成人前夜。

僕は明日ハタチになる。0時になっても魔法は解けない。革命は起こらない。いずれにしてもこれは、10代最後の文章で(いわば遺書で、遺言で)、今の僕にはなんてことない代物だけど、いつか、ちょっとだけ特別なものになるかもしれない。

将来に対する漠然とした不安とか、なんだかんだ、どうにかなるだろうと思っている根拠のない自信は、いつか消えてしまうのだろうか。卒業アルバムを捨てたい衝動も。自動販売機のアイスも。最後のバスを逃してローファーで山道を20分下った。駄菓子屋はまだそこにあるだろうか。大事にしまっておいた当たりの包み紙はどこかに逃げていった。見つけたら、交換してきてもいいよ。

大人は僕を褒めるとき、決まって、歳の割りには、落ち着いているね、というけれど、これから、きっと、困るだろうな。そんなに無理に褒めなくたっていいのにさ。面白くないよ、お前って。つまんないね。僕と一緒だね。

大人ってなんなんだろうな。物語では、いつも、大人と子どもで戦っている。子どもの敵は子どもだっていうこと、みんな忘れてしまうんだろうか。あんなに傷ついたのに。

図書室の一番上の棚には、ずっと手が届かないと思っていた。誰も読んだことがない本。無くなってしまった。一体誰が書いたのか、今ではもう、少し調べただけで、知った気になれる。

はやく大人になりたかった。

タバコに憧れた。お酒にも。

昔好きだったもののこと、ほどんど思い出せない。カケラみたいな記憶を踏むたびに、やりきれない気持ちになる。まったく、不甲斐ない。
どうか、今好きなものたちを、僕が愛するものたちを、この先ずっとずっと、抱えて眠れますように。

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