鮎美

短歌を詠んでみています。

鮎美

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咲きたるを(短歌5首)

両性花より生まれたるおやゆびひめ花粉ぐらゐの卵巣ふたつ 女らしく生きずともよい世になりてわたしらしさが路頭に迷ふ たいやきが鯛であるならつぶ餡は孵ることなき卵だらうか お父さん、と見知らぬ男呼び止めてベビーシューズの右を手渡す 白百合の開けつぴろげに咲きたるをピンセットもて去勢してゆく 2020.4-5

    • 在宅勤務(短歌5首)

      ものごとの本質はまづ省かれて在宅勤務は「在宅」と言ふ ベランダの巣に磔刑のごと死する蜘蛛のからだが影落とす部屋 薫風にカーテン乾きゆくそばでリモート会議をりをり止まり 1Kの自宅に閉ぢ込められて書く「心よりお見舞申し上げます」 階上からどこかの街にゐる人へパワハラ行はるる昼下がり 2020.5

      • かもしれぬ(短歌5首)

        ふかふかの頬動かしてをさなごは白き綿毛と飛沫を飛ばす 見えぬもの拒むマスクの白さかなウィルスも飛沫も花の香りも かぶりつく前に手指を消毒す一年前まで平成だつた ミライトワ、ソメイティ描かれたるバスに乗り込む人ら離れて座る 動画見て茶漬けをすする無症状感染者かもしれぬ土曜日 2020.4

        • 不協和音(短歌5首)

          いつまでも夢に出てくるひとがゐて円定期預金まもなく満期 老いるならあなたと老いてみたかつた会はざる間に老いにしあなた ピアノなら不協和音が鳴りさうな近さで乗りしエスカレーター 東京都渋谷区渋谷われのみが記憶してゐる路地もあるべし アレルギーになるまで君に被曝して避けるほかなく生きてゆきたし 2020.5

        咲きたるを(短歌5首)

          最寄り駅まで(短歌5首)

          この街に住みて十年京急に最適化せし下肢の筋肉 完熟のマンゴーの肉のいろをしてつり革つり革したたつてをり 妊産婦にも高齢者にもあらざれば座席を譲るばかりのわれなり 京急の車両の床に流れゆくストロングゼロをりをり曲がる 春の夜のさくらさくらは舞ひおりる駅のホームの吐瀉物のうへ 2020.4-5

          最寄り駅まで(短歌5首)