本の状況を見てみると、共働き世帯が専業主婦世帯を上まわる現在でも、依然として女性の家事負担が多く、ジェンダー・ギャップ指数は世界153か国中121位(世界経済フォーラム、2020)。家庭内での負担の偏りもあってか、特に政治と経済の分野で男女格差が大きく、世界の中でも男女格差が大きい国とされています。

聖学院はOnly one for others、静岡聖光学院はMan for othersを教育理念に掲げ、共に「他者のために・誰かのために」ということを大事にしている学校です。SDGsに掲げられるような大きな問題に対しても、一人ひとりが行動を起こせる手段として「料理」に注目しました。
料理を手段とすることで、学校としては「主体的で誰かのために動ける人になること」、クックパッドとしては「男女の区別を超えて料理に取り組めること」を目指し、「料理をしたくなる世界をつくろう」という大きなテーマにチャレンジしました。

2. 参加者について

東京の聖学院中学校・高等学校、静岡の静岡聖光学院中学校・高等学校の選抜者30名。2校交えて、学年混合のプログラムです。

3. プログラムの内容

テーマは「料理をしたくなる世界を作ろう」。

プログラムは、「料理ワーク・講義・レゴワーク」の3つのパートからなり、最後に発表をします。それぞれのパートについてご紹介します。

3-1. 料理ワーク

参加生徒に聞いてみると、普段の料理は家の方がしてくれるため、自らが料理をする機会がほとんどないとのこと。そこでまずは自ら体験しよう!ということで、4つのグループに分かれ料理バトルが開幕しました。食材だけが用意されていて、レシピはなし。制限時間内で、食材を自由に組み合わせて、料理を創作しました。

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最初は戸惑っていた子どもたちも、戦いの火蓋が切られると本気モードに。初めて包丁を握る人もいる中で、ほうれん草の根っこを揚げたり、ハンバーグを大根おろしで彩ったり、創意工夫を凝らした料理の数々が生まれました。

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料理の後は、プレゼンタイム。それぞれのチームの工夫を聞いた上で、いよいよ実食です。
「里芋入りのオムレツ、ふわっふわでおいしい!」
「根っこが甘い!まさかこんなにおいしく食べられるなんて」
お互いの料理をたたえつつ、クリエイティブでおいしい料理の数々は、あっという間になくなりました。
生徒さんたちの晴れ晴れとした表情と対照的に、先生方は驚き顔。企画段階で「食べられるものができ上がらないのではないか」と懸念されていただけに、彼らの姿には驚いたようです。レシピ通り作らなければと思うと身構えてしまいますが、食材を自由に料理するという条件のもとで、 普段料理しない彼らからだからこその、協力の仕方や工夫が生まれていました。

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3-2. 講義

昼食の後は、講義です。クックパッドの担当者がデータを用いて、ジェンダーギャップをめぐる世界の問題、各国との比較を紹介。日本はギャップが大きく、特に家事負担が著しく女性に偏っていることが伝えられます。
「みなさん、さっき料理して楽しいって言っていましたよね?じゃあ、楽しいことならどうして女性の方がやっていて、こんなにギャップあるんでしょう?」
そんな投げかけに、先程まで笑顔もすっと消え、一気に真剣な表情に。
「確かに」と声を漏らしたり、説明を聞きながら考え込む生徒さんたちの姿が印象的でした。

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3-3. レゴワーク

そして最後は、聖学院の児浦良裕先生による、レゴⓇシリアスプレイⓇを使ったワークショップ。5人ごとのグループに分かれて短時間のお題に次々取り組み、2時間ほどのワークの終わりには「レゴⓇで男性が料理したくなる世界を表現して発表する」という課題に挑戦しました。
「料理自体は楽しいけど、作るものを決めるのが苦痛。そこだけ人任せにできないかな。」
「食材から自分で作ったら料理したくて仕方なくなるんじゃないか」
先ほど料理を体験して、自ら見つけた課題に対し、様々なアイデアが出てきました。

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3-4. 発表「料理したくなる世界をつくり広げよう!」

「AIと協力して、作るものは決めてもらう!未知の食材の組み合わせで新しいレシピを考えるのは、AIの方が得意だから。」
「畑で料理イベント。新鮮な食材でおいしい料理作れたら、楽しさに気付くんじゃない?」

料理の楽しい部分と楽しくない部分を認めた上で、単純に男女で”負担を分け合う”のではなく、新しいテクノロジーや資源を活用して、”楽しめるものにしよう”という発想が、印象的でした。

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4. 授業を終えて

先生より。

「生徒たちがあんなに熱くなるなんて予想外だった。料理もものづくりだからか、やりだすととにかく楽しそうだった。」
「ジェンダーという大きな問題に対して、『社会がどうあるべき』ではなく『自分がどうする』という自分ごとのアクション宣言が出てきたのが印象的だった。自ら手を動かす実体験があったからこそだと思う。」

といった料理という実体験の価値を評価する声をいただきました。また、

「都会の学校と地方の学校が合同でできたのも良かった。ITテクノロジーに注目する人もいれば、農業に目を向ける人もいて。一つの課題に対しても捉え方は様々で、それぞれの人が協力しあうことの力を感じられたのも良かったと思う」

という、合同授業の形式に対するフィードバックも。

料理プログラムを通じて私たちが想像する以上の気づきを得て、思いもよらなかったアイデアを生み出す生徒さんたちに、私たちも驚きと学びをいただきました。
聖学院中学校・高等学校の児浦良裕先生、静岡の静岡聖光学院中学校・高等学校の星野明宏と平本直之先生はじめ教職員のみなさま。一緒に取り組ませてしてくださりありがとうございました。

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