【6曲鑑賞】BUMP OF CHICKEN『aurora arc』の修辞
『aurora arc』は人気ロックバンドBUMP OF CHICKENが2019年にリリースした9枚目のフルアルバムです。今回このアルバムから6曲を鑑賞し、少しでも修辞の技術を盗もうと試みます。
記念撮影
「喋って」いる時間だけでなく「黙って」いる時間も(つまり「君」と過ごす時間の全てが)心を通わせる大切な時間なのでしょう。数学の補集合にあたる二つの時間を対句で表しています。
Spica
こちらも対句ですね。雨だけでなく色々なキッカケで君を思い出すのでしょう。一般性の高い「雨」を持ってくることで、多くのリスナーに共感されるし、雨を何かの比喩と捉える余地も生みます。
Aurora
子供の頃に読んだ物語のように、つらいときには正義の味方が駆けつけてくれる、わけじゃなかった……そんな厳しい現実を、よくある話だと軽く自嘲するような「類」が、かえって切ないです。
望遠のマーチ
少年漫画のように元気な「折れないぜ」で「折れない羽根が付いているんだな」と思わせ、続く「もともと付いてもいないぜ」で覆します。ただし「ぜ」口調の継続により、元気は失わせません。
話がしたいよ
ここにいない「君」を思う作中主体が、賑やかな街に取り残された気分になり、むしろ寂しくなってしまうシーンです。一曲を通して、一人称の小説のように丁寧に心情が描写されています。
アンサー
「陽射し」の温かさと「手」の冷たさの対比ですね。元気そうな人の悲しみに、親しくなってから気づく…よくある設定ですが、鮮やかに表現されています。直喩を重ねた二番サビも要注目です。
以上6曲だけ紹介しましたが、他の収録曲にも素敵なフレーズが沢山あります。通して聴くと、きっと良質な歌集を読み終えた後のような充実感を味わえると思います!
お読みくださり、ありがとうございました。