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「料理から考えるSDGs つくる責任つかう責任」@和洋国府台中学校

新型コロナウイルス感染症による学校の休校措置も解かれ、学校も再開した7月27日。和洋国府台女子中学校1学年のみなさんと、「料理から考えるSDGs(持続可能な開発目標)」というテーマでの授業を行いました。

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教室の大スクリーンに講師が登場するいわゆる”遠隔授業”の形で実施です。

1. この授業の目的

わたしたちにとって身近な”料理”という行為が、実はSDGsの目標達成にむけての重要なアクションの一つである、という気づきを子どもたちに感じてもらうこと。

和洋国府台女子中学高等学校は、高校の普通科に全教科探究型授業の「和洋コース」を設置しており、SDGsに関する授業等も積極的に行っている学校です。ただ、取り組みを進めている中で、先生の課題も意識もあったようです。
「SDGsを扱う機会が増える中で、『知ってはいる』という生徒は増えてきました。ただ、あまりに大きいものだから、身近になりにくくて。 『知ってはいるけれど具体的に何をしたらいいかはわからない』という生徒が多いんです。」と語るのは、探究コースのメンバーの高橋美絵子先生。

今回ご一緒するにあたり、食・料理という日常生活の中の身近な題材を通して世界の大きな問題を自分ごとにさせたいという思いが重なり、授業実施に至りました。

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2. 参加者と環境設定について

中学1年生、4クラス110名の女子生徒が参加、それぞれの教室と講師をGoogle Meetでつなぎ、実施しました。

3. 授業の内容

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テーマ:料理から考える「つくる責任つかう責任」
この授業は、クックパッドが展開する「料理から考えるSDGs」の一つです。12番目の目標「つくる責任つかう責任」について、身近な食・料理から考え、取り組むきっかけを感じてもらう授業になります。

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3-1. ウォームアップ

「あなたの好きな料理はなんですか?そしてその料理ができるまでに生じている"ムダ”を書き出してください。」

わずか3分という時間でしたが、調理時の野菜くずや油の残りのような「その時目に見えるもの」に加えて、冷蔵庫に入れっぱなしで腐らせてしまった卵や、遠くから運ばれてきているじゃがいもの輸送費など、「食材の向こう側」のムダに思いを巡らせ書き出す人も見られました。 まずは、自分たちの生活からのムダについて気づくことから、授業がはじまります。

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3-2. 世界の台所探検の話とクイズ

「さあ、今日はみなさんをタイの山奥にお連れします。世界の台所を覗いてみましょう」

本題、世界の台所探検家のお話に入ります。
講師は、クックパッドの社員である、岡根谷実里(おかねやみさと)。世界中の一般の家庭を訪れ、一緒に料理をさせてもらうという「世界の台所探検家」としてのユニークな顔も持っています。彼女の体験をもとに、世界の家庭で実際に食べられている食事から、SDGsに挙げられるような問題を実際の生活と関連づけていきます。

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タイの山奥に住むアカ族という人々の、ある家族の台所を紹介しながら、私たちと異なる生産と消費の仕組みで成り立つ暮らしをクイズをまじえながら伝えてきます。好奇心が旺盛な子どもたち、初めて知る暮らしにはとても興味津々な様子がみられました。

3-3. ワーク

「自然を生かした暮らしはこれからも大事にしてほしい。変えたいことは...山に手を入れすぎたら環境を壊してしまうから街に買い物に出られた方がいい、かな?」

これまでの授業の振り返りながら、タイの山奥の暮らしについて、これからも大事にしてほしいことと変えたいことを、提案として一つずつまとめていきます。
これからも大事にしたいことは比較的容易に出てきますが、変えたいことを考えるのは非常に難しい様子。理想のように見える生活も、観点を変えると課題もあります。多面的に世界をみるということをこのパートでは大切にしています。

最後に、自分の台所に戻ってきて、最初に考えた「好きな料理」を「ムダなくおいしく」作る方法を考えます。流通のムダをなくすために自分で収穫してくる、タイの例にならって保存のテクニックを使うなど、授業を通じて学びを得た上で、多くのアイデアが出てきました。
流通のムダをなくすために自分で収穫してくる、タイの例にならって保存のテクニックを使うなど、授業を通じて学びを得た上で、多くのアイデアが出てきました。

4. ムダなくおいしく作った”私の好きな料理”発表会

授業を踏まえたうえで、実際に家で料理をするという宿題をだし、その発表会が開催されました。
夏休み明けの9月。110通りの「ムダなくおいしく作った“私の好きな料理”」が集まりました。

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「近所の人からいただいたカボチャを、丸ごと使い切って5品の料理を作りました。果肉だけじゃなくて、種もキャラメリゼにして。他の野菜も家庭栽培したものを使って、生産段階のムダや流通のエネルギーを減らしました」

山から野草をとってきてむだなく使うタイの山奥の知恵にヒントを得たようです。まわりからはムダをなくす工夫もすごいけれど、その前においしそうという声があがりました。

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「もうすぐ使えなくなりそうなものを活用して豚肉のしょうが焼きを作りました。消費期限がせまった豚肉はセールになっていて、冷蔵庫でしなしなになっていたレタスはお湯にさらしたら元に戻りました。小売・消費段階のムダは減らせたけれど、豚肉が殺される時に骨や内臓は捨てられているんだろうかなど気になりました。」

家庭からのロスが多いというクイズでの学びから、身近なムダ削減に取り組み、さらに新しい疑問が湧いてきたようです。

5. 振り返り

「こうして考えてみると残したり作りすぎてあまってしまうのが多い気がする。これからはなるべく残さず好き嫌いをしないで食べていきたい。ゴミの分別もしっかりする。」
「日本とはまた違ったタイの山奥の暮らしを知れて面白かったです。また、 SDGsを観点として見ることでアカ族は、十分に環境を配慮できていると思ったが、課題もあることに気がつきました。」
「料理が環境問題に関係していることにとても驚きました。SDGsだからといい、難しく考えずにまずは自分の身近な所から課題を探し、それに対して向き合うこと、ベストを尽くすことが大切だと言うことを知りました。」

上記は、生徒の感想をそのまま掲載しています。
好奇心に満ちあふれている子どもたちからの熱い思いがこめられたアイデアに、わたしたち自身が何よりも料理についての新しい可能性に気づき、たくさんの刺激をうけた2日間でした。

和洋国府台女子中学校、高橋先生はじめ教職員のみなさま。このような機会をいただきありがとうございました。

<学校HPに掲載された高橋先生のインタビューはこちら