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EmbeddedとAttributed

CBAMの移行期間(Transition period)が、2023年10月より始まりました。
2025年12月31日まで26ヶ月かけて、対象セクター企業及び当局が、報告内容・報告、システム運用等々の学びを重ねる予定であることは、ご承知かと思います。

スムーズな導入に当たって、欧州委員会は、ポータルサイトにおいて、ガイダンス資料やオンデマンド動画を提供していると共に、必要な情報をリアルタイムで発信しているので、頻繁にチェックされるのがよいかと思います。

中でも、9月から10月にかけて実施された、対象6セクターに特化したガイダンスウェビナーは、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。もちろん、ポータルから視聴できますので、今からでもご覧頂くと良いでしょう。

報告に当たっては、何はなくとも「算定」となるのですが、現在のスタンダードとなっているGHGプロトコルと異なっている点があり、長らく携わっている方にとっても「???」となるところがあるかと思います。

その一つが「Embedded emissions」と「Attributed emissions」

「Embedded」は「埋め込まれた」
「Attributed」は「帰属する」

単語の意味からなんとなく分かりそうなのですが、わからない。
質問も、頻繁にお受けする内容です。
簡単に言うと、こんな感じ

Embedded emissions:原材料に含まれていた排出量
Attributed emissions:製造時に排出した排出量

まだまだ分からない、といつも言われますので、こちらで説明します。
これらは、アルミニウムセクターのウェビナーで使用されたスライドです。

算定は、どのような「ルート」つまり工程を経て製造されたのかを特定するところから始まります。

アルミニウムでは、このように、原料のアルミナ(から、アルミニウムのインゴットやスラブを製造する「Production process 1」、さらに、シートやワイヤ、ホイルなどへの加工工程を行う後工程へと引き継がれる「Production process 2」を想定しましょう。

「Production process 1」では、原料にエネルギーをインプットしますが、このとき、CO2やフロンを排出します。この時LNGを使用したとしましょう。

この製造ラインのみに供給しており、メーターで使用量を測定できていればよいのですが、他のラインでも使用していたり、空調でも使用していたらどうでしょう。

CO2の算定では、適切な仮定の下に按分したりしていませんでしたか?
GHGプロトコルでは「Allocation」と呼称していますが、同様の作業です。
エネルギー使用による排出量を、特定の製品製造に「帰属」させるのです。

このようにして算定した排出量が、「Attributed emissions」です。

LNGで説明していますが、直接排出に限らず、間接排出でも同様です。
なお、算定に当たっては、「1.Calculation-based methodology」と「2.Measurement-based methodology」の2つの手法が案内されています。

「活動量✕排出係数」というオーソドックスな方法が普通でしょう。
2は、工場から排出されるガスを、センサーなどで測定するものですから。

続いて、「Embedded emissions」です。
こちらは、簡単です。

「Production process 2」では、スラブを原料に、同様にエネルギーを入力して、ワイヤやプレート、シート、フォイルを製造しています。

「Production process 1」の原料であるアルミナは、製造に当たって、CBAM対象となるガスの排出は無いものとされます。

CBAMの算定対象は、スコープ1とスコープ2、そしてスコープ3の一部です。
(スコープ2は、セメント・肥料・電力のみ対象)
アルミナは、下図1の「Raw materials」に該当し、輸送による排出量も算定対象でないので、ゼロカウントなのです。

他方、「Production process 2」の原料であるスラブは、上図2に該当するので、既に算定に必要な排出量を持っており、これが「Embedded emissions」です。

前工程で「Attributed」された排出量が、次工程では「Embedded」されているとして算定するんですね。これに、「Production process 2」で、エネルギーが入力されると、その量が「Attributed」されて、ワイヤやシートなどの「Embedded emissions」として、次工程へ情報が伝達されます。

ウェビナーでもガイダンスでも、このあたりの基礎知識(?)は省略されており、わかりにくさにつながっているように思います。

算定の方法については、まだまだ、わかりにくい論点がありますので、折を見てご紹介していきたいと思います。

皆さんも、「?」と思うところがあれば、コメント頂けると助かります。
移行期間の間、一緒に勉強していきましょう。


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