群青

彼は、いつものごとく食後の息苦しさをどうしようもなく抱えつつトイレから出た。すると俄かに、彼の瞳は見上げる窓に投影された薄暗い群青を発見した。その窓は、狭くも縦に高い空間の或る一面に設置されていた。

彼は妙な懐かしさを覚えた。懐かしさ?しかし彼は、その群青を何億回と見た気もすれど、初めて見たような気もした。とにかく彼はその群青だけを、限りなく近い彼方にて茫洋と投影されているその群青だけを掴みたく感じた。

彼は、その幽玄なる四角い空間の真下に寝転んでみた。と同時に、彼は以来感じたことのない恍惚感に襲われた。「心と身体が合致した」と言おうか。或種の真理に触れた気さえしないではなかった。それは紛れもない我の真理に。彼はその群青を仰ぎ見たまま、その痩せ細って浮き出た肋骨を幾度か触ってみたりした。
その間も、何か物憂げな息苦しさを抱えながら。…

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