蝉の夜鳴き。

部屋の東の壁に面したベッドには、朝になると否応にも光が降り注ぐ。海の方までずっと見渡せる窓だ。例年であれば、花火だって見える。人混みは苦手だし、ベッドの上で食べるアイスクリームは格別だ。(その日だけは、布団を敷いたままで飲食をしていい決まりになっている。僕の脳内ルールのひとつ。他にもいろいろあって、しばしば破られる。)朝の早いこの季節も、寝苦しいな、と思うくらいで、特段それで起こされると言う訳でもない。寝汚なさには中々自信がある。僕ほど睡眠に執着し、尚且つ時間を割く人間ばかりであれば、この国は機能を事実上停止せざるを得ないだろうし。少々サイズ感の合わない遮光カーテンは、もはや目隠し程度のもので、残りの三方の壁は本棚代わりのカラーボックスで埋まっている。ベッドを動かすため、部屋全体をパズルにするのは割りに合わない。昔「レイトン教授」と言うロンドン を舞台にした謎解きゲームソフトがあって、僕は随分熱心に取り組んでいたのだが、スライドパズルはどうも苦手で、よく父に泣きついていた。Androidは残念ながらまだなのだけれど、iosの皆さんは、「レイトン教授と最後の時間旅行」がアプリ版でプレイできるので、是非遊んでみて欲しい。謎解き、シナリオ、音楽、どれをとっても傑作。これはダイレクトマーケティングです。オタクの布教、とも言います。パズル要素は、ちょっとした関門として色々なゲームに仕掛けられているので、僕のような頭の硬い人間は、何をするにも時間がかかる。一番苦しめられた記憶があるのは、「ポケットモンスター プラチナ」に登場する格闘ジム(それぞれのジムには得意な属性があり、主人公はその全てに勝利することで、チャンピオンシップへの挑戦権を得る。このゲームの目標だ。)のリーダーまでの道のりだ。サンドバッグを操作すると、道が開けたり、床が動いたりとの大掛かりな仕掛けなのだが、その難易度の高いこと。バトルに辿り着くまでがともかく長かった。夕飯の前に始めたせいで、いい所で呼ばれてしまう。しっかり疲れるし、子供なので飽きもする。ちょうどこのnoteの導入部程だ。いや、それよりも。

読ませる、と言うより、思考の過程を整理がてらに公開している、といった表現の方が適しているし、実際その通りなのだ。段落の分け方も、文法も文脈もヒッチャカメッチャカだし、落ちも無ければサゲも無い。これは同義か。今回は特にその傾向があるように思っている。文字数の制約が緩やかなだけで、ツールの使い方としてはTwitterにほど近い。しかし僕はTwitterを、呟く、メモにする、よりも、「挨拶」をすることで、他者への呼びかけをすることに比重を置いているので、完全に逆転しているな。普段人に曝け出す部分以外を、不特定多数の目に触れる場所に置いている。ここだけ抜き出すとなんだか変態チックだ。自分自身はもちろん、読んでいる人をも巻き込んでいる辺り、たちが悪いな。

稀な晴れ間には、朝起きた時に蝉の鳴く声がどうどうと響いている。鳴き声で目を覚ますのでは無いのがミソだ。そんなにヤワじゃ無い。網戸にしていても、シャッターを閉めていても聞こえる。春にはカエルで、秋には鈴虫なのが、夏には蝉だ。前2つは夜に鳴くけど、蝉だけは昼間に鳴いている。夜は眠っているのだろうか。瞼とか、あんまりあるように見えないけれど、街がこんなに眩しくて眠れるのだろうか。僕じゃあるまいし。田んぼによくいる鷺は、近づくと想定の3倍は大きくて驚く。彼らも姿を見せるのはせいぜいが夕方までで、日が沈むと見当たらない。あんなに大きな体で、しかもたくさんいるのに、どこに身を隠す場所があるのだろう。カラス連中は、よく電柱の上の方に巣を作っているけれど、鷺も、それからたまに見るキジも、巣の場所を知らない。きっと、人間には易々とたどり着けない鳥の楽園、みたいな場所があって、空中にある扉を通って帰るのだ。そうならいいなと思う。鮮やかな木の実のなる木が沢山あって、川には小魚がギラギラ反射しながら泳いでいる。巣穴には表札がそれぞれきちんとかけられていて、鷹もよだかも仲良く暮らせればいいな。夜の鳴き声といえば、家の裏で猫が盛る度に、赤ん坊でも捨てられているのかとギョッとして外を覗く。それ程までに、人間の子供の泣いている声に似ているのだ、聞いたことがある人になら、必ず共感が得られると踏んでいる。それを思うに、小さい子供の泣き声は、鳴き声と同じようなものなのではないかしらん。きっとそうだな、合点がいく。言葉の代わりですものね。僕も、言葉が上手く見つからないときには泣いてしまう。声こそ押し殺すけれども、頬の内側を強く噛むので、涙はしょっぱい、よりも鉄の味のイメージが強い。猫と目が合うと大抵逃げられて、ちょっとだけ申し訳ない気持ちになってしまう。本当に赤ん坊が捨てられていたら、大切に育てたい。

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