見出し画像

セメントセクターガイドラインリリース(3)

GHG多排出セクター、セメントセクターのSDAご案内の3回目。
前回は、目標設定まで説明しましたので、今回はアプローチ方法です。

なお、1回目と2回目はこちらを参照下さい。

使用可能なアプローチ方法は、このようになっています。

スコープ1・2
1.SDA
2.クロスセクター総量削減

スコープ2のみ
1.1.5℃目標に整合した再エネ導入目標

セメントSBTガイダンスより

注意すべきは、スコープ1・2のアプローチ方法について。

1.SDAが使用できるのは、クリンカー製造に起因する排出量のみという点。
その他のプロセスを含む場合には、2.クロスセクター総量削減を採用しなければならない(「shall」)とされています。

これについては、さらに詳しい説明があります。

クリンカーやセメントだけでなく他の製品も製造している会社は、クリンカー製造が会社全体のスコープ1排出量の95%以上を占めている場合、セメントSDAを会社のスコープ1 および2排出量の全体の目標設定に使用することができる。

セメントSBTガイダンスより

それだけ、セメントSDAが当該セクターの排出量に配慮したガイドラインとなっているということです。それでは、95%以下だとどうするのでしょう。

クリンカー製造が会社のスコープ1排出量の5%から95%を占める場合、自社のクリンカー/セメント製造から生じるスコープ1・2排出量の目標設定に用いることができ、他の全ての活動からのスコープ1と2の排出量の目標設定には、クロスセクター総量削減、あるいは他の関連SDAが用いられるべきである。

セメントSBTガイダンスより

つまり、総量削減か生産している他の製品別SDAを使用して、セメントセクター排出量の目標とは別に報告しろということです。これについては、2回目でも言及していますので、参照になさって下さい。


続いて、スコープ3のアプローチ方法です。

スコープ3
短期SBT:以下の5つ
1.クロスセクター総量削減
2.経済的原単位削減
3.セクター別物理的原単位収束(SDA)
4.物理的原単位削減
5.サプライヤーエンゲージメント
 
長期SBT:5.を除いた4つ

セメントSBTガイダンスより

SDAでは、削減率が設定されるので1点に収束するのに対し、総量削減では削減量が設定されるので、その値に達するまでの軌道が一定となります。イメージとしては、こんな感じですね。

ウェビナー資料より

一般的なアプローチ方法ですが、セメントセクターの事業者は、クリンカ製造による排出量算定は、無条件に算定が必要となることに留意しましょう。

自社で製造していない場合でも、スコープ3カテゴリー1で算定しなければならない「shall」となっています。その理由、背景は2回目で説明していますので、参照下さい。

クリンカー製造のカテゴリー1での算定は「shall」ですが、カテゴリー3での算定は「recommended」です。これは、例えば輸送セクターだと燃料の使用は「well-to-wheel」で算定することと調和させる目的だと説明しています。

「well-to-wheel」は、資源の採掘から精製、輸送、そして使用までを含めた排出量を算定対象とするものです。つまり、これには、トラックによる直接燃焼だけでなく、上流側の排出量も含まれています。

ですので、輸送セクターは、カテゴリー3の排出量も(スコープ3算定がマストでなくても)実はスコープ1で算定していることになります。なので、クリンカー製造でも、スコープ1・2に含まれない燃料使用に関連する排出量も算定することが推奨されているのです。

なお、物理的原単位削減を選択した場合の分母については、下記注意喚起がされています。まぁ、これはセメントセクターに限ったことではありませんよね。

物理的原単位削減を選択した場合、目標に関連する適切な分母を選択する必要がある。スコープ3区分の実際の脱炭素化との関連性がなく、大きく変動する可能性のある分母は、脱炭素化のための真の努力がなされていない目標に向けた進捗の印象を与える危険性があるため、避けなければならない。

セメントSBTガイダンスより

SBTiは、目標にしたがって着実に削減が進んでいるかを評価します。事業者としても、努力が反映されない分母を選択してしまうと、SBTiを参照している機関投資家の評価も下がってしまいかねません。削減の過程での変更は継続性も同様に重視されることから、できれば避けたいところ。

自社が不利益にならないよう、アプローチ方法の検討段階で、関係者を巻き込んでの議論が推奨されます。

SBTiはサンプルを紹介しています。参考になさってはいかがでしょうか。

セメントSBTガイダンスより

ここまでで、目標及びアプローチ方法の決定を説明してきました。
次回は、算定方法について見ていきたいと思います。

もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。