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エビデンスの入手体制を整備しておこう

今年の温対法の報告(対象は令和5年度分)から、使用する排出係数が更新されました。適切にアップデートして、算定・報告されましたでしょうか。

SHK制度における算定方法の見直しについて、令和4年1月から12月まで、算定方法検討会において議論が行われ、法令等の改正が行われたことは、皆さんご承知かと思います。

改正法は、令和6年4月1日から施行されたので、令和6年度報告(令和
5年度実績の報告)から適用されています。主な変更点は、次の4点。

1.算定対象活動・排出係数・地球温暖化係数の見直し
2.廃棄物の原燃料使用の位置づけの変更
3.電気及び熱に係る証書の使用の上限の設定
4.都市ガス及び熱の事業者別係数の導入

誰にでも当てはまるのが、1.の「算定対象」と「排出係数」の見直し。
皆さん、適切にアップデートして、算定・報告されましたでしょうか。

2006年のSHK制度導入時、算定対象活動は、当時の国家インベントリ上の算定対象活動に合わせる形で規定されたそうです。

その後、国家インベントリ上の算定対象活動は、我が国の排出実態や最新の科学的知見等を踏まえ毎年のように見直しが行われて来た一方で、SHK制度上の算定対象活動は、ほとんど見直しを行って来なかったため、国家インベントリ上の 算定対象活動と乖離していたとのこと。

国家が裏書きして報告するものが、事業者の排出実態や最新の科学的知見を必ずしも反映できていないのは問題。IFRS S2では、「過大なコストをかけずに入手できる最新のデータ」に基づくことを要求してますし。

加えて、法に基づいていることにより(虚偽報告は罰則があるから)、GX-ETSでは、温対法の報告に用いたデータは第三者検証を不要としていることを考慮しても、当然の変更だと思います。

ただ、これで安心してはいけません。
今後の、排出係数の見直しについても、方針が示されています。

排出係数を3種類に分類し、毎年変動するものは最新年度の数値、都度変動するものは一定期間の平均値を採用するとしています。なので、電力及びガスの排出係数と同様、毎年最新版を使用して算定する必要があります。

また、見直し頻度は、総合エネルギー統計と同じ、原則5年となります。
IPCCガイドラインが変更された場合には都度見直すとのことなので、IPCC第7次報告がリリースされた場合にも、見直されるでしょう。

SHK制度における算定方法検討会 中間取りまとめ 15・16ページより抜粋

決定されている改訂内容だけでなく、中間取りまとめには、今後の検討課題も記載があります。その代表例は、2つの算定対象活動。

1.社用車・公用車におけるエネルギーの使用
2.建設現場での排出量

SHK制度の算定のバウンダリーが「組織境界内」でしたので、自社の事業場(ビルや工場)以外での排出は算定不要でした。なので、敷地外を走行している社用車によるガソリンの使用や、工事現場で稼働している重機による軽油の使用などによる排出は、報告していませんでした。

SHK制度における算定方法検討会 中間取りまとめ 10ページより抜粋

委員の間でも、上記のように、反対意見はないことから、中間取りまとめの指針においても、しっかり明記されています。

「検討すべき」とありますが、ほぼ確定とみて良いでしょう。

SHK制度における算定方法検討会 中間取りまとめ 11ページより著者追記

「エビデンスの入手体制を整備しておこう」というタイトルにしたのは、これが理由です。排出係数については、電力・ガスと同じ手順にしておけば問題ないところ、この算定対象活動の変更においては、事業活動の洗い出しから行う必要があります。

社用車が多いセクターや、国内に多数の案件を有するゼネコンなどは、エビデンスを入手するワークフローを構築するのは至難の業でしょう。

もちろん、来年からということはありませんが、数年以内には現実のものとなると考えます。

大手ゼネコンのスコープ1・2の第三者検証を実施した経験もありますが、建設現場の日報を一日一日めくって、何日にどんな重機が何台現場にあったのか。あっただけでは不十分で、稼働したのは何時間なのかを確認する。

一次受け、二次受けなど、複数の事業者も入ってきます。グループ企業もあれば、他社もある。重機の所有者は?燃料の費用負担は誰?

どうでしょう?
その複雑さ、煩雑さ、難易度、想像がつきますか?

算定に当たっては、事業者が実施できる設計がされるとは思いながら、まずは、必要なエビデンスが得られるような体制を、今から検討していくことを強くお奨めします。

未来は予測できませんが、こちらは、ほぼ確定した未来。
であれば、早く着手するのが吉。

応援していきますので、頑張っていきましょう。





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