見出し画像

【インタビュー】ピアニスト吉村直美、宇宙への旅!

吉村直美さんのピアノリサイタルシリーズ「音楽と旅」の第4回目が12/11(土)に開催されます。第1回目が開催されたのはちょうど1年前の12/12でした。コロナ禍におけるシリーズへの出演続行は吉村さんの秘めた熱い思いを感じるようです。

吉村:数百年以上の歴史を経てきたクラシック音楽には、様々な発祥地があり、それぞれの地での文化の魅力を「音楽の旅」としてお届けすることを願い、ちょうど1年前に、皆さまのご要望に様々な形でお応えさせていただきたくスタートしたシリーズでした。ところが、まさか第1回目の開催より1年間も続けてコロナ禍の中での実施になるとは、誰もが想像し得ないことでした。

コンパス:確かに2020年の12月以降大きな感染拡大が3回も押し寄せた大変な年でした…。

吉村:私自身、時期によっては、開催してよいものかどうか不安になったときも多々ありましたが、そのような心境の中、いつもお世話になっているある方から、貴重なお言葉をいただくことがありました。

『キャンセルされずに待たれている方々のことを思ってください。このような状況でも来られる方々は、本当に音楽芸術を心から愛し渇望していらっしゃる方々でもあります』

この言葉に鼓舞され、応援くださっている方々を想い、常に最善を尽くした上で開催可能なときには、万全の対策を持って出演させていただこうという決意が固まりました。幸いにも、コンサート会場のトーキョーコンサーツラボは、面積が広く換気可能な窓もある上に、座席は可動式ですので、コロナ禍の状況にふさわしい対策を実施の上、コンサートを開催することができる場でした。

コンパス:たしかに。あの会場は天井も高く、外光も入る開放的な良い雰囲気のホールですよね。

画像7


吉村:とはいえ、ご来場をご希望いただいた方々の厚いご協力なしには、開催できませんでしたので、感謝してもし尽くしきれないほど、有り難く思っています。

試行錯誤しながら未知の考慮を重ねるなかではありましたが、回を重ねる毎に、舞台から拝見する皆さまのお顔が素敵な笑顔で満たされていくのを感じました。ご来場いただいた方々からは、「コロナ禍で体験できる貴重な癒しのひとときとなりました」、「気がつくと、欠かせない年間イベントになっています」、「心に染みるような音楽に感動し励まされました」などと、温かいお言葉を頂戴し、私の方が逆に激励された思いです。

コンパス:吉村さんの想い、ライブでの音楽演奏の意味の深さがお客様に伝わったことを感じる言葉の数々です!

吉村:実は、ここ1年の間に身体の不調でドクターストップがかかってしまい、2ヶ月ほどピアノを演奏できない時期がありました。幸いなことに徐々に回復し、舞台に立てるほどに復帰しましたが、予期しない事態の連続により、皆さまへの感謝の思いと音楽への畏敬の念が、強められる時期ともなりました。

画像1

ピアニストとして舞台で演奏をお届けするようになって以来、皆さまに音楽の感動をお届けできればという思いで臨んでいましたが、正直なところ、これほどまでに、ライブ演奏の継続と来場される方々の人命の大切さ深く願ったことはありませんでした。コンサートは、お客様とも一緒に作り上げていく催し物だと、あらためて感謝する機会となりました。皆さまの温かいご声援と厚いご協力に、ふさわしい言葉が見当たらないほど、感謝しています。

コンパス:これまでのプログラムは民族色を感じる構成であったり、ブラームスとその周辺であったり、実際の旅をイメージできるものが多かったように思いますが、今回はどのような旅に連れて行ってくれるのでしょうか?

吉村:今回は、クリスマスの時期にふさわしい旅をお届けすべく、これまでとは違い、いったん地球を離れていただき(笑)壮大な宇宙へお連れできるよう、夜空に輝く星への旅を、音楽でお届けします!

コンパス:それは楽しみ!

吉村:星への旅とした理由についてですが、クリスマスを象徴する『星』は聖書に由来していて、キリストの誕生を待ち望んだ東方の博士(占星術者)達が、分析した星を追う長い『旅』に出たのち、その『星』が指し示すところにキリストに出逢えたという記述にあるところ、この時世においては、現代の私達にとって長い『旅』もいえるようなコロナ禍で、『音楽』は闇夜を照らす『星』でもあるように思いました。

クリスマスツリーに、必ずオーナメントとして美しく飾られる『星』でもありますが、ドイツに滞在していたときは、毎年クリスマスの祝日に、その象徴についてテレビでも放映されているのを目にしていました。日本でも、美しく飾られていますが、象徴については、あまり語られていないかもしれませんね。

今回演奏する作品に登場する『星』については、別途、後日、ライナーノーツでの曲解説で、公開予定です!

名作を残した作曲家達と同じように、宇宙に輝く星の音楽にも視点と心を向けることで、各々の限られた旅路に灯火をもたらす星を見つけてもらえたら、嬉しいです。

画像3

コンパス:プログラムの中でホルストの「火星」「木星」が目にひきました。この曲は吉村さんの新しいレパートリーでしょうか?

吉村:はい、全く新しいレパートリーになります。

元はオーケストラのために作曲された『惑星』から、今回は、「火星(戦争をもたらす者)」、「木星(歓びをもたらす者)」を、ピアノ・ソロでの編曲版でお届けします。

特に有名な「木星」ですが、中間部は、イギリスの愛国歌、またイングランド国教会の聖歌となっていて、さらには、日本でシンガーソングライターとして大活躍の平原綾香さんによるデビューCD「Jupiter」(=木星)で大ヒットしたメロディでもあります!

曲の途中で登場するため、このピアノ曲を聴かれたほとんどの方が「えええ!そうだったの?!」という感じで、とても驚かれます。(私もその1人でした!)

「木星」を含む「惑星」は、イギリス人の作曲家ホルストの作曲活動がうまくいかなかった時期に、旅で影響を受けたといわれる占星術より着想を得て作曲されていますが、今回演奏する二つ相対するテーマである『戦争』と『歓喜』は、『暗闇の夜空を照らす星』に当てはまるように感じられ、今回のプログラムに取り入れました。

ちなみに、オーケストラの原曲を初めて聴いたのは、ドイツでのオーケストラの演奏会でしたが、実は、主催者の藤井さまが、ピアノ曲の編曲があると勧めてくださり、実際に聞いてしまって以来、虜になっています(笑)この曲を弾くと、なぜか、どんな時でも心が元気になれます。コンサートでも、皆さまに元気の素をお届けできれば幸いです。

コンパス:グリーグもあまりコンサートで聴く機会は高くないように思います。どんな演奏が聴けるか楽しみです!

吉村:「私は自然が歌うのみ耳を傾け、ノルウェーの松の芳香を全音楽界の演奏会場に届けるよう努めた」

この文章は、ノルウェー出身のグリーグ自身が、ドイツ語でインタビューアーに答えたときのものですが、その言葉のとおり、独特な美しさと壮大な土地を駆け抜ける風の音を感じられるのが、彼の作品の魅力と人気の理由のひとつだと思います。

今回、演奏します作品は、グリーグにより作曲された唯一のピアノソナタです。心を惹き付けるような美しさに満ちていながらも、演奏技術にておいては、鍵盤上で細かい跳躍がたくさん登場するため、技術的に弾き難い作品として捉えられることが多いようです。そのため、コンサートではあまり演奏されないのかもしれません。

グリーグ自身の言葉にあるように、大地を吹き抜ける風の動きと共に揺れ動くようなロマンチックな和声進行が魅力的です。フィヨルドを思わせるような自然を謳歌する壮大さ、悲しみを癒すような旋律、森から登場した小人が軽快に踊るような場面が登場し、演奏上の困難を忘れるほど美しい作品です。

画像4

ドイツにも留学していたグリーグの音楽からは、滞在先にいたシューマンの影響も感じされ、聞き馴染みのある魅力的なメロディーも登場します。愛する自然を音にすることに生涯を費やしたグリーグの音楽からは、至るところに夜空に煌く星も感じられます。私自身、16年滞在したドイツから影響を受けたグリーグの音楽には、どこか懐かしさを感じてしまいます。グリーグ独自の音楽の星をお楽しみいただければと思います。

コンパス:最後に来場のみなさまに向けた熱いメッセージをください!

吉村:この1年間は、皆さまにとっても、激動の月日となられたかもしれませんが、コンサートを通じ音楽により深く接することができ、貴重なご縁をが多く繋がれたましたことを、大変ありがたく思っています。

1周年を迎える本シリーズ公演が近づくにつれ、皆さまへの感謝の念がより深いものとなり、特別な思いで準備に励んでいます。当日は、これまでの公演にはなかった『何か』が、あるかもしれません!

一足早いクリスマスに、夜空を照らす星の音楽から放たれる光に浸るひとときを、お楽しみいただければ幸いです。皆さまのご来場を、心よりお待ちしております!会場でお会いできますことを、とても楽しみにしています!

画像7

画像6

画像7

吉村直美ピアノリサイタル 音楽と旅 #4
クリスマスの夜空へ
日時:2021/12/11(土) 14:00開演
会場:トキョーコンサーツ・ラボ (東京都 西早稲田)

▼プログラム
モーツァルト:きらきら星変奏曲
ホルスト:「火星」「木星」
J.S.バッハ:「主よ、人の喜びよ」「トッカータ BWV914」
グリーグ:ピアノソナタ Op.7

▼チケット
https://t.livepocket.jp/e/pya6n

▼吉村直美(ピアノ)
10代でドイツへ渡り、ロストック国立音楽演劇大学に留学。同大学を経て、ドイツ・ハンブルグ国立音楽大学を最優秀の成績で卒業。同大学在学中、ロータリークラブ、ブクステフーデ、シュターデの3団体により全額奨学生に選ばれる。17歳の時に、指揮者スタニスラフ・ガヴォンスキーのもとポーランド・国立クラクフ交響楽団と共演。その後、BBCドイツ放送局を始め、北ドイツ国営放送曲、ドイツ・ヴェレ・ラジオ放送局等のテレビ・ラジオ放送による演奏出演をする。ソロ並びに室内楽奏者としても、これまでにドイツ、フランス、ベルギー、チェコ、スウェーデン、アメリカにて演奏する。
ハンブルグ・スタインウェイ、ハンブルグ文化庁日独国際文化交流、国境なき医師団主催・国際チャリティー文化祭等の主催公演に出演。国内では、紀尾井ホール(日墺文化協会主催)、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」音楽祭(東京丸の内エリアコンサート)、すみだトリフォニーホール(国際芸術協会主催)等のコンサートに出演する。

また、駐日ドイツ大使公邸ピアノコンサート(駐日ドイツ連邦共和国大使館主催)、各地行政機関が企画する国際交流における催し物に演奏出演するなど、日本と海外の架け橋となる国際交流にも貢献する。
2007年より、ハンブルグ・ヨハネス・ブラームス音楽院ピアノ主科、伴奏主科にて教鞭を取る。2008年、ドイツのレコード会社アーティスト・エディション・レーベルより、ピアノソロCDを初リリース。2017年、Concert Portよりセカンド・ソロアルバム「夜の夢 静寂と情熱」をリリース。
ハンブルグ・ヨハネス・ブラームス音楽院客員教授。スタインウェイ・アーティスト。
オフィシャルサイト ttp://naomi-yoshimura.jimdo.com


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?