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【地域で輝く学生vol.53】流通科学大学山口ゼミ~ヴィクトリーナ姫路スポーツビジネスコンテストに参加して~主体性を育てる仕組みづくり

流通科学大学人間社会学部人間健康学科の山口志郎先生のゼミでは、2023年度に「ナガセケムテックス株式会社Presentsヴィクトリーナ姫路・大学コンソーシアムひょうご神戸スポーツビジネスコンテスト」に参加しました。本スポーツビジネスコンテストは、2023年8月5日のキックオフミーティングから始まり、10月7日に企画プレゼン大会、12月23日と24日に企画実践、そして2024年1月14日に実践報告会が行われ、約5カ月間にわたって山口ゼミの2チームが活動に参加。「山口ゼミ」チームは『ファミリー層を狙った集客施策』を、もう1つの「マネーの虎」チームは『ショップカードを活用したLINE登録者数増加施策』を実践しました。今年度、学生たちとともに初参加いただいた活動について、山口先生からご寄稿いただきました。

参加を決めた理由、本企画に期待していること

 私のゼミでは、“スポーツとイベントを通じて社会を学ぶ”ことを理念に日々活動しています。流通科学大学に着任してから早いもので丸10年が経ち、これまでにスポーツ政策学生会議(Sport Policy for Japan)やインターカレッジ・コンペティション、スポーツ産業コンペティションなどのスポーツビジネスコンテストに毎年参加してきました。また、こうしたコンテストと並行しながら、プロスポーツチームや市民マラソンとの社会共創活動によるアンケート調査やインタビュー調査を通じて学会発表なども積極的に行ってきました。年度によって、学生のゼミへのコミットメントは様々ですが、概ねこれまで積極的にゼミ活動に参加してくれていた印象です。

8月5日キックオフミーティングの様子

 一方で、教員側からの働きかけにより受動的に参加した活動がこれまで多かったことから、今回様々なスポーツビジネスの中からどの活動に参加したいか、ゼミ生に問うことにしました。その中で、ヴィクトリーナ姫路のスポーツビジネスコンテストが魅力的だった理由は、「企画提案で終わらず、実践まで行い、効果測定を行いながら、自分たちの活動を可視化できる」という点でした。私のゼミでは、大学卒業後就職先としてスポーツビジネスの現場で働きたいと考える学生が多くいることから、ヴィクトリーナ姫路のスポーツビジネスコンテストでは現場のスタッフやナガセケムテックス株式会社の社員の方々、また立成社や大学コンソーシアムひょうご神戸のスタッフの皆様と密な交流を通じて、リアルなスポーツビジネスの現場を体験できるのも大きな魅力でした。

12月23・24日企画実践の様子(1)

 ヴィクトリーナ姫路のスポーツビジネスコンテストへの参加を通じて、学生に期待したのは、「自主性の先にある主体性をいかに引き出すか」という点でした。自主性は自らの意志に基づいて行動する能力を指し、一方、主体性はその行動に責任を持つ能力を意味します。自主性があっても、その行動に責任を持たない場合、主体性は発揮されていないと言えます。また、主体性があるということは、自主的に行動するだけでなく、その行動に対して責任を持つことができるということを示します。ゼミ生には今回のコンテストへの参加を通じて、チームメンバーと密にコミュニケーションを取りながら自分たちの企画を形にし、実際の実践を通じて行動しながらその活動に責任を持つということを期待しました。そのため、指導教員のスタンスとして、あまりチームの中に入り過ぎず、アドバイスや助言は最小限にとどめ、彼らの主体性を活かすゼミ運営を心がけました。

活動中の課題と学び

 山口ゼミのメンバー12名を2チームに分け、活動を進めていく中で、3つの課題が浮き彫りになりました。1つ目は、「チーム内での情報共有」です。これまでのゼミ活動では、指導教員がゼミメンバーに情報共有をすることがほとんどであり、学生が主体となり、ゼミメンバーに情報共有することはほとんどありませんでした。そのため、実際に企画立案を進める中で、自分たちの進捗状況をチームのメンバーが把握できておらず、結果として毎回議論が出発点に戻ることも少なくありませんでした。社会人になれば、チームメンバーでの情報共有やメモを取ることは当たり前ですが、これまでの学生生活では「他人任せ、他人ごと」という認識が少なからずあったことから、今回自分たちの企画を実現するにあたり、チーム内で情報共有をすることの重要性を学んだのではないかと感じています。

12月23・24日企画実践の様子(2)

 2つ目は、「スタッフやステークホルダーとの交渉・折衝」です。今回のスポーツビジネスコンテストの一番の醍醐味は、自分たちでヴィクトリーナ姫路のスタッフやステークホルダーと交渉することでした。これまでゼミ生はアルバイト先などで社会人と接する機会はあったものの、実際に事業を進めていく中で、チームのスタッフや関係者に自分たちの企画の想いを伝え、それを実現することの難しさを痛感したのではないかと思います。特に、自分たちの企画がチームやステークホルダーのニーズやウォンツとマッチしていない場合、どのように交渉、折衝するかはこれまでの人生で味わったことがない経験でした。そのため、ゼミ生が今後社会人になるにあたり、非常に重要な経験価値を得たのではないかと考えています。

12月23・24日企画実践の様子(3)

 3つ目は、「企画実践に対する効果検証」です。ヴィクトリーナ姫路のスポーツビジネスコンテストでは、ナガセケムテックス株式会社が共創パートナーとして1チームにつき活動費10万円を提供してくださり、その活動費をどのように使用し、自分たちの企画に対して効果検証を行うかという課題が課せられました。他のスポーツビジネスコンテストや授業でも実際に、実践まで行う社会共創活動はありますが、自分たちで活動資金をマネジメントし、それに対してどのような成果があったかを可視化するという経験はこれまでなかったのではないかと思います。お金を頂くということは責任が生じ、また活動の成果を検証するということは、自分たちの活動の良し悪しが明確に現れます。そういった意味で、企画実践に対する効果を検証するというプロセスは、彼らの自分ごと化や責任の明確化という点で、非常に重要な学びにつながったのではないかと考えます。

12月23・24日企画実践の様子(4)

本企画の振り返り、学生への効果・成長を感じた点

 本企画を通じて特に学生への効果・成長を感じた点は2つあります。
1つ目は、ゼミ生の主体性が醸成された点です。活動が進むにつれて、こちらが何もゆわずとも学生自身が主体的に動くことができるようになり、企画の進捗状況についての「報連相(ほうれんそう)」も自然とできるようになりました。特に、チームのリーダーが中心となり、各自の役割を全うしながら主体的に動けるようになったことは、ゼミ教員として学生の成長を感じた瞬間でした。
 2つ目は、コミュニケーション能力が向上した点です。12月23日と24日に行われたホームゲームでの実践では、ゼミ生が積極的にお客様とコミュニケーションを図っており、特に子どもに対する接し方には目を見張るものがありました。他大学のチームの活動も当日見ていましたが、第三者的に見ても、山口ゼミの2チームが一番おもてなしをしながら、お客様の目線に立ち、コミュニケーションが図れていたのではないかと感じました。ゼミ生の姿を見ていると、知らない間に、子どもが成長しているような感覚を覚え、指導教員としてとても誇らしかったという気持ちでした。

1月14日実践報告会の様子

 上記の2つの成長を通じて、山口ゼミとしては「主体性を育てる仕組みづくり」が今回のスポーツビジネスコンテストの参加を通じて構築されたのではないかと感じています。残念ながら、今回2チームともコンテストでの受賞には至りませんでしたが、自分たちの意思に基づき積極的に行動し、各自が責任感を持ちながら最後のプレゼンテーションまで全力を尽くすという姿勢は、今後のゼミのレガシーとして受け継がれるのではないかと思います。 最後に、今回のヴィクトリーナ姫路のスポーツビジネスコンテストに際し、多大なるご尽力を賜りましたヴィクトリーナ姫路、ナガセケムテックス株式会社、立成社、大学コンソーシアムひょうご神戸の皆様に感謝申し上げます。また、山口ゼミの活動に際し、日頃からサポートいただいている流通科学大学、ならびに今回2度にわたり取材にお越しいただきました流通科学大学広報室の幡谷望様に厚く御礼申し上げます。

寄稿:流通科学大学人間社会学部人間健康学科 山口志郎先生

参考:流通科学大学ホームページ
山口ゼミの学生が、ヴィクトリーナ姫路の課題解決策をホームゲームで実践!
・山口ゼミの学生が、プロスポーツの事業課題解決に向け立案した企画を実践&検証!