主治医に余命を聞いてみた②

前回は
【余命とは?】
【がん治療医押川勝太郎先生による余命の的中率についての見解】
を患者目線とがん治療医の目線で語ってみました。

押川先生については、ユーチューブライブ時にチャットで「自分のブログやチャットで
、先生の言葉を引用しても良いですか?」と聞いて許可をもらっています。
できるだけ、おっしゃられた言葉そのものを使用させていていますが、どうしても場面場面を切り取った形になるので、ホンの僅かなズレが生じることもあります。

できるだけ、ズレが無いように工夫してはいますが、できればこれを読まれている皆様には元の引用されている動画を視聴されることをおすすめします。

そうすれば、小さな誤解が生じることも最小限に済むはずです。
先生も引用を許可されたのは、「多少の齟齬(そご)が生じるリスクより、ある程度正しく動画を取り上げて拡散されるメリットの方が大きいと考えられた」からでしょう。

心の広い方のようですからね^^

では、後半戦にいきますね。
今回も皆様の参考に少しでもなれば、幸いです。


今回のMENU

【一般的に余命が当たらない理由】

【主治医に余命を聞いてみた】

【がん患者である妻の感想】


一般的に余命が当たらない理由

良く、ユーチューブの動画やブログで

余命8カ月と宣告された
抗がん剤治療開始前に、もって3年と言われた

といった、内容の事例が散見されます。
これについて私個人の考察を申し上げますと、医者が正しくない余命の伝え方をしているなあと思っています。

余命8カ月についてはシチュエーションにもよります。
抗がん剤治療が無効になった後、がんの症状が大きくなり、栄養状態が悪化したというシチュエーションなら余命についての話を患者が望めばしても良いでしょう。

とはいえ、元々「抗がん剤治療無効後でも余命の的中率は約30%」と言われています。
そこで、8カ月なんてあたかも確固たる根拠がありそうな余命宣告は無意味というか、患者の希望を全部奪いかねないのではないでしょうか。

もちろん厳しい状態であるのに「余命なんか当たらないし、外れて10年生きる人もわずかながらいますよ」と半ば無責任なことを言う医者もどうかと私は思いますが、皆様はいかがでしょうか?


では、当たらないのに余命をあまり良くない方法でなぜ医者は言うのか
について考えてみましょう。

患者に正しい現実を伝えることにより、患者や家族が終活の準備がスムーズにできるように」という配慮からです。
優しいですね。
しかしこれは表向きです。

どういうことか?
それを頑張って解説します。

さんざんお話した通り同じがん種、同じステージでも生存期間はばらつきます。
例えば、結腸にある大腸がんステージ4の患者がだいたいどれくらい生きられるかという目安を示したデータがあります。
5年生存率というデータです。
結腸が原発巣の大腸がんステージ4は約19%です。

100人の大腸がんステージ4の患者がいて
5年後に生存ゲートをくぐれるのは、だいたい19人というのが私の認識です。

ステージ4の他のがん種ですと 
胃がん  6.1%
肺がん  6.0%
乳がん 38.7% 
数字は5年実績生存率です

引用元
全がん協部位別臨床病期別5年相対生存率
(2010~2012年診断症例)

5年生存率を見ると、何だか嫌な気分になります。
しかし、現状を正しく把握するにはひとつの目安になります。
ただこれは「集団としてのデータであり、その人に当てはまるものではない」ということを患者は覚えていてください。

これらのことは、がん治療医は理解しています。
私も、何となくは理解しています。
しかし、がん治療医でも患者に上手く説明できる人はほとんどいないのではないでしょうか。
理解することと、患者に分かりやすく説明する能力は別だからです。

私は家庭教師の営業を長くやっていました。
その中で京大や阪大の学生が派遣されて、家庭から「先生を交代して欲しい」という要望が意外と多くありました。
これは、特に成績の悪い子供の指導にありがちなのですが「先生が、子供がなぜ説明しても分からないかが分からない」ということが主な理由です。

良く分からないですね(笑)
つまり、子供の立場に立って考えることができないのです。
どういう感じで理論的に説明しようかということにフォーカスし過ぎているのです。
先生と生徒にギャップがあることを、忘れすぎているのです。

こういう、成績の悪い子供のケースには難関大学の学生より、いわゆるFラン大の学生の方が良い結果も多くありました。
勉強が苦手な子供の気持ちがメチャメチャ良く理解できるからです。

家庭教師とはコミュニケーション能力が全てです。
いずれ、家庭教師の仕事を通して学んだコミュニケーション術の話をブログで書きます。
患者さんにも読んでもらいたいですが、この記事に関しては日本のがん治療医すべてに読んで役に立つ内容にします。

医者はコミュニケーションの素人です。私は小さな会社ではありますが2回営業コンテストで日本一になっています。
今は昔ですが。

話が大きくそれてしまいました。

がん治療医が、余命を伝える際の理由は

余命はばらける。
長生きする人もいれば、すぐになくなる人もいる。
そのことを理解している患者は少ない。
すぐになくなった時に文句を言われる可能性がある。
だから、ある程度そういうこともあると予防線を張る
そうすれば、強烈なクレームが減る

ということだと私は考えています。

しかし余命宣告において大きな問題は

患者に伝えるタイミングでは無いのに伝える
患者が知りたくないのに伝える
伝える時にデリカシーが無い言葉を使う
患者から希望を奪うような言い方をする

こういう医者が多いことです。

なぜか?
余命の本当の定義や、スムーズな伝え方を知らないがん治療医が少なくないからではないでしょうか。

実際、治療ガイドラインには、正しいと思われる余命宣告についての方法は載っていません。
学会や、大学病院は新薬や、新しい治療法の研究ももちろん大事です。
しかし、余命宣告などのセオリーなどの論争や研究をもっとやっても良いのでは?と患者の家族の立場から提言させていただきます。

一般的に余命が当たらない理由のまとめ

余命についての知識が足りない医者が多い
医者のコミュニケーション能力不足が大きな問題であることに気がついていない学会も悪い
余命について全く勉強しない多くの患者にも、少なからず責任はある
余命の話自体が、難し過ぎる



主治医に余命を聞いてみた

次に、3月9日に実際に私が主治医に妻の予後を聞いた事例をお話します。
診察には主治医と私、そして患者である妻がいました。
診察当日の朝に、先生に質問とその背景を書いた1枚ものの紙を渡しましたが、忙しい先生はいつものように、目を通し忘れていました。

まず私から
妻の治療オプションはどれくらい残っていますか?
これは、ザックリし過ぎた質問ですが。
ちょっとくらいは、困らせてみたかったのです。
手紙、読んでくれてなかったから。
プンスカ。

主治医は
どのような症状が出るかは分からないので、一概には。。
とお困りのご様子。
手紙を今日も事前に読まずに診察に臨んだからです。
へへーんだ。

実は私は大体の予測はついていました。
ここからしばらくは、素人の私の所見です

肝臓の再発なら、体力があれば手術か抗がん剤。
体力がその時点で無ければ軽めの抗がん剤。
再発場所や、大きさ、数にもよるのでこれもその時点でCTを撮らないと評価できないことでしょう。

私たちの希望は、体力や予備能力があり、切除後の残肝容量が安全値の範医内(執刀医はおそらく前回と同じ国立大学附属病院の名医でしょうから、例えば50%もあれば)、多臓器に重篤な疾患や症状が無ければ、肝臓の再発なら手術が第一選択です。

もちろん、そのあたりのメリットとデメリットの兼ね合いは専門家の主治医しか分かりませんので、希望は出しますが基本的に主治医の提案に従うつもりです。

次に肺の腫瘍増大の対応について。
元々、あるのか無いのか分からない状態。
前回のCTで問題は無さそうでした。
当面は問題が無い可能性が高いと認識しています。

肺に関しては、一応ガイドラインでは「切除も状況によっては考えても良い」と書いている気がしますが、予備能力の観点と、どちらかといえば肝臓の再発手術に体力を使いたいので手術はあまり望んでいません。

術後肝不全や腸閉塞、腹膜播種など「がんの不意打ち」も起こりうる可能性は少なくないでしょうから、肺に関しては「余程、命に関わらないなら手術は無し」というスタンスではあります。
まあこの状態ですから、元々肺は手術不適応かもしれませんね。

次に、抗がん剤治療について。

ファーストラインでFolfoxiri+アバスチンをやって、オキサリプラチンが原因と思われるCIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)による手足のしびれが慢性となり今でも残っているのでオキサリプラチンは不耐、使えないでしょう。

それでも主治医が「使わなければ死ぬよ」と言われたら、少量のストップアンドゴーという戦略もありでしょう。

しかし、妻のストレスの主要因はしびれです。
これ以上強くなればQOLの低下に繋がりかねないので、基本的にオキサリプラチンを使う気はありません。

主治医は以前から、進行の早いBRAF変異型遺伝子異常に使える新治療法のエンコラフェニブ+セツキシマブというレジメン(メニュー)を使うことを示唆していたのでこのレジメンがこれからのカギになると私は認識しています。

最後にスチバーガ(レゴラフェニブ)を使って抗がん剤は終わるべきかなと。

カギはエンコラフェニブ+セツキシマブというレジメンをどこまで引っ張れるか?という青写真を描いて、「今のうちに多少オーバーワーク気味でも治療に耐えられる体力を頑張ってつけよう」という戦略を私が立て、妻が頑張ってくれています。

もちろん、妻がやりたいことはドンドンやってもらっています。
3月27日に京都の円山公園の桜を見に行き、4月9日は日帰りで伊勢神宮に行きます。

この他にも、「東京の板橋の孫に会いに行き、ついでに板橋の蒙古タンメン中本に行く」「北海道の洞爺湖の温泉に入り、ノーザンホースパークに行き、できれば近くのゴールドシップに会いに行くツアー」「3回目の湯布院旅行」などやりたいことは満載です。

さて、今後の抗がん剤について主治医に話題を振ったところ
イリノテカンを使うかも
とボソっとおっしゃられました。

妻は、排便が軟便続きで落ち着いていないので、うーんという気分ですが「体力があるうちにイリノテカンを使って、副作用に留意しつつ再びがんの総量を減らして、次のエンコラフェニブ+セツキシマブに繋げていこう」という意図のような気がします。

いずれにしても、イリノテカンをまだ使うことを検討できるくらいですから、思っている以上に選択肢はあるようです。
ゆえに、余命を聞く必要は全く無いと私は判断しました。

抗がん剤の予想レジメン

ファーストライン(終了)
Folfoxiri+アバスチン

セカンドライン
Folfiri+アバスチン
もしくは、Folfiri

サードライン
エンコラフェニブ+セツキシマブ

アンカー
スチバーガ(レゴラフェニブ)

状態の変化、がんの不意打ちなど諸条件により大きく変化するでしょう。
スチバーガについては、やらなくても良いかなという感じです。

ちなみにレジメン予想は、競馬予想に近い素人の悪ノリに当たるかもしれません。
遊び心を治療に取り入れただけでございます。


主治医に余命を聞いてみた、まとめ

やはり、余命を聞く時期ではありませんでちた(+o+)



がん患者の妻の感想

聞いてくれて良かった。
色々、考えてくれてありがとう。
愛してるわ。

まとめ
最近、愛してるってあまり言われないので、空耳がするようです。


本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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