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Omoinotake『幾億光年』鑑賞

Omoinotakeのヒット曲『幾億光年』について、「光」「声」「時間」「距離」等に着目して鑑賞していきます。

もう一度さ 声を聴かせてよ

やわらかな歌い出しですが、相手への思慕や、それにもかかわらず声も聴かせてもらえない(電話もできない?)隔絶が提示されます。

めくれないままでいる 夏の日のカレンダー

思い出への執着が、具体的で身近な描写から伝わってきます。

ただいまってさ 笑ってみせてよ 送り先も わからない忘れものばかりだ

一緒に暮らしていたのでしょうか、親密な関係だったことが窺えます。

ココロが壊れる音が聴こえて どれだけ君を愛していたか知って

歌詞の随所に「音」や「声」の表現が出てきます。

もう二度とは増やせない思い出を抱いて生きて

一緒に過ごしている間は思い出が更新されていきますが、離別の後は更新が止まってしまいます。そのことにも今さら気づいたのかもしれません。

デイバイデイ どんなスピードで 追いかけたら また君と巡り逢えるだろう

サビ。早く追いかけたら追いつくものではないんでしょうか。同じ時空系にいないというか、世界線が違うというか、タイトルも相まってSF的な想像が掻き立てられます。少なくとも巡り会えそうにないのは確かです。

寄り添った日々 生きている意味 くれたのは君なんだよ

絶望的な状況の中「日々」「意味」「君」の韻に一抹の軽やかさがあります。

だから いつもココロで 想い続けてる まだ僕の声は聴こえてる?

「君」の声は聞こえないのに「僕」は想い続け、声を響かせるんですね。一方的な呼びかけ・問いかけが切ないです。

止まらない日々 君に逢う旅

「僕」は絶望的な状況にあっても「君」に会うことを諦めず、迷わず行動します。切なくも明るい曲だと思います。メロディーも軽やかです。

よく似合う笑み 浮かべて 待ってて
言えなかった 胸の奥の言葉 いまなら ありのまま 君に渡せる

きちんと言葉を伝えなかった後悔が示唆され、二番につながっていきます。

囁けばさ 届けられた距離 ゼロセンチの指先で渡せた気になってた
どうしてかな 離れている方が 言葉 溢れだすのはいまさらと笑って

ここから二人でいた頃の回想に入り、距離に関する言葉ですれ違いを表現します。そういえば曲名に含まれる「光年」も距離の単位です。

君だけ見つけた いつかの流星 どんな願いを浮かべていたのかな
あの日君が見上げてた藍色の先を見つめ

「君」の気持ちを分かっていなかったことを、こちらも曲名の縁語のような「流星」で振り返っています。

デイバイデイ 幾億年の距離をこえて 輝きを伝う星のように
変わらない愛 確かなヒカリ 届くまで願い続ける

星の光は幾億年かけて(幾億光年の距離を経て)届くのだから、どれだけ時間がかかっても「君」に届くまで願い続ける……壮絶な覚悟です。

実際、129億光年先の星の光をハッブル宇宙望遠鏡が捉えたそうです。

だから いつか僕ら巡り逢えたなら 輝きの中 待ち合わせよう

やはりSF・ファンタジー的な、美しくも非現実的なイメージです。ふつうには再会できないのでしょう。

君が迷子にならないように 瞬きもせず照らして待ってる

星が「またたき」もせず(片時も光を弱めず)「君」を照らす様子と、人が「まばたき」もせず「君」を見つめる様子が重なります。

消えやしない 君がくれた温もり 抱きしめ 僕はいまを 生きていくから

「温もり」という実感的な言葉で、宇宙から日常に引き戻されます。

名前を呼ぶよ 来る日も来る日も たえず叫ぶよ あのままの二人でいようよ

「君」を呼び続けることは曲の主題の一つなのかもしれません。これまでにも「聴かせてよ」「聴こえてる?」「待ってて」等と呼びかけていました。

デイバイデイ どんなスピードで 追いかけたら また君と 巡り逢えるだろう

デイバイデイ (day by day) は「来る日も来る日も」の類義語ですね。巡り会えるかも分からないのに追いかけ続けるつもりでしょうか。

わけあえた日々 季節はふいに君だけを乗せ 彼方へ

「彼方」と「光年」が美しい取り合わせですし、冒頭の「めくれないままでいる 夏の日のカレンダー」ともつながります。

だから いつもココロで 想い続けてる まだ僕の声は聴こえてる?

「まだ」には「徐々に声が届きにくくなる(距離が遠のいていく)」ような切なさがあります。

進み出す日々 目を開けるたび 近づいていく運命と信じて

それでも「近づいていく」と信じている、いえ、信じずには前に進めないのかもしれません。

言えなかった 胸の奥の言葉 いまなら ありのまま 君に渡せる
どれだけの 時が流れても 永遠に過去形にならない「I Love You」

言えなかった言葉の内容が明らかになります。「君」への愛、それを伝えられなかった無念、それでも想い続ける覚悟。美しくも壮絶な愛の歌です。

この曲はドラマ『Eye Love You』の主題歌ですが、未視聴の筆者が聴いても楽しめました。視聴すると他の視点からも楽しめそうです。

お読みくださり、ありがとうございました。