両手投げでスピードを出すための考察

 Jason Belmonte選手やOsku Palermaa選手など両手投げのスター選手に憧れて両手投げを志した方は多いのではないでしょうか.かくいう私もスカパーのPBA放送でPalermaa選手を見たのがきっかけで両手投げでボウリング競技を楽しんでいます.
 ただ,両手投げもただ両手で投げればあんな高回転・高速ボールを投げれるのか,と聞かれればそれはそうではないでしょう.多くの両手投げ選手にとって苦労するのは「スピードが出ない」ということではないでしょうか.
 そこで,本稿では少しでもスピードを出すにはどのようにすれば良いのか,ということの考察を書いていきたいなと思います.
 全ての人に当てはまるわけではないですし,必ずしも正しいとは限らないですが,少しでもスピードアップの助けになればいいなと思います.(両手投げがもっと増えてくれれば嬉しいです.)
 ただ最初に述べておきますが,いくら綺麗な投げ方をしても限界はあります.筋力もやっぱり大切です.筋力と技術のバランスが重要です.プロ野球でいえば,ひょろひょろのピッチャーなんていないですよね?そういうことです.

(注意:あくまでも個人の考察です.責任は全く負えないのでご了承下さい)

❶下半身の考察

①ステップを早くすることがかなり大事
 両手投げをやる上で一番といっても過言ではないほど大切なのはステップだと思います.なぜステップがこれほど大事なのかを考えてみましょう.
 突然ですが,あなたが車に乗っているとしましょう.止まっている車からモノを車外に投げるとどのようになるでしょう?―もちろん,普通にモノは飛んでいきますよね.特におかしなことが起こるわけではありません.

画像1

 では,次に乗っている車が高速道路(100㎞/h)を走っているとしましょう.もし,この車からモノを車外に投げるとどのようなことになるでしょうか?―答えは,「放たれたモノは物凄いスピードで飛んでいく」です.車内からモノを投げた人から見れば,止まっている車から投げたのと変わらない飛んでいき方をするのですが,外の人から見れば車のスピードが加わることで大モノが大谷翔平ばりのスピードで飛んでくるのです.恐怖でしかありません.つまり車は,モノにエネルギーを与えているということになるのです.
 これをボウリングに置き換えてみましょう.車→自分自身,中でボールを投げる人→腕の振り,と置き換えることができます.自分自身が速く動けば動くほど,ボールにエネルギーを与えることができるのです.極端な話,アプローチは走る,ぐらいのイメージでも良いかもしれません.

②ボールリリースのタイミング
 ①では自分自身が速く動くことでボールにエネルギーを与えることができる,としました.ただ,ボウリングで動きながら投げてよいかと言われればそんなことはないですよね.だってファールになっちゃいますから.なので,ここでは「止まる」ということをふまえて考えてみましょう.

画像2

 また車の例に戻ります.もし走っている車が急ブレーキを踏んで止まったとしたら,中の人はどうなるでしょうか?ー上の絵のようにジュースをこぼしたりするかもしれません.シートベルトをしてなければ前に飛ばされるかもしれません.何故このようなことになるかといえば,中の人に力が加わっているからです.
 では,同じブレーキでも緩やかにブレーキを踏んだ場合,どのようになるでしょうか?ー中の人にそれほど影響はなく,快適ですね.

 このことから,止まり方が急であればあるほど中の人に力が加わるということが分かると思います.では,絵のジュースがボウリングボールだとしたらどうでしょう?ボールは勢い良く飛び出してほしいので,そのためには急に止まる方が良いということになります.
 また,急ブレーキで一番力を感じるのはいつでしょう?―車が止まる寸前が一番グエッってなりますよね?つまりそのタイミングで一番力がかかっているのです.

 これら2つのことを合わせれば,「なるべく急に止まって,止まるタイミングで投げる」ことが良いということになるのです.よく「手遅れのタイミング」といわれますが,両手投げがするとスピードは遅くなってしまうように思われます.(片手投げだと必ずしもそうではないのですが.)

③パワーステップは必要か?
 
両手投げのステップが難しい原因の一つにパワーステップがあると思います.パワーステップが必要なのはボールのタイミングと下半身のタイミングを合わせるためです.具体的には一瞬上方向に体を浮かせることでボールが落ちてくる時間を稼ぐのです.だから,もしパワーステップがなくてもタイミングが合っているのであれば無理にパワーステップをする必要はないと考えます.逆にタイミングが合わないのであれば,ボールが上がりきるタイミングで体全体を一瞬浮かせるような意識を持ってみて下さい.おそらく時間が稼げるのではないかと思います.

❷上半身・腕についての考察

①体はひねった方が良い?
 体をひねった方が,ひねりを戻す力も使えて良い球が投げれる.―この説明は良く聞くものですが,ある意味正しくてある意味間違っています.なぜ,ある意味間違っているというのかといえば,それは体をひねっても「ひねりを戻す」ことができる人は少ないからです.
 例を挙げてみましょう.かつて活躍された野球の投手の一人に野茂選手がいます.野茂選手の代名詞といえば大きくねじるトルネード投法ですが,あれをもし私たちがマネをしたらどうなるでしょう?おそらく投げる前にバランスを崩したり,ボールに振り回されたりするでしょう.野球ボールですら困難なのに,それよりもずっと重たいボウリングボールでそれができるでしょうか?よっぽどの人でなければ無理だと思います.(たまにやってのける人もいますが.)
 つまり,せっかく体をひねっても,ひねりすぎるとボールに振り回されて逆効果だということです.ですから私が思うには,体は前を向けておくという意識で投げることで,体のひねりすぎを抑えることができると思います.
 イメージとしては空手の突きがぴったりだと思います.体は前を向いていますが,肩は入れ替えが行われていてそれがひねりの役割を果たしていると思います.

②バックスイングは高い方が良いか?
 これは実際にやってみると良いと思います.実際にバックスイングを高くするシャドーボウリングをしてみてください.―肩がよっぽど柔らかい人でなければ,上半身が大きく回っているはずです.つまりバックスイングが高すぎると①の問題がおこってくるわけです.ですから,バックスイングは腰がそれより少し高い位置で十分なのではないでしょうか.実際Belmonte選手もPalermaa選手もそれくらいの位置です.高く見えるのは,彼らがしっかりと前傾をとっているからです.

③ボールの持ち方
 
ボールの持ち方もまた大きな要素です.ボールを押すとき,一番力が伝わるのはどこでしょうか?ボールの側面でしょうか?違いますよね.一番力が伝わるのはボールの正面です.ですから,ボールを持つときには,手の平の中心とボールの中心が一致することを意識して持つと良いです.

 なかなか上手くいかない,という人にはTom Smallwood選手のように,手の平ではなく,手首でボールを支えるということを真似するといいと思います(Palermaa選手もこちらに近い).このようにすると,ボールの真ん中に腕がなければボールは落ちてしまうので,自然と真ん中をとらえられるようになります.最初は違和感があるかもしれませんが,慣れれば腕ごとボールを押せるようになると思います.

④リリースの仕方
 両手投げのイメージとして,「回転がめちゃくちゃかけれる」というものがあると思います.回転をかけたくて両手投げをする人がほとんどだと思うのですが,Belmonte選手曰く「両手投げは回転がかかる投げ方」なのだそうです.この言葉が意味するのは,両手で親指を抜いて投げれば回転は勝手にかかるのだから,自分から意識して回転をかけに行く必要はない,ということではないでしょうか.
 何をすれば良いかといえば「リストアクションはせず,腕をしっかり振れ」ば良いのです.Svensson選手のフォームを見れば分かることですが,彼はリストアクションなどしているようには見えません.ただ石を放り投げるかのごとく,ブン投げているのではないでしょうか.

❸終わりに

 いままで述べてきたことはあくまでも僕個人の考察です.すべての人に当てはまるわけではないでしょうし,これが全てであるとも思いません.
 大切なのは,いろいろなことを試して,どんな時が良かったのかを記録していくことです.もし,この文章がその作業の一助になることができたら,1つでも当てはまってスピードアップにつながったのであれば幸いです.

スピードアップが達成出来たら,次に回転のことを考えましょう...
スピード→回転→スピード→回転→...の繰り返しできっと上達するはずです.

P.S UFOボールに関する考察も記しました.もしよければどうぞ.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?