阪神タイガースに染み付いた負け癖

阪神タイガースの2021シーズンが終わった。悔しいどころの騒ぎではない。定期的に枕に向かって「クソ!!!!!」と叫ぶくらい腹が立つ。長州力でもキレてると言ってしまうレベルである。悔しさ、悲しさ、虚無感、・・・全ての負の感情が集積している。

結局ペナントレースで勝ちきれなかったことも、CSで勝ち上がることができなかったことも、実力が足りなかったことには間違いない。ただ、ペナントレースにおいてもCSにおいても、目の前の試合に勝つための最善策を取れていたのか、疑問に感じる場面が多々あった。例え負けたとしても、最善を尽くした上で負けたのならばある程度納得できる。勝負にタラレバは禁物だが、打った打たない・抑えた打たれた以外のことであそこでああしていれば・・・という後悔があまりにも多すぎる。

シーズン最終戦。ビシエドなど主力を欠いた中日相手にエラーから失点して完封負けし、ヤクルトに優勝を決められた。気落ちするなという方が無理だがそこから気持ちを立て直し、社会人チームとの練習試合などを経て挑んだCS1st 初戦。まずスタメン発表で目を疑った。

1 島田     近本
2 中野       糸原
3 近本       マルテ
4 マルテ      大山
5 糸原       サンズ
6 木浪       佐藤
7 ロハス      梅野
8 坂本       中野
9 高橋       P
(11/6)                    (シーズン序盤)

右のシーズン序盤から貯金を積み上げてきたメンバーからごっそり変わってしまっている。シーズン終盤にもこのようなスタメンを組んでいたこともあったが、お世辞にも機能したとは言い難い。相手先発菅野との相性を考えたのかもしれないが、あまりにも長打が期待できない打線だ。野球は点取りスポーツである。1イニングでシングルヒット3本打っても得点できなければなんの意味もない。しかも、菅野からはそう簡単に連打が出るとも思えない。また、曲がりなりにもチームを引っ張ってきた大山をスタメンから外すのは納得できない。

案の定、全く打線が機能しない。足や小技を生かして攻めていきたいのかもしれないが、そもそも塁に出なくては足を使うもクソもない。1点を先制されて迎えた5回裏、先頭バッターのマルテがチーム初ヒットを放ち出塁した。続く糸原の打席、エンドランのサインが出ていたのかマルテがスタートを切ったが、巨人のバッテリーに読まれてピッチドアウトされ、簡単にアウトにされてしまった。

仕掛けること自体は悪いとは思わないが、この場面、ランナーは足の遅いマルテである。足を使えるメンバーを揃えておいて、よりによって足のないマルテがランナーの場面で仕掛ける必要性をあまり感じなかった。このエンドランはベンチの余裕のなさを表した場面であったように思う。また、積極的な策というよりはゲッツーを恐れた消極的な策であるようにも見えた。そんなにランナーを進めたいならバントをさせればよかった。また、相手に完全にサインを読まれていたこともベンチの準備不足と言わざるを得ない。

これで完全に流れを失い0-4の完封負け。負けられない試合でベストオーダーとは程遠いスタメンで負けてしまっては悔やんでも悔みきれない。

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負けたら終わりの状況で迎えた2戦目。大きくスタメンを変えてくる。

1 近本
2 中野
3 糸原
4 マルテ
5 大山
6 ロハス
7 梅野
8 佐藤
9 青柳

ベストメンバーに近い形ではあるが、打順は・・・?そもそも糸原はいい選手ではあるがクリーンナップを任せるような選手ではない。シーズン通してHR 2本、打点30程度の選手がクリーンナップにいても相手チームは怖くないだろう。報道ステーションにあばれる君を起用するようなものである。糸原が輝ける場所はそこではないと思う。また、マルテは選球眼が持ち味の選手である。自分で決めなければいけない4番では、あまり結果が出ていなかったのは周知の事実だ。

2回裏、阪神が梅野のツーベースから佐藤のタイムリーで先制する。問題はこの後である。1点を取ってなおワンアウト2塁の場面、阪神ベンチは青柳にヒッティングを指示した。なぜバントをさせないのか?案の定三振に倒れ、そのあとの近本のヒットでランナーは帰れなかった。バントして送っていれば確実に1点の場面だった。結果的にその後の中野のタイムリーで追加点を挙げたので大した問題にはならなかったが、ベンチワークには疑問が残った。

直後の3回表、中野のエラーをきっかけにして3連打を浴び、1点を返される。エラーから崩れるのは阪神のお家芸だ。続くノーアウト満塁、若林をおあつらえのピッチャーゴロに打ち取るも、本塁への送球が乱れてゲッツーを取れず。坂本を三振に取るも、丸へのスライダーが甘く入りタイムリーを打たれ、逆転を許す。1イニングに守備のミスが2つも出ては厳しい。いつもの自滅の刃~阪神電車編~が炸裂してしまった。

ここで早くも青柳に代えて伊藤将を投入した。結果論かもしれないが、青柳は丸に対して通算.571とかなり相性が悪かった。打たれてから代えるのならば、丸のところで伊藤にスイッチしてもよかったのではないか?どうも継投も後手に回ってしまっている印象を受けた。

逆転されてからはいつもの残塁祭である。世界で一番楽しくない祭だ。

4回裏、先頭の佐藤が四球で出塁。続くピッチャーの打順で代打は糸井。初球を打ち上げセカンドフライ。結果論ではなく、ここは代打島田で送りバントでよかった。出てきた代打も、最低限ランナーを進めたい場面で初球ポップフライでは、自分の役割を理解できていないと言わざるを得ない。

そのあとも拙攻を繰り返し、迎えた8回表、またも大山のエラーをきっかけに簡単に失点し万事休す。あまりにも虚しいシーズンの終了だった。矢野監督がずっと言っている「俺たちの野球」は、「守備のミスを連発し相手に要らん点をやり、ランナーをためては消極的な姿勢でチャンスで凡退を繰り返す」野球のようにしか見えなかった。なんでもないゴロをファンブル、焦る必要ないのに送球ミス、ランナーを進めたい場面でポップフライ、制球が定まらない相手に初球から振って打ち損じ、繋げたい場面でボール球を無理やり振る、・・・あまりにもやっている野球が雑すぎる。一つ一つのアウトを大事にしていこうとする意図があまりにも感じられなかった。こういう小さなプレーの積み重ねで、シーズンを勝ち切ることができなかった。当たり前のプレーを当たり前にできるようにならなければ優勝はできないだろう。

「この悔しさを来年に生かす」とか、「この経験は成長の糧となる」とか、そういう言葉はもうウンザリだ。現に最後に優勝した2005年の次の2006年だって、そういうことは言われていた。2006年に優勝を逃した選手たちは、「この経験を来年以降に・・・」とか言いながらも、1度も優勝することなく、今はもう誰も残ってはいないのだ。こういう言葉は、優勝しなければなんの意味もない。

「最後までシーズンが楽しめてよかった」とか、「勝ち数は一番なのだから誇りをもつべき」とか甘ったれたことを言うファンがいるが、自分は到底そうは思えない。結局勝率の関係であれなんであれ優勝できなかった、CSでもあっけなく負けた、あるのはこの事実だけで悔しさしか残っていない。「来年こそ」なんて今は言えるメンタルではないがこの経験を生かすも殺すもその選手次第、来年以降優勝するかどうか、ただその1点だけだ。この16年間で身についたのは負け癖だけである。そろそろいい加減にしてほしい。





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