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能傍タルツの実話怪談コレクション その23 「現代筑前奇談考」-11月-『岩石人間、その他』

(前回からの続き)
 最近とみに耳にするようになったのが
 いわゆる
 ヒーラー、チャネラーと自称する方々である。
 そういった能力はもとよりない筆者としては
 「ああ、そうですか」と
 申し上げることしか出来ないのだが。

 筆者の知り合いで
 Mさん、Yさんという
 妙齢の女性の二人組がいる。
 
 彼女らはもちろん
 本業はそれぞれ別にあるのだが、
 趣味として
 あちこちの遺跡や神社仏閣を
 探索されている。

 そして
 古武道を修行されているMさんもだが
 Yさんのほうはそれ以上に
 いわゆる「能力者」と呼ばれても
 おかしくない才能をお持ちである。

 諸事情により
 その具体的な実例、検証は
 また別の機会とさせて頂きたい。
 
 と、いうのも
 本当の「能力者」と言うものは
 会社社長や神社仏閣。
 はては宗教団体が
 ほっておかない。
 お金を生むからである。

 そういった
 社会的地位のある方からの
 具体的な依頼内容を
 公表することにより
 様々な軋轢が発生する可能性があるため
 具体的な実例をSMSその他で
 記述するのはなかなかに難しい。
 
 それが故に
 彼女らもひっそりと。
 あくまでも市井の人として
 本業を持ち、暮らしている。
 
 あくまでも個人的意見だが
 本物の能力者といった方は
 今時のYouTubeを基盤にした
 いわゆるヒーラーなどとは異なり
 承認要求とか、自己顕示欲とかが
 ほとんど無いのが特徴的だと思う。
 

 それはともかく
 筆者に「K」及び、
 巨石パークの存在を
 教えて下さったのがこの人たちである。

 

 曰く
 巨石パークには何回か行ったのだが
 あるポイントには
 「岩石人間」がいる。

 もちろんそれは
 山中に石像があった訳ではない。

 おそらくはいにしえの時
 錫杖を突きながら
 この山の霊気に惹かれ
 修行していた僧侶が
 やがて
 杖を縦に腰掛けたまま
 息絶えた。

 しかし
 その意識はそのまま残り
 この山の岩石と一体化して
 岩石人間として
 生きているとも死んでいるとも言えず
 残っているようだ。

 二回目に見た時は
 だいぶ岩石に戻りつつあった。
 おそらくは自分の意識の中で
 得心がいったのだろう。

 多分、あと何年かすると
 完全な岩石になるだろう。
 だから
 今のうちに見ておくとよいよ。
 と。

 筆者はそれを確認するために
 山越えをして巨石パークに
 向かったのである。

「K」を出てから
昼の3時過ぎくらいにパークに
入山したのだが
ほとんど登山と変わらない険しさに
たちまち汗だくになり
心臓がばくばく言い始めた。

さらに
つるべ落としの秋の日が
傾くに従って
山の奥より襲い来る
蚊の大群に辟易して
ポイントまでは行きつかず
リタイアするという
情けない体たらくであった。

いつか機会があれば
再挑戦したいのだが
この文章を読んで巨石パークに
興味を持った方に一言申し上げる。

ここはパークとは名ばかりで
完璧な登山である。

入り口に
山小屋があり、入山料を払うわけだが
夕方5時以降は断られる。
遭難の危険があるからである。

また、
途中、巨石に打ち込まれた
ハーケンと鎖だけが頼りといった
難所はざらだし
もちろん照明などあるわけがない。
 申し訳程度の足場と標識だけを頼りに
道無き山道をひたすら昇るのみである。

ハイヒールやスカートはもちろん
男性でも小綺麗なカッコでは無理だ。
少なくとも登山靴かそれに準じた
ブーツを用意することをおすすめする。

 そうそう。
 
 「おたくはものを書いたり、
 話したりするポテンシャルはあるみたいね」
 と、自他共に認める口下手で
 ろくに文書など書いたこともない筆者に
 YouTuberになることや、
 記録としての物書きをすることを
 強く勧めて下さったのも
 Yさんであったことを
 附記しておこう。

(終わり)




 



 
 
 
 

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